リフレの弟分
スザクはベットの上で、何故か目を閉じて大人しくしいる。「俺、知ーらね」とでも言いた気である。
もしかして、誰かいると警告してくれていたんだろうか?・・・まさかな。
俺の現在の服装は、仮面こそ着けていないものの、ローブを被っている。
何とか誤魔化せないか?しかし、一言でも喋ったら女だとはバレそう。
でも、喋らなければフォローできない。困ったぞ。
年齢を誤魔化せば男って事でなんとかなるか?声変わりをしてない感じで。
幸いにも、胸はあまり大きくないキャラだし、服装的にも目立たないだろう。
「お、俺はリーフレ・・じゃなかった、リフレの弟・・そう、弟分みたいなもんだ。」
弟と言った時点で、同様の余り耳が跳ねた。
おかげで、「このキャラ、エルフだったぁあ!耳がめっちゃ尖ってたわ!!」と思い出したのだ。
エルフとヒューマンが兄弟っておかしいかも?と、咄嗟に出たのが弟分だ。
「おねーさん、きのうのおねーさんとは、べつのひとだよね?」
おねーさんじゃねーっつってんだろ!いや、事実、身体はおねーさんなんだけども。
うん?一昨日の事を誤魔化すには丁度いいのか?
一昨日の事を昨日とか言ってるし、これくらいの子供の記憶なんて、そんなもんである。
「別の人じゃないぞ。」
「だって、きのうのひとは、かがみよりも、ちいさかったもん。」
鏡?振り返って見ると全身鏡が設置されている。
うん、あれは身長を比べるのに使えるかもしれない。
だが、気のせいという事にしてほしい。させてください!
「あのな。鏡って離れたところにあるだろ。人は遠くに離れるほど小さく見えるもんだ。
俺も、もっと下がったら、鏡より小さく見えるかもしれないぞ。」
「えーっ?うそだぁ。」
はい、嘘です。鏡の淵ぐらいの身長はあります。
「それに鍵穴から覗いていたんだろう?遠近感・・つっても分からないか。
鍵穴から見ると、いつもとは違って見えたりするからな。
あと、覗きはいけないことだから、今後しないように。」
遠近感が違ったり、見え方が変わるのは本当・・・の筈だ。
鍵穴から部屋を覗いた事がないから、どう変わるかはわからないが。
問題は、この2人が俺のCCの決定的な瞬間を見ていないかどうかだ。
その頭を見つけた時には、ベッドの下に隠れて顔を見合わせて、内緒話でもしているような雰囲気だった。
見ていない可能性は十分ある。きっと大丈夫。
仮に見ていたとしても、子供の戯言だと一笑されるような案件だ。
まぁ、子供を嘘吐きにしてしまうような、残酷な真似は避けたいのだが。
「お前ら、いつからそこに居たんだ?」
「ロザが、おトイレからもどってきたら、ここにマリちゃんがいたの。
それでね、きのうのおねーさんをさがしたの。」
「たんけんしたの。」
マリというのは、孤児院の女の子の名前のようだ。
よく見ると、ロザ名前はロザリアーナ、マリはマリーアンと言うらしい。
ふむ。
俺が、ガキどもと話している間、もしくは1Fに行っている間に、トイレに行っていたロザが戻ってきて、マリと一緒の俺の部屋を探検していたらしい。
そういえば、鍵を掛けて行ってないわ。・・くそ、俺はどれだけ警戒心が薄いんだ。
ここに居たのがアーディとかじゃなかっただけマシといえる。
「二人で?」
「「うん。」」
OK。この2人を言いくるめれば何とかなるな。
「俺がここに来る前に、他に誰か来なかったか?」
フルフルと首を横に振る二人。
うん、この様子だと多分、CCはバレてないっぽいな。「おねーちゃん」って呼ばれたし。
そして、マリの方は、あれからずっとここにいたっぽいから、侵入者も他にいないだろう。
と、なると、ボロを出さないうちに早々に退場してもらうのが良い。
「俺は、兄貴の仕事を手伝う為に呼び出されたんだ。これから大事な仕事がある。
人がいると集中できないから、アーディの部屋で遊んでくれないか?」
鍵を開けて、2人をドアの方にに誘導する。
素直に出てくれるのはありがたい。悪ガキ3人組だったら、こうはいかないだろうな。
「おねーちゃん、はーふえるふなの?」
「うん?なんでそんな聞くんだ?」
ハーフエルフ?ヒューマンとのハーフって意味かな?
「だって、おじさんとソックリなんだもん。」
「りふれににてるの。」
「・・・・。に、に、似てる訳ないだろ。ほら、仕事の邪魔だ、さっさと出る。」
まぁ、似てるだろうな。骨格が違うけど、同じ顔だもんな!
ヒューマンとエルフが「家族か!」ってくらい似てれば、そりゃハーフエルフを疑うだろう。
これだけ幼い子供でもそういう認識ということは、ハーフエルフって多いのかな?
そっとフードを深く被る。んーー、予め仮面を着けておいた方が良いだろうか?
仮面ってのはインパクトありすぎるし、不審の塊だ。顔に着けたままにしておかない方がいいかなと思ったんだが。
どうしても顔を隠したい場合は、手持ちで顔を隠してCCからの装着でも間に合うというのが俺の考えだった。
そんな時間がないという事態になれば、正体を隠しても場合じゃないと思うし。
だが、こんな風に不足の事態に顔バレする事を思えば、着けておいた方がいいのかもしれない。
でも、今回の場合、怪しすぎて泣かれた可能性もある。悩ましいところだ。
女の子二人を廊下に送り出すと、別の部屋のドアの隙間からこちらを伺う顔が並んでいた。
バタン。ガチャリ。
見なかった事にしよう。
頭数は合ってたと思うが、念の為、どこかに人が紛れていないか探す。
うん。今度は大丈夫そうだ。
俺は、採光の為にカーテンを張らず、間違っても窓に近寄らないように心がけながら、コーティング剤を作るべく、準備を始めるのであった。




