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出発の朝

朝。

スザクが外で鳴いている。遠くで喧しく鳴く、他の鶏・・コッコ鳥の声もする。

昨日は何故かテントに入りたがらなかったのだが、町だし危険はあるまいと、寝桶を出して放っておいた。

一応、完全に閉めずに一部を開けておいたが、外で一夜を明かしたみたいだな。


ここで一晩過ごす事で、調査隊の変な男に絡まれやしないかと心配していたが、何だかんだで疲れていたのだろう。

わざわざ出てきて喧嘩を売ってくる事は無かった。・・チッ。いや、いかんいかん。


寝具一式を片付けて、テントを出る。

・・・・・なんか夜露で濡れてるんですけど。

ギルディートが「風の魔道具と乾燥の魔道具は冒険者の必需品」と言ってた理由が分かった気がする。

とりあえず、プライベートスペースはここだけなんだし、まだ張っておいてもいいよな?


そういえば、これからどうしようか?

そういえば宿に泊まってるわけじゃないから、朝飯の時間は飯をやってない宿に頼るわけにもいかないんだよな。

体を拭きたいが、幸いにもそこに井戸がある。パーテーションを使えば問題ないだろう・・。

そう思っていたら、宿の鍵が開いて女将おかみさんが顔を出した。


「うちの水場を使いな。朝飯も用意するよ。」


マジっすか!女将おかみさんマジ女神おかみ


おかげで、いつもと大差無く過ごすことができた。

飯を食ってると、


「おはよう。お母さん、お弁当を作ってほしいのよ。」


マリッサが現れた。

え?どこから?


俺は入り口を振り返る。

裏口・・があるのかな?無かった気がするな。

俺が風呂に行ってる間に来てた、って空気でもないしな。


ふと、先日、マリッサの爺(ダリエ)さんとしていた会話を思い出す。

建物うわものは飾りだ。娘なんてえげつないのを作るぞ!」・・・・・。

宿の地下に広がる、あの爺さんの醸造所よりえげつない謎空間。

それが、まだギミックを隠していそうなマリッサの部屋と繋がっていたところで、何の不思議も無いな。

敷地もすぐ隣だしな。


「あら、リフレもいたのね。おはよう。」


「ああ、おはよう。」「ココ。」


「スザクもおはよう。」


誰かの挨拶を真似たのか、スザクがちょいと羽を上げる。

挨拶をするペットに、返事をする少女。なんとも微笑ましい光景である。

今日は、ノルタークに移動しないといけないからな。

そろそろアーディも起こすべきだろうか?


面倒く・・・ゆっくり寝かせてやるのも優しさかもしれない。

スープが冷めるのも嫌だし、飯を食い終わってからでいいや。

ほら、冒険者は自己責任が基本だろう?


「アーディを起こして来た方がいいかしら。」


エスパー?!


「・・・いや、ゆっくり寝かせてやるのも優しさだろ。」


横着おうちゃくを誤魔化すのに都合のいい言葉ね。」


ばれてーら。

いや、5分でも3分でも1分でもいいから寝かせてくれ!って時はあるよ。

まぁ、昨日のアーディを見た限りでは、そんな体調では無いと思うけど。


俺の心の中の言い訳が聞こえていたわけでは無いと思うが、そんな俺を無視するように、マリッサが宿の外へと飛び出していく。

若いね~。ああ、今は俺も若かったわ。


「起きなさい。今日はノルタークに行く日なのよ。」


「・・?・・・・。」


ほとんどマリッサの声だけだが、やり取りが聞こえてくる。

どうも、アーディは寝惚けているらしく、「あと5分・・・」状態なのではないかなと。

朝ご飯が無くなると脅されて、ようやく目が覚めたようだ。


「何よその頭。どうしたらそうなるのかしら。」


「・・・?・・ほぁぁ・・・」


マリッサが何やら文句を付けているので振り返ると、アーディの髪にものすごい寝癖が付いていた。

後頭部の髪が重力に逆らいうねり、荒ぶっている。

しかし、本人はまだ半分夢の中といった感じで、目がしょぼしょぼしてるし、ぼんやりとしていて何処を見てるのかも分からない。

ズボン手を突っ込んでバリバリと掻くのをやめろ。オヤジか。プライベート空間でやれ。


マリッサに腕を引いて水場に連れて行かれ、サバーという音と共に


「つめたぁ!」


とアーディの叫び声。


「さっさと目を覚まさないと、身包みぐるみ剥ぐわよ。」


と冗談とも本気ともつかぬ聞こえてきて、澄ました顔のマリッサが出てくる。

しばらく後に髪を塗らしたアーディがパッチリした目で出てきたが、その顔には不満がありありと浮かんでいた。


「おはよう。」


「何で酷い事をしやがる!」


それ、俺のせいじゃないからな。


「いや、俺は無実だ。起こさなくて良いっつったんだぞ。」


挨拶も返さずに突っかかってくるものだから、思わず反論したが、それでも俺に疑いの眼差しを向けてくる。

座れよ。用事が無いならどこかへ行け。・・・しつこいな。

俺は、喋った後に口に放り込んだ、最後の1欠けのパンを飲み下し、スープを飲み干してから再度アーディの顔を見る。


「本当だぞ。お前を置いて行っても何も問題無いからな。」


「余計に性質たちが悪いわっ!!」


プンスカと席に着き、いいタイミングでアーディの分の朝食が運ばれてくる。

そんなに怒ってばかりいると、禿げるぞ。

女将おかみさんマジ女神おかみ。←これが言いたかっただけだろと。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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