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魔法の鍵穴

さて、鍵穴から見えた女性は何だったのか?についてだが。


・人攫い

・女装

・この子供の見間違い


もちろん人攫いではないので、謂れの無い罪を被る必要は無い。

最も近いのが女装だが、俺の精神プライド的に、それは許されない。

俺の精神衛生上は見間違いにするのが最も楽なんだが、今度はこの子供に「嘘つき」のレッテルを貼る事になる。

それだけは断じてする訳にはいかない。

と、いう訳で。


「この鍵穴には魔法がかけてあって、いたずらで覗くと、そこに無いものが見えるんだよ。」


とか言ってみた。


「?」


「見えたのが『おねーさん』で良かったね。きっと、いつも良い子にしてたからだね。

悪い子には何が見えるのかな?もしかしたら、次はオバケとかモンスターが見えるかもしれないよ。」


脅かすと、すすすっと母親の所まで下がって行き、その膝に抱きついた。

『悪い子』に心当たりの無い子供の方が珍しいからな。効果があって良かった。

これで上手く誤魔化せそうだな。


「良い子の所にはオバケは出ないから、夜更かししないで早く寝な。おやすみ。」


手を振り、親に頭を下げる。挨拶を交わし、親が部屋に入っていくのを見送った。

というか、アーディがドアの前に立ち、閉めさせてくれなかったので見送る事になっただけだ。

さっさと閉めて寝るつもりだったんだ、こっちは。一体、何の用だ?


「で、女は?どこに行ったんだ?」


もしかして、こいつも覗いたのか?

どちらか判別は付かないが、これだけは言える。

面倒くせぇ!!


「女なんざいねーよ。さっさと出てけ。」


のしのしと部屋に入って来たアーディだが、疚しい事は何も無いので、好きに見れば良い。

死角のベッドの影と下、クローゼットスペース、そして窓から下を覗き込む。

お前は探偵か何かか?そして・・


「うぉっ?!何だこれ??!?」


その壷に人間は入らねぇよ。何故開けようと思ったし。

眩しそうにして仰け反るアーディ。その蜂蜜、ちょっと人知を超えてしまったからな。


「ただの蜂蜜だ。さぁ、もう寝る時間だ。帰った、帰った。」


蓋を奪って壷を仕舞う。

実験はもうおしまいだな。次からは鍵穴にも気を付ける事にしよう。

とりあえず、アーディの襟首を掴んで摘み出す。


「ただの蜂蜜?んなわけねーだろ。ただの蜂蜜がどうして光輝いt・・」


はいはい、おやすみおやすみ。


ガチャリ。


うーむ、鍵穴か・・。さすがに油断が過ぎたというか・・。

そこまで気にしていなかったな。


秘密があるのだから、もう少し慎重に、それこそ過敏なくらいに色々と防護策を巡らせるべきなんだろうが、その秘密も別に命が掛かっている訳じゃないからな。・・便利だし。

そもそも、命にかかわる秘密を持っていたとして、こんな便利に使うことは無いだろう。

それに、まさか鍵穴から室内が覗けるなんて夢にも思わなかったので、結果は同じかもしれないが。


俺は、メモ帳に『バカ』と小さく書いて、米粒をのり代わりにして鍵穴の前に貼り付けた。


いつも通り、スザクの寝桶と置き型トーチを取り出す。


「・・コココ・・。」


バサバサと羽音を立てて、自分の寝床を置いたスペースへ飛び上がり、確認するスザク。

タオルを平らにしようが、こんもり盛ろうが、きちんと畳んであろうが、多少崩れていようが、今まで何か文句を言ったことは無い。

・・まぁ言葉を喋れないのだから当たり前だが、不服そうにした事は無いという意味だ。

それでも、寝る前のチェックは欠かせないらしい。

今日もOKをもらい、スザクが羽を休めたのを確認して、俺も床に就く事にする。


最近、一日が濃過ぎて、元の世界の事を思い出す暇も無い。

全く思い出さないわけではないが、もっと夢に見たりするもんだと思っていた。


蝋燭を吹き消す。


郷愁ホームシックとか、異世界に対する苦悩とか。

まぁ、色々あって眠れない事はあったものの、不眠症持ちであった過去を思えば問題無く眠れている。

そういうのが殆ど無いのは、何か不思議な力でも働いているせいなのか、それとも、俺が元の世界に対して強い未練を持っていないせいなのか。


何にせよ、よく眠れているのだから良しとしよう。


硬くは無いが、さほど柔らかくも無いベッドに潜り込む。


船を出すまでに、まだ時間はあるけど、予定はしっかり立てておかないとな。


寝る前に考え事が多くなるのは、昔からの癖だ。


ちなみに、何も考えないようにしたところで不眠症は解消せず、ストレッチ運動も効果など無く、運動で疲れたところで眠れるかというとそうでもなかった。

そんな俺の不眠症が治った理由が、寝不足であった。


なんだそれは?って話だよな?


何故、それで治ったのか、未だに俺も分からないんだ。


眠りたいけど眠れないのが不眠症。


眠りたいけど寝かせてもらえず、睡眠時間が圧迫される寝不足。


寝不足の結果、すんなり寝付けるようになってから、睡眠時間を6時間以上と定めて、0時には何をしていても片付けて、寝床に行くようにしている。

まぁ、心がけているという範囲だが、これを破らない限りは再発していない。

たまに、ちょっと面白い漫画とか読みかけで止める事ができず、夜更かしをしてしまうと眠れなくて困るなんて事はあるが、それでも寝られるのだから不思議なもんだ。


まぁ、「眠れない、どうしよう。」から「目を閉じてりゃ休めるらしい。起きてても無問題。」になった心境の変化も大きいかもしれない。

苦痛度が減ったおかげで、「眠れない事」を意識しなくなったのかもしれない。


実際に、眠れない時間というものは今でも存在するわけで・・。


取り留めの無いことを考えながら睡眠前の時間を過ごすうち、俺はいつしか眠りに就いていた。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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