スザクの強化?
さて、スザクのレベル上げだが・・・・。
俺が支援しているにも拘らず、強くなっている感じがしない。
仮に1レベルだったとして、これだけ狩れば5~6レベルに上がっているくらいは敵を倒していると思う。
つまり、討伐ペースが上がっていてもおかしくない。
討伐ペースが上がれば、当然、ざくざく経験値が入るので、レベル10程度になるのは、そう難しい事じゃない筈だ。
だが、そのペースが全く上がらないのだ。
「うーん、人間と違って、上がるステータスがゼロ・コンマの単位とか言うんじゃないだろうな?」
充分に考えられる話だ。
何しろ、相手は鶏・・・もとい、コッコ鳥である。
闘鶏やら軍鶏なんて言葉があるが、それが人間を殺せるなんて話は聞いた事がない。
残念だが、そういう事なのだろう。
それはそれとして、だ。
モンスターはアイテムボックスを使えないのだろうか?
俺は、敗れた毛布を切って縫い合わせ、簡単な超小型のバッグを作る。
そして、スザクの首に掛けてみた。
「・・・コヶ?」
首輪ほど邪魔そうではないが、嘴を突っ込んで物を出し入れするには工夫がいるかもしれない。
とりあえず、スザクの好んで食べる穀物を2種類、少しずつ入れておく。
アイテムボックス化して中にいくらでも物が入る、という事は無かった。
しかし、アイテムボックスの仕組みが分からない以上、もしかしたら、何かの弾みでアイテムボックス化するかもしれない。
事実、冒険者のバッグやリュックは買い替えができる。
例えば、俺のウエストバッグを別の物に変えたとする。
新しく身に付けたものがアイテムボックス化し、これまで使っていたウエストバッグは、ただのウエストバッグになる。
その際、アイテムを入れ替える必要が無いというのだ。
ウエストバッグやリュックは単なる外側の問題であって、アイテムボックスとはイコールではない。アイテムボックスを使うための道具に過ぎないという事だ。
分かりやすく言うと、俺の使っているウエストバッグは、倉庫の扉みたいなものだ。
倉庫の扉を付け替えるのは自由だが、倉庫の場所も中身も変わる訳ではない。
なので、アイテムボックスを奪うつもりでウエストバッグを奪ったとしても、扉だけ持って行くようなものなのだ。
あくまでアイテムボックスに手を突っ込んで持ち出さないと、アイテムは奪えないという話だ。
が、マリッサやギルディートは俺が身体から離したウエストバッグから自由にアイテムを取り出していたので、どこまで行ったら扉の扱いで、どこまでがアイテムボックスの扱いなのかは謎である。
話が逸れたが、スザクがアイテムボックスを持っていたとして、仕組みを理解していない事には使うことはできない。
それに、使えなかったとしても、胸のポケットからアイテムを取り出して使えるだけで助かる場面があるかもしれない。
アイテムを取り出して使う、という事に慣れてもらう必要があるのだ。
うーん、スザク強化作戦はここまでかな。
CCして、敵を引き寄せるスキルを使ってみたり、ちょっとランクの高い材料で足環を作ってみたりしたが、これ以上の効率も強化も見込めそうにない。
範囲攻撃を覚えてくれたら・・いや、下手に範囲攻撃をしたらタゲを集めて死ぬな。
どんなにたくさん敵を集めても、倒せなかったら意味が無いのだ。
DEF(防御力)かAGL(敏捷性)が欲しいな。
いや、その前にSTR(腕力)が圧倒的に足りない。これに尽きる。
何しろ、最弱のフラウワを倒すのに、まだ何度も突撃を繰り返しているのだ。
普通、これだけ倒せばレベルが上がって、通常攻撃でも簡単に倒せるようになる筈だ。
種族上の問題だけじゃない。装備もできない。
レベルが上がったから強い武器を、という強化ができないのだ。
ゲームの世界では、武器と鎧に強いステータス向上効果・・所謂、補正というやつが付いていたが、その他は・・小さいアイテムほどその効果は小さかった。
さすがに、リングにものすごい効果を乗せる事はできない。
高レベルのリングならば、低レベルの武器を超えるかもしれないが、そんな高レベルリングをスザクが装備できるとは思えない。
この世界はゲームじゃないので、もしかしたら高レベルのリングでも装備できるかもしれないが・・。
スザクに敵を攻撃させる傍ら、バードリングを作る。
作ったものを装備させて、また敵を探し、攻撃させながら次のを作る。
それを繰り返すうち、日が傾き、空を焦がして太陽が隠れ、周囲が薄暗くなってきた。
「帰るか。」
「・・・・・コケ。」
スザクは、若干、草臥れた様子で俺の足元にやって来た。
「乗せろ」ですね、わかります。
スザクを頭に乗せ、コランダへと向かう。
「うん?」
見慣れない馬車が、コランダの町に入って行くのが見えた。
そういえば、定期的に商人が来るって言ってたっけな。
続いて、俺もコランダに入ると、宿の方に向かう馬車が見える。
この町には小麦亭以外の宿は無いので、当然といえば当然だが、他の客がいなくて気楽だったのに、残念な気はする。
が、小麦亭だって客が無ければ潰れてしまうので、贅沢な事は言っていられない。
何しろ、ここに物資を定期的に売りに来てくれる商人だ。
これが無かったら、とっくに宿が潰れていてもおかしくないし、この町だってこれほど活気が無かっただろう事は想像できる。
宿の前で馬車が止まり、目的地が同じなので追い付く。
さて、宿に入ろう、と思ったところで、馬車から子供が飛び出して来た。
「とうぞくめ!かくご!」
棍棒を首で受け止めつつ、今日はよくガキに絡まれる日だなぁ、と遠い目をするのであった。




