俺の秘密?
こんな金庫のある部屋がマリッサの部屋だってのはおかしくないか?
金庫ってのは、店に1つあるかどうかだろう?
マリッサはドワーフ年齢的には12歳。金庫を持つには早い気がする。
だいたい、こんな地下に広い部屋って・・と色々疑問に思ったが、この辺りはドワーフという種族の特性みたいなものだった。
と、いうのも、自分の部屋が欲しくなったら作るのがドワーフという種族なのだとか。
見取り図や部屋の構成で相談し合い、家族でからくりを読み合ったりして親睦を深めるのだという。
つい先日も、祖父の隠し部屋のからくりを解いた結果、秘蔵酒を見つけ、ちょっとだけ頂くつもりが飲み干してしまったのだという。
うん、ちょっと変わったコミュニケーションだな。
で、素材の金属だが、その辺に出しておくとうっかり使われてしまう為、自分の部屋を得たドワーフは、だいたい次に金庫を作るのだという。
って作るのかよ!!素材は買うそうだ。いや当たり前だからな?!
ちなみに、宿の女将さんの部屋も地下にあるんだって。
ドワーフって・・・・・。
それはともかく。
「部屋に招待してくれてありがたいんだが、何か話したい事でもあったのか?」
まさか、この部屋のからくりを自慢したかった訳でも・・いや、自慢したかったんだろうけど、それだけではあるまい。
「・・ここに私が大事に仕舞っていた、希少金属があるとして、貴方は欲しくないかしら・・?」
・・・・・・・?
希少金属って何だ?
ゲームには登場しなかったけど、オリハルコンとかそういう伝説の金属だったりするのか?
いや、「あるとして」って事はハッタリかもしれないな。
「フッ。今日、確信したわ。貴方は実力を隠してるつもりのようだけど、作り手としてかなりの実力者なのよ。
気になるでしょう?この金庫の中に何が入っているのか。」
うーん・・そう言われてもなぁ。
高レベル武器・防具の作成なんぞ、攻略サイトを見ないとレシピも分からないしなぁ。
ってか、実力者って?
マリッサの顔を見て、ゾクッとする。
俺の反応を見ている。それも、かなり真剣に・・・。観察されている。
声の雰囲気はいつもと変わりなかったというのに、その透明感のある視線が俺を萎縮させた。
すぐに、いつものような雰囲気になったが、何だったんだ?今の。
「率直に聞くわ。マントは貴方が作った物なの?それとも、貴方の仲間が作った物なの?
・・・・・。
貴方の縫い方は昼にも見ていたわ。でも、完成度が段違いなのよ。
実力を隠しているのか、それとも他の人に依頼しているのか。
どちらなのか、ものすごく興味があるわ。」
最初の質問の意図が分からずにいたら、すぐに補足してくれた。
沈黙を読むのやめてください。いや、助かるけど怖いよ。
「仲間と一緒に俺が作った、では駄目なのか?」
実際、コーティング剤を乾かす時に人の手を借りてるしな。
アーディは一応、仲間だし、嘘は吐いてないだろう。
マリッサは、槌キャラで作成した部分について気になっているみたいだが、俺がやったと言ったとして、やって見せてくれと言われるのは御免である。
はぐらかせるなら、はぐらかしておきたい。
「バレない嘘を吐く、嘘と真実を混ぜて話す、真実をぼかして話す。
この区別って結構難しいのね。」
?!
何の話をしているんだ?
「特に、思っている事をそのまま喋らない、遠回しに伝える事に長けている人。
必要があれば嘘でもスラスラと口から出てくる人。
にもかかわらず、普段は嘘なんてこれっぽっちも吐かない人。」
俺、追い詰められてない?大丈夫?
なんか、身に覚えがあり過ぎるんですけど。
「リフレ、何か隠している事があるでしょう?
・・・話してくれるのを待つつもりではあったけど、もし、貴方にリスクのある事を隠しているのであれば、教えて欲しいの。
これでも、私だって仲間のつもりなのよ?」
ううむ?何か、引っかかる感じがするな。
CCがバレかけてる、という感じはするが、何か誤解を受けている印象の方が強い。
いつかバレるのであれば話すのも選択肢の1つだが、その前に明らかにしておくべきことがあるだろう。
「リスクって?」
「例えば、前に貴方が言っていた、PTチャット?
何らかの手段で、貴方の仲間に連絡ができたとして。
呼び出す為に、何らかの代償を支払っているんじゃないか、という事よ。」
最初の頃、何が常識で、何がイレギュラーなのか分からず、色々試したのだが、マリッサに手伝ってもらった検証がいくつかある。
その時、話に出たPTチャットを覚えていたのだろう。
PTチャット、クランチャットというのは存在せず、あるとしたら専門の魔道具や、もしかしたらそんなスキルがあるかもしれない、との事だった。
ドヤ顔で言い放ったマリッサだが、俺の顔を見て「・・・違うのかしら。」と呟く。
おそらく、CCについては、召喚か何かだと勘違いしているんではなかろうか?
まぁ精神的なものを代償と言うのであれば、十分支払っている気がするが。
おそらく、マリッサが言いたいのは、金銭で損をしてないか?とか、もしかしたら、呼び出す魔道具だとか、魔法だとか、その辺りで対価が必要なんじゃないか?とか、そういう心配をしているという事なのだろう。
「そういうのは無いから安心してくれ。
隠している事というのも、俺の精神的な問題とか、そういう意味合いが大きい。
本当にまずい隠し事をしているわけではないんだ。」
マリッサは、俺の顔をしっかり観察した上で、安心したように息を吐く。
うん、CCは隠したいが、バレてデメリットが発生するかというと・・そこまででも無いと思うんだよな。
ただ、俺の精神へのダメージがデカイだけだ。
最近、CCへの忌避感も薄れてきたし。
・・・って、いやいや。これ、良くない兆候じゃね?
これは脇に置いておこう。
そういえば、ギルディートには話したんだけど、マリッサには伝えていない事があったな。
「関係の無い話だが、俺が異世界から来た事について、興味はあるか?」
マリッサが食い付いてきたので、話す事にした。
俺は、メモ帳を取り出して、ゲームと、俺の住んでいた世界と、精霊の住む世界と、この世界との繋がりに対する俺の解釈を説明し始めるのであった。




