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飯屋 ノルタークの帆船

結局、案内された飯屋に入ることになった。

店の名前は[ノルタークの帆船]というらしい。船を模した外観はロマンを感じさせる。

が、海の幸は一般的じゃないみたいだから、期待しない方がいいだろう。


節約の為か、暗かった店内が明るくなり、その綺麗さにはしゃだり、めちゃくちゃやる気のない店員に呆れたりしながら席に案内される。

それにしても、この店員、耳が肩に付く勢いで下がってるな。

ああいう耳なのか、それとも何か落ち込む事でもあったのだろうか。


ピックアップメニューの一番安いコース料理が700Dなら、そこまでは高くないんじゃないのか?

期間限定価格?この普通のメニューと比べて見るに、普段は800Dなのか。それでもなぁ。


1,000D→900D

1,500D→1,300D


期間限定のピックアップメニューは、軒並み値段が下がっているようだ。

その中でも目を引いたのは、これだ。


特別コース ノルタークの帆船

2,000D→1,500D


なかなか良い割引率だ。そして、店名を付けているというのが気になる。


「すみません。特別コース、ノルタークの船団。これを3つお願いします。」


ゴッ、という音が聞こえたので、そちらを見ると、アーディがテーブルに頭を打ち付けていた。

真剣にメニューを見ていたマリッサも固まっている。

ああ、好きな物を頼みたかったのか。それは悪いことをしたな。

けど、俺の奢りなんだから、あんまり我侭わがままを言われても困るんだよなぁ。


店員が、注文を聞いて厨房の方に去っていく。

この世界の事だから、下ごしらえの出来ているものをカットしたりして盛り付けるだけだろうから、すぐできるだろう。


「お、おい。念の為に聞くけど、そのコース料理、1人で食う訳じゃないよな?」


「はぁ?アホか?1人1つずつに決まってるだろ。」


俺が3人分のコース料理を食うのかと思われたらしい。

いや、そりゃテーブルに頭を打ち付けたくもなるだろうけど、常識的に考えろ。


「アホは貴方なのよ。常識的に考えなさい。

『遠慮できるか?』と聞いておいて、店名を冠したコース料理を奢るってどういう事なの・・。」


・・・・・うん?

話を聞くに、どうも単品メニューで安くて腹に溜まりそうなものを探していたらしい。

あー、遠慮しろよって念を押したようなもんだしな。わかるかわる。

でも、値引率めちゃくちゃいいし、普通は単品メニューを頼むより、セットの方がお得なんだよ。

それに、一番高いやつはもっと高いよ。酒もめちゃくちゃ高いよ。

間違っても、ここで酒を頼むなよ。


最初に来たのは、前菜でも食前酒でもなく、お冷だった。


「お客様はドワーフ族ですね。」


とマリッサに確認をしていたが、お冷を飲んだマリッサが目を輝かせた。


「この店・・分かっているのよ。」


きっと酒だったんだろうな。見た目は同じような水に見えるけど。

続いて、すぐに前菜・・・?というか、お通し?


「なんだ、このチンマイの・・。」


コラ。ちんまいとか言わない。


「・・っ。んっめぇっ!」


何それ、めっちゃ気になる。俺も早速、そのトロッとした物体を口にする。確かに美味い。

コールスロー的な何かに見えたそれは、ネギ・・いやエシャロット?

何かシャクッとした、薬味的な野菜と、細かくて味の濃い野菜を数種類、そして鳥皮のようなものが入った、何とも不思議な料理だった。

味は濃い目だが、くどくない。むしろサッパリしている。

漬物系?いや・・それとも違う気がするけど・・。何と例えればいいかわからないよ!


そして、今度は何だ?メインではないよな?

数種類の小さな料理が、同じ皿の中に並んでいる。

このゼリーみたいなやつは煮こごり?変わった味だがいける。サラダっぽいのも美味い。

芋か何かを潰して、調味料を加えて固めたもの。固形調味料無しでこの味が出せるのか?どうやってるんだ?かすかにバターの香り。もう少し味わいたかった。

これはキンピラゴボウ?外国では「木の根」とか言って嫌われてる地域もあるんだが、この世界では普通に食われてるんだな。・・と思ったら、近いけど別の食べ物だった。

いや、ゴボウはゴボウだけど、和風じゃねーわ。オイルサーディン?違うな。でもそんな感じ。


きのこのスープ。これ、何のキノコだ?

たかがキノコって思ってたけど、違う。出汁の出るタイプのキノコ。

でも、椎茸ではない。もっと香ばしいというか、軽い感じだ。

スープに旨味を放出した上で、スープの味を染み込ませている。

香りは少し変わっているが、全体のバランスと合っている。

むしろ、食欲をそそり、胃を刺激する。絶品。


次に出て来たのは・・・


「!?」


え、これ魚じゃね?

話し掛けようとしたが、マリッサもアーディも食事に夢中だった。

店員に聞こうとしたが、すぐに厨房に引っ込んでしまっていた。


どう見ても魚だ。

海では魚は獲れないって・・あ、川か?

サーモンって川魚だっけ???


とにかく、そのサーモンっぽい魚をいただく。

うまいなぁ。久しぶりの魚だ。思わず素材の味を楽しんでしまったが、ソースがまた美味かった!

バジルソース?いや、違うな。ソースというか、これはスープ??

濃厚な旨味。バジルっぽい香草がくどさを打ち消しているが、おそらく、何か出汁になるものと野菜を煮詰めたりして、相当な手間がかかってるはずだ。


そして、デザート。え、デザート?

早くね?もう終わり?

胃がすっきりする様な、そして口がさっぱりするような、優しい味の柑橘系ジュレだった。


・・まだ食えるな。そう思いつつ、デザートを食い終えようとした時、運ばれてきたのは、真のメインだった。

どういう事??この世界のコース料理は中盤にデザートが入るのか???

疑問に思いつつ、骨の付いた肉料理を口にする。


「ぅ・・・?」


うまい、うますぎる!!

ばら肉っぽかったから、何度も食ったことがある、スペアリブを想像していた。

骨が付いているってだけなのだが、骨って食えないけど旨味が詰まってるそうだ。

そこから滲み出たんだろうか、それとも骨付きっていう言葉かそんな気にさせるのか、それだけでめちゃくちゃ美味い。

その代わり、下ごしらえがしにくく、どうしても堅くなりがちだ。


そこで、若い肉というのがある。仔牛のローストとかいうだろう?

だが、若い肉にも欠点がある。若ければ若いほど、柔らかい代わりに味が薄くなる。


柔らかくて、味が濃い肉って何なんだ???


行儀が悪いだろうが、かぶり付きたい。

俺が葛藤している横で、骨にかじり付いている2人。頼むから自重してくれ。気持ちはすごく分かるけど!!!

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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