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自警団、奮戦する

のそり、と現れたそれは、身の丈程もあるモンスターだった。

全身がぞっと怖気立つ。


なんだあれは。


クィーンフォレビー。それはあまりに圧倒的な存在だった。

燻されて苦しくなって出てきた、というよりも、いつもと様子が違うので見に来た、と言った感じだ。

堂々としたその姿から、ダメージらしき雰囲気は微塵も感じられない。


「ビイイイイイイイイイイイ!!!」


羽音を震わせ威嚇してきたが、それは別の効果を生んだ。

巣に向かっていた煙が、拡散されたのだ。周辺が煙幕に包まれる。

調子に乗って炊いたせいで、かなり濃い。


狙ってやったのか?クソ、敵味方が影になってわからない!


「盾を持て!来るぞ!」


その声と、ガツンという音は同時だった。

ガン、ガンと続けざまに固いもの同士がぶつかる音が響く。

何の音か?とそちらに目を凝らすも、何も見えない。


「くそっ、堅い。刃が通らねぇ。」


「引く時はきちんと引け!あの巨体だ、油断するな。」


怒号、叱咤。そして戸惑い。

動揺の広がる戦場に指示が飛ぶ。


「誰か!水だぁ!煙幕を片付けろぉ!」


方向感覚を頼りに、煙幕の炊いてあった場所へ向かった。

間違えて踏んだとしても、燃え上がっているわけではないから安心だ。

自分の持ち物から水筒を取り出し、方向感覚を頼りに進む。

足元に注意を払う。何しろ、手を伸ばした範囲くらいしかマトモに見えもしないのだ。


あ、影。と思ったら誰かとぶつかった。すまん。


うーん、この当たりで火を炊いたと思うんだが・・。


しばらくすると、俺は巣の前に着いていた。


はて?


振り返ると、煙幕は他の誰かの手によって鎮火されており、煙が薄まってきているところだった。


しかし、好機!クィーンフォレビーが見える。俺は背後だ。

そのはねを斬り飛ばしてくれる!


俺は剣を構え、その背に踊りかかった。


「もらったぁあああ!」


ギン・・!


そんな金属音と共に、俺の剣は弾かれた。

その驚きは、一瞬でも俺の動きを硬直させるのには充分なものだった。


剣が弾かれた(・・・・・・)のだ。


「なんだコイツ!」


俺の驚愕の声に、事態を把握したダンが叫ぶ。


「こいつに刃物は効かねぇ!鈍器を使えぇ!!」


鈍器なんて無ぇよ!

悪態をく間もなく、クィーンフォレビーがこちらを振り向く。


「っ!」


ガゴン!


射出されたその針は、針なんてもんじゃなかった。矢・・・いや槍だ。

すさまじい速度で、見えもしなかった。


俺がそれに貫かれなかったのは単なる偶然だ。

すぐに使えるようにと首にかけてあった水筒から水がこぼれる。

水筒を破壊し、防具さえ貫通した針は、防具の擦れを防止するために使っている革のジャケットで止まっていた。


「アスタっ!」


俺が「やられた」と思ったらしい団員が動揺し、声を上げた。

クィーンフォレビーのスキル:毒針が、効果を終えて消えていく。その瞬間、動いた者がいた。


「・・ッ・・ォォオッ・・・!」


クイーンフォレビーのはねを鷲づかみにし、アゴの下を蹴り上げたのだ。

ふいを打たれ、仰け反るクィーンフォレビー。

ボーラ(リーダー)!!」


その瞬間、後ろに控えていた団員が組み付く。

体勢を立て直そうとキリキリと音を立て、押し返すクィーンフォレビー。

が、更に間髪を入れず4人もの男が飛び掛った。ついに耐え切れず、クィーンフォレビーが仰向けにひっくり返る。


「ビィィィィィィイイイイイイイイイ!」


はねだ!はねを抑えろ!!!」


2名づつではねを押さえ、鉄の武器さえ歪ませる、強力なアゴの下に丸太を入れて締め上げる。

下手に胴体に乗るとアゴまで運ばれてしまうし、人数が足りないのでばたつかせる脚は無視だ、

胴体と尻の間のくぼみに武器を入れて押し込める。


そしてリーダー(ボーラ)は、そんな団員達が刺されないよう、針の射出部分を掴み、押さえ込んでいた。


「手が開いているものは何か・・岩を探して運んで来い。

・・ああ、土でもいい。こいつの針を封じる。・・急げ。」


9人もの団員でクィーンフォレビーを押さえつけているものの、人手はまだある。

4人がその尻をスコップで埋めようと掘り始め、俺を含む残りの2人が重りであり、針の飛び出しを防ぐ岩を探しに行った。


近くの岩場から、盾になりそうな平たく大きな石を見繕って持ってきた頃には、胴体に届くまでが土の中だった。

ボーラが馬乗りになっている土の上に、持ち上げるのに二人係の岩を運ぶ。


「避けろよ。いくぞ。」


「そーれっ。」


ボーラが土から腕を引き抜くタイミングに合わせて岩を乗せる。

が、ボーラの動きが鈍く、その膝を巻き込んでしまった。


「ボーラ?!」


その表情は蒼白で、呼吸が荒いというか、おかしい。

慌てて救出し、担架に乗せると、7人隊のリーダー(ガルム)が駆けつけ、指揮を執った。


「伝令行けぇ!レクス、お前だ!まずヒーラーを呼べぇ!それから家族、リジー、そして鍛冶屋の旦那んとこだ。

次に助っ人を呼んで来い!刃物が通じないことを忘れずに伝えておけよ!

どこかに発破ぁ(爆薬)あった筈だ。団長クレインに聞いて取って来い!!」


「は、はい!」


「速く行けぇ!!」


レクスが駆け出し、すぐに見えなくなった。

レクスは山の集落からこっちに引っ越してきた男だ。

身軽さ・素早さを売りにしているが、訛りが酷い。

イントネーションがだいぶ違うが、通じるだろうか。


「担架ぁ!駄目だ、お前はヒョロすぎる。担架の護衛をしろぉ。担架を担ぐのはダンとランスが行けぇ!

ボーラを町まで運んだら、レクスのフォローを頼む!あと手分けして即急に残りの団員も連れて来い!」


それまで斧で頭を叩いていたダンと、俺と一緒に岩を運んだランスが担架を運び始める。

そのまま行ってしまいそうだったので、残りの岩を置いていけと言うと、慌てて荷物の岩を出して行った。

先ほどレベルが上がったと喜んでいたし、そろそろ20レベルも近いだろう。

護衛もいるし、心配ではあるが切り替えなければならないだろう。


「残りのメンバーはこいつを抑え続けるぞ!

俺はボーラの位置で押さえつける。おい、アスタぁ!お前は大きい岩を持って来い!積むぞ!」


人が乗っていた部分に岩を乗せ団員の負担を減らしていく。

すっかり大人しくなったクィーンフォレビーを見て、少なからず安心した団員も多かったはずだ。


「こりゃ、大物っすね!家族に自慢できるっす!」


などと、全て解決したかのように周囲に話しかける奴もいたくらいだ。


しかし、奴は生きていたのだ。

当然だ。組み伏せられただけで、ろくなダメージすら与えられていなかったのだから。


しかも、状況が変わってしまった。

それまで、クィーンフォレビーはただ興味本位で外に出てきて、成り行きで“侵入者”と戦っていたのだろう。

しかし、長く拘束されて切り替わる。


人間おれたちを、“敵”だと認識したのだ。その目が赤く染まる。

アゴの下に咬ませていた丸太がミシリと音を立て、それに気付いた団員が振り返った瞬間。

まるで蛇のように体をくねらせて丸太をへし折ると、土を振り払い、再び俺たちに襲い掛かってきたのだ。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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