新装備?
翌朝。
マリッサがハイテンションで突撃して来るようなハプニングも無く、朝食までは無事に終えた。
で、朝から朝から何をさせたいのか?着替えろ?ここで?
ヘルメットみたいなゴーグル付き呼吸マスクに、水泳スーツ・・ってシュノーケルセットかよ?!
「きつくないかしら?」
「滅茶苦茶キツイです・・・。」
伸びる素材を使って、海中での行動を補助する道具を作っていたらしい。
これは、俺以外のドワーフさん達が着用し、テストと改良は何度も行われたとか。
しかし、この水泳スーツってちょっと恥ずかしいんだけど。
鏡を見たら、そのままヒーローショーに出られそうな外見をしていた。
ブラックか。ちょっと格好いいかもしれない。
なんというか、こんなライダーいそうだし。
まぁ、何にライドするでもなく、自分の足で走ったり泳いだりする訳だが。
「ある程度きついのは仕方が無いのよ。水の浸入を防ぐ他に、水の抵抗を減らす効果があるのよ。
普通の服で泳ぐより数倍楽になるわ。動きにくいとか無いのかしら?」
「・・・動いたら破けない?ってぐらいキツイんだが、本当に大丈夫か?」
何かの皮に何かを染み込ませた生地で、伸縮性と保温性があって丈夫なんだそうだ。
一応、首や背骨、上半身や各関節に硬いものが入っていて、それが一層、ヒーローっぽさを演出している。
原色カラーじゃなくて良かった。
「・・どの辺りがきついのかしら?」
頭の天辺から爪先まで、全体的にきつい。
強いて言うなら、足の長さがおかしいよね。
股の大事な部分が圧迫されなくて助かっているが、ちょっと短足気味に見えるよ。
背中を丸めたら首が絞まりそうだし、足を曲げたら・・・あっ?
バリッ。
「尻が!尻が割れた!」
「何てことなの!リフレのお尻が割れたわ!!」
「ちょっ、ガン見してんじゃねーよ!着替え!着替えるから!
ちょっとマリッサさんどっか行ってくれませんかね?」
しっ、しっ、とマリッサを追い払う。
股の間が空間になってるせいで、大事な部分が見えちゃうだろ。
尻も十分問題だとは思うが・・。
狭い部屋なので、間仕切りを使わないと延々ガン見される羽目になる。
向こうは伸縮性だの、弱い部分だのが知りたいらしいので、破けた所が気になるみたいなんだよね。
脱ぐまで待てや。
このパーテーション、割とよく使う。
アイテムボックスから取り出す時の、ど○で○ドアみたいな出現の仕方も気に入ってたりする。
問題があるとすれば・・・。
「まだかしら?」
「馬鹿!終わったら声掛けるから!」
ちょっと高過ぎて向こうの動きがが見えないんだよね。
うう・・半裸というか、ほぼ全裸を見られた・・。
何?俺、全裸キャラなの?こういうキャラだって思われるの嫌なんだけど?
しかし、着脱し難過ぎんだろ。
「やっぱり、ドワーフとヒューマンでは体型が違い過ぎるのね・・。
再利用できたらと思ったけど、駄目みたいなのよ。」
当 た り 前 だ ボ ケ !
身長が頭3つ分も違う種族のを再利用しようとするなよ!
通りでピッチピチだと思ったよ!いや、生地が厚いから、見た目はそんなでも無かったけど!
「おい・・。」
「伸縮性抜群だからいけると思ったのよ!本当によく伸びる生地で、小さく見えるけどかなり伸びたのよ!」
俺のツッコミを察したのか、マリッサが早口で言い訳を並べる。
しかし、それは墓穴というものだ。
「限界まで伸びた生地を限界以上に伸ばそうとすりゃ、破れもするわ!」
「・・そうなるかもと思ったから、海で試すのは止めたのよ・・。」
「確信犯かよ!!!」
ちなみに、この生地は、俺の水泳スーツの為に再利用されるそうです。
・・・必要か?これ。
着替えが終わって出掛けた先は、採寸所だった。
ここで、服や装備の細かい採寸ができるそうな。・・・最初から連れて来いや。
・・・。
おや?裁縫セットが売ってる。
昨日、男に刺された服、捨てるのも勿体無いし、洗濯に出したらほつれそうだし、困ってたんだよな。
装備メンテナンス用にしてもいいと思ったんだけど、そんなに古くないし。
買っておこう。糸も欲しい。白いのだけで構わない。
うん、これで困った時には再利用できるな。修繕が面倒臭いけど。
この世界の服、アイテムボックスがあるおかげか、ポケットが付いてないんだよな。
ポケット用の布としても使えるかもしれない。
メモ帳を胸ポケットに入れておくと、安心するんだ。物忘れが激しいからな!
「リフレって、店に入ったらとりあえず何か買ってるわよね・・・。」
え、俺、そんなイメージなの?必要な物だけだよ?いやマジで!
採寸をしてくれたのは、若いドワーフ達だった。
見習いの仕事なのかもしれない。
頭の上のスザクを見て戸惑うのは止めて欲しい。
測らなくていいから。
測量は滞りなく終わる。
で、だ。
まだ少し早い時間ではあるが、その辺をブラブラして、いい感じの飯屋があったら入るには、丁度いい時間なんじゃなかろうか?
「なぁ、マリッサ。久しぶりに何処かに食べに行かないか?」
朝も、昼も、晩も、ずっとあの宿の飯なのだ。いい加減、飽きた。
「そうね!ギルディートに案内してもらいましょ。」
うーん、まぁ奴にも奢ってやるか。
マリッサへの埋め合わせのつもりだったが、あいつがいた方が迷わないし、美味い店とか知ってそうだしな。
俺達は宿に戻り、そして・・・ギルディートがチェックアウトをしている事を知るのであった。




