暴力という手段
暴力的な表現があります。っていう注意は別にいらんよね?
今後、グロも込みでしませんので注意。
向こうが殺る気なのだから、仕方ないよな。
膝と腰を曲げ、強引に仰向けになると、タックルで絡み付いてきていた男達を蹴り飛ばす。
第二陣、第三陣が構えていたが、遅い。跳ね起きてまとめて蹴り飛ばす。
うん、ちゃんと足が動けば、2人ぐらいは余裕でまとめて飛ばせるわ。
3人からは勢いを付けないと、体勢だけでは体重負けする。
マリッサは地面に投げ捨てられているが・・息はしているな。
戦闘が始まったのに、暢気にいつまでも首を絞め続ける馬鹿男じゃなくて良かった。
その馬鹿男も俺の蹴りを食らって壁まで飛んで行き、呻いている。
「俺は、穏便に済ませるつもりだった。お前らさえ、こんな手段を取って来なければ、穏便に済む話だった。」
正直、暴力沙汰は好かない。何しろ、俺自身が凶器みたいなもんだし、できれば、本当に穏便に済ませたかった。
俺は、気絶しているマリッサの所にスザクを置く。
何かあったら声を出してくれ、と言ったら、まるで分かった、とでも言うように、マリッサの体に乗って胸を張った。
手枷の鎖だが、これ繋ぎ目が溶接されてないんだよな。だからこそ着けたんだが。
鎖の1つを捻ってみると、ちょっと硬かったが曲げることができた。
枷自体を外したいが、とりあえずはこれでいいだろう。
鎖を分断して両手が自由になった頃、蹴り飛ばされた奴らが俺を囲んで身構えていた。
「怪我では済まないかもしれないが、俺に暴力って手段を選ばせたのは、お前らだからな。」
威嚇でもある。だが、言っておかなければ気が済まなかった。
相手を気遣っての事ではない。自分自身に対する言い訳みたいなもんだ。
「怪我では済まないのはどっちdヴェバッ?!」
飛び掛って来た男が地面に叩き付けられ、静かになる。
気絶しちゃいないし、新でもいない。ただ痛みで声が出ないだけだろう。
ただ、今回は、結果的に死んでしまったとしても、心を痛めてやるつもりも、蘇生させてやるつもりも無い。
町中でこいつらと戦闘になった場合については、ギルマスに確認を取ってある。
もし自分、乃至仲間が殺されそうになった場合は正当防衛と見なされるのだ。
「俺に暴力って手段を選ばせたのは、お前らだからな。」
大事な事なので2度言いました。
さて、敵の無効化だが、気絶だけ選ばなくたっていい。一番の狙い目は足だと思う。
呼んで字のごとく足止めになるし、よほどの怪我をさせない限り死なないだろ。
最初に飛び掛って来た男を皮切りに、どんどんと男が飛び掛って来るが、ローキックで応戦。
足を狙うには足でだ。腕は補助だな。
時折、手ごたえで折れたのが分かるが、折るつもりでやっている。
靴がクッションになっているのか、加減を忘れても千切れ飛ぶ事はないみたいだけど、変な方向に曲がった上でヘロヘロブラブラと骨や関節関係なく垂れ下がった患部は、見ていて気分のいいものじゃない。
複雑骨折というか?潰れた感じ?ここまでやるつもりはなかったんだ。
ほとんどが、折れる前に転ぶか吹き飛ぶ。無意味に痛めつけるつもりはないんだが、思い切りが足りないのだろう。
こう・・綺麗に折ってやりたいんだが、どうも上手くいかないな。
壁際に追い詰めた男と背後から迫ってくる男に挟まれた。背後の男にローキックを、壁際の男には牽制を。
おっと、パンチを寸止めしたはいいが、枷に付いている鎖が、男の頭の横の壁を抉った。
一歩間違えば、この男の頭がこうなっていたわけか・・・。男の頭は石造りじゃないので、ミンチか。危ない。
すまん、耳の横ですごい音をさせてしまったな。うわ。汚い、漏らすな。
ニャンコロノフの時と違って、敵は減っていくばかりだ。
痛みで戦意を喪失してくれるし、足を痛めているので、逃げることも、もう一度向かってくることも難しくなる。
「何処へ行く気だ?」
俺と交渉していた男の前に立ちはだかった頃には、死屍累々といった有様だった。
わずか数分であったし、誰一人死んじゃいないが。
「死ねぇっ!」
「うっ?!」
なかなかのAGL(敏捷性)だ。
逃げて見せたのは油断を誘う為だったのだろう。
あの糞トロイ逃げ足とは、まるで別人の斬り込みを見せた。
俺の腹に突き立てられたナイフを見る。
切れてなーい。
いや、切れてるな。
「服に穴が開いちまったじゃねーかよ!糞がっ!」
グリグリするな。地味に痛いわ。
「お前・・化け物かっ?!」
失礼な。ステータスが高いだけの人間だよ。
そういえば、前にギルディートに「そのステータスが化け物なんだよ」って言われたような・・
まぁ置いておこう。
「コケェーッ!!!」
スザクの叫び声に振り返ると、マリッサに向けてナイフを振り下ろす男がいた。
それに気を取られた瞬間、俺と話していた男が逃げ出す。
が、追うわけにはいかない。マリッサが優先だ。
アイテムボックスからテキトーなアイテムを投げたが、俺の足の方が速い。
武器を持つ手を弾き、避けると同時に男の顔面に桶が当たった。
風の抵抗を考えると、投擲した物よりも、動力である自分の足の方が速い場合があるのか。
スコーン!!といい音を立てて炸裂し、男は気絶した。
「コケッ!」
転がった桶を見て、スザクが抗議の声を上げる。
散らばったタオル。スザクの寝桶だったらしい。すまんすまん。
謝りながら褒めておく。よく教えてくれた。お前のおかげで助かったぞ。
距離があったせいか、桶が軽かったせいか、桶にも男にも致命的なダメージは無いようで良かった。
ナイフを握ってた右手がめちゃめちゃなのは致命的?自業自得だし、これで死ぬこた無いだろう。
が、こいつの左腕は折らせてもらおう。今更、心も痛まない。
既に両足とも折れてるようだから、骨折の一本や二本、増えても誤差の範囲だろう。ナイフも没収だ。
ここにマリッサとスザクを置いて行くわけにいかないので、マリッサを担ぐ。
スザクも頭に乗った。さて、あいつを追いかけよう。
・・・・。
どこに行った???
そういえば、名前を見るのも忘れていたな。
宿で、相手にネームを見られた時は、仕返しではないが思わず見ていたんだよな。
もう捕まったので覚えておく意味も無いと思ったし、覚えてないが、今の奴は見ておけば良かったな。
なんか、取り逃がしたら不味いもんを取り逃がしてしまった気がするが、とりあえずギルドに連絡しよう。
そう思っていたら、早速、衛兵の集団がやって来た。
奴らが吐いたのか?
素早い仕事に感謝する。
「お前、何者だ!」
「こんな時間に怪しい奴。一緒に来てもらう。」
・・・・・取り囲まれて捕縛されますた。
そりゃ、ロープで縛られて猿轡を噛まされた女の子を背負って歩いてたらね。
事情を説明する必要もあったので、大人しく衛兵に付いて行く。
いや、俺に人手を3人も割かずに、向こうの死屍累々としてる方を即急に何とかして欲しいんだが・・。




