ここからが本題?
話が長くなると察したのか、スザクはトイレへと旅立って行った。
って事は、昼も近いな。
・・・・・。なんだこの沈黙。
「どういう意味だ?」
「匿名と言っても、ウチで身分を保証している以上、ノルタークギルドの関与を隠す事はできない。
ウチの確約書を持っていそうな奴を、現地まで来て調べようって奴が現れたら、即効でバレるって言ってるんだ。」
マジか。
でも、前にも大型討伐とかあったみたいだし、その時に発行されていてもおかしく無かったんじゃね?
発行年月日まで記載されてんの?記載されてない?じゃぁ大丈夫じゃね??
ギルマスが苦笑いし、マリッサが首を横に振る。
あれ?
ま、まぁ、現地まで来て調べようって奴はそうそう居ないよ。
まさか公開とかしないだろ?対策もしてくれるんだろ?なら・・大丈夫さー。
多分。めいび~。
さて、ややこしい話も終えたところだし、そろそろ宿に戻るか。
今からなら、仮に寄り道したとしても、十分昼飯の時間に間に合うだろう。
そう思ったら、
「さて、昨日の話だ。深夜に、“人喰らい”と呼ばれて恐れられていた、ブラゴン討伐の知らせが届いた。
討伐者は、いつの間にか消えていて、町の人とギルド員が運んだ訳だが・・・。やったのはお前さんだな?」
話は終わっていなかった。
「俺も見たぞ!ブラゴンなんて見るのは初めてだったけど、思ったより小さかったな!」
「?!」
アーディだった。そういえば、コイツも居たな!
プクク、とマリッサのほうを見、マリッサはというと微妙にむくれている。
あれを取り出そうとして、気絶したのを思い出したのだろう。
で、今更だが・・
「お前、どうして付いて来たんだ?」
と疑問をぶつけてみる。
「え、何かおいしい話があれば一口噛ませてもらおうと思って・・あと面白そうだし。」
当たり前みたいな顔してるけど、おいしい話も面白い話も無いからな。
どうしてギルディートと気が合うのか分かった気がする。この辺の感覚が近いんだろうな。
トイレに行っていたスザクが戻って来る。
また一羽でトイレに行けるようになって、とても楽である。
降りるのは簡単だが、登る時は大変なようで、パタパタわたわたしている。
もう頭の上が定位置でいいや、と割り切っているので、膝まで登ってきたスザクを乗せてやる。
うん、落ち着いたようだ。
コホン、と咳払いをし、ギルマスのオッサンが話を戻す。
「放置していても腐敗する可能性があった為、ギルドの方で回収させてもらった。
ギルドの規定にも、持ち主が不在の素材について、周囲の冒険者及びギルドが回収する事は・・・」
オッサンの話が長かったので省略させてもらった。
要するに、回収して解体しちゃったけど、お前もギルドに加入してる冒険者なんだから文句は無いよね?
売ったら金もちゃんと支払われるし、適正額で売るから!っていう話だった。
結構な重量だったし役にも・・役には立ったか。
人を喰ったという害獣だったが、クッションになるという形で一人救っている。
ともかく、処理して金に換えてくれるってんなら有難いけどな。
「なぁ、あれ、どうやって倒したんだ?話を聞かせてくれよ。」
やっぱコイツの同行は断るべきだった。
なんというか・・ ちょうと1人欠けてた穴に、何でもない顔をして収まろうとしてやがる。
本人は故意でも無く、悪気も無いんだろうけど、なんかこう・・イラッとすんな。
こういう無遠慮さというか、グイグイ来る感じは、そんなに珍しい訳でもないんだが、ギルディートが居なくなったことが、俺の中で引っ掛かっているのかもしれない。
「話を聞いてどうするんだ?」
「みんなに話して聞かせる!」
却下だ。元々話す気は無かったけど。
「最後に、以前、討伐戦に使用された船の、使用許可が下りた。
現物は港に出すから、今日の午後にでもギルド員と確認して欲しい。
日程を組んで乗員確保をしなければならないので、予め声をかけてくれると助かる。
一週間前ぐらいに。」
割と悠長だな。
「準備が出来次第、すぐに出発してくれ」とか言われるかと思ったんだが、まぁ今更、少しぐらい待たされても同じで、どうせなら確実に仕留めたいと言ったところなんだろうな。
ただ、見たことも無ければ情報も無いような相手を一発で仕留めて来るとか、無理も無理なので、釘を刺しておかないとな。
午後はいつも、試作品のテストとかあるんだけど・・。
チラとマリッサを見ると、「行って来なさいよ。もちろんリフレが居た方が捗るけど、居ないとできないわけじゃないのよ!」と言っていた。
「ね?」とマリッサに話を振られて、アーディが「えっ」という顔をしてたが・・ああ、お使いの素早さで目を付けられたな。ご愁傷様だ。
「タダで一枚噛ませろとか言っている訳ではないわよね?」と話を進めている。
押しの強さだけならマリッサに勝る者はないな。
問題は泳げるかどうかだが、泳げるとなれば確実にやらされるだろうな。
他の仕事が、とか一切関係なく。まー諦めろ。
「予算の都合もあるでしょうけど、一度、現地まで行って、敵の様子を確認したいです。
討伐に必要な道具はだいぶ揃ってきているし、一週間かかるなら、もう人員を集めておいて欲しいくらいですね。
動きのチェックもしたいですし、敵ともぶつかります。
もちろん、敵《あちら》はテストだ様子見だなどという都合など知りませんから、どんな動きをするか分かりません。
戦闘をする事を前提に、人員はちゃんと本番のつもりで来て欲しいです。
その経過を見て、さらに一週間後に討伐に行く、というのはどうでしょうか?」
予定らしき予定など無いとはいえ、この町にそんなに長居する気は無かった。
現状でも、当初想定していた滞在時間を超えている。
ギルマスのおっさんが頷いたのを見て、マリッサに向き直った。
「と、言うことでマリッサ。一度コランダまで戻って、少しの間ノルタークに滞在するって伝えて来るぞ。今日は予定があるだろうが、明日か明後日、ここを出る。」
「「「ファッ?!」」」
え、何で全員、そんな反応なの??
「コァッ!」
いや、スザク、みんなの真似しなくていいから。ちょっと似てたけど。




