作戦の立案
レベルとか、装備の一覧も見せてもらった。
しかし、レベルはほとんど自己申告だし、鑑定マークが付いているものもあったが、2年前に鑑定という注釈が付いていたりした。
装備も○○ソードとか○○の杖とか書いてあるが、補正までは載っていない。
つまり、ほとんど参考にならなかった。
だが、使用した魔法なんかを見るに、高く見積もってもギルディートあたりとそう変わらないレベルだろうと思う。
魔法使いがそのレベルという事は、PTメンバーもそう離れちゃいないだろう。
地上と勝手の違う水上戦とはいえ、そこそこ強かったはずだ。
それが16人ほどで 多人数 対 強敵 か。
船の規模とPT数を無視して、冒険者の数だけ見ると、先頭参加者と、その使者の割合は大きく違わなかったりする。
そして、今回俺が相手をするのは、シーサーペントではない。
いや、シーサーペントだけではない。
・・・・勝てるのか?
他にも、この結果を見て分かる事がある。
離れた船に、一切手を出して来ないのだ。
かといって、ヒット アンド アウェイ・・殴っては逃げるを繰り返す戦法を取れば、そんな相手でも移動して来る可能性はある。
俺は、オッサンに、作戦を相談した。
・・・・・・・・。
「・・・死ぬ気か?」
んなわきゃーない。
「あくまで立案段階ですよ。もっといい策があれば、そちらを採用します。
何人も死んで討伐成功するくらいなら、誰も死なずに帰ってきた方が、討伐に失敗したとしても、俺は『成功』だと思います。
これまで討伐に参加してきた冒険者がそうであったように、俺は死ぬ気も無ければ、誰かを死なせる気もありません。
この作戦なら、今までの資料からも、おそらく大型船に乗っている人は無事に帰れるでしょう。
また、早い段階で大まかにでも作戦を決めておいた方が、コストの算出・及び捻出に困ることが少なくなります。準備期間も必要でしょう?
であればこそ、俺が現段階で何を考えているのかを責任者に報告、コストや人員の相談、方向性に間違いがあれば指摘してもらう必要があります。」
俺のプレゼン調の説明を、ギルマスのオッサンが額に皺を寄せて聞いている。
こういう場合には具体的な数字を入れるものだが、俺の手に負える数字じゃない。
おそらく、大型船なんかは買える金額じゃないだろうし・・。
いや、豪邸を買えるだけの資金が無いでもないが、これは今は使えない。
なので、これまで使われた物は再利用だ。
バリスタ船やその材料、設計図が残っていたら使ってもらう。
国境警備隊が文句を付けたとかいう船は残っていないだろうか?
残ってるというのなら、是非使わせて欲しい。
無いなら、大型船は貸してもらうとしよう。討伐の為に協力してくれる金持ちとかいないかな?
おそらく、バリスタと小型船、そして小型船を動かす魔道具を作らなければならず、その辺にも金がかかるだろう。
「そうだ、お前さん、“ミラバドの涙”以外も売ってくれる気は無いか?」
何だ藪から棒に、と思ったら、資金調達の相談だった。
“ミラバドの涙”は順調に売れているどころか、「あるならもっとくれ」と予約状態なのだとか。
別に売らないと言った事は無いんだが・・。むしろ、一度に売られたら困るって・・。
「現在、首都では『珍しいモンスターの素材』に流行が来ていてな。あれば色々見せて欲しい。」
なるほど。じゃぁ色々出してみよう。
このキャラの狩場のゴミだな。
・腐食したゴーレムのかけら
・キマイラの骨
・毒の砂
以前、ましゅまるに差し出してプチ切れられたやつだ。
宝石扱いの“ミラバドの涙”程の価値は無いにしても、高レベゴミだから、少しはいい値で売れるかもしれない。
「・・・。何だ?これ・・金属片?と、動物の骨?この砂は?」
「毒の砂ですね。」
ギルマスのオッサン、出しかけていた手を慌てたように引っ込めた。
「何て物を出しやがる」って顔でこちらを見ている。
「う、うん。一応、鑑定に出そう。価値があるかもしれん。」
価値が無さそうなんですね、わかります。
鑑定した人が毒の砂の毒にやられたら可哀相なので、万能薬を渡しておく。
・モグゴンの爪
・サボンナッツ
・シャドウエッジ
・ミラバドの涙
うん、ギルマスの表情を見れば分かるわ。
こっちの方が価値があるっぽい。
いつも通り、ミラバドの涙を換金する。今日は2つまでか。
一日の始めに2つ換金できるってことは、少しだけギルドの経営というか、経済状況が改善してきているのか?
で、いくつかのアイテムを、料金後払いという形で渡しておいた。
ギルマスのオッサンの提案を受けた形だ。
定番の
「いいですよ。」
「やはり駄目か。わかっていたが・・・えっ?」
というやり取りができたので満足だ。
ギルドの方で買い取れる資金ができたら、もしくは、買い手が付いたら、一定額を支払われるようだ。
ギルドって仲介料で儲けているっぽいな。
まぁ、今は資金難だから難しいみたいだけど、基本的にいつでも買取してくれるというギルドの存在は重要だ。
蚤の市に売りに出た事はあるけど、詳細の説明ができて少し高く売れる代わりに、拘束時間が長過ぎる。
自分で売る、という手は無いと思ったよ。
「コケ。」
さっきから、スザクがギルマスのオッサンを威嚇している気がする。
うん?何か忘れているような・・。あ、情報を渋った件、見事に誤魔化されたな。
まぁ、今更蒸し返しても藪蛇だ。
向こうがニャンコロノフの件を蒸し返してきた時のネタとして取っておくとしよう。
さて、懐も温まったし、帰るとするか。
まだ昼には早いな。
案内無しで歩くのも不安だが、マップを意識してゆっくり歩けば迷わないよな?
この間、ニャンコロノフで捕まったエリアには近付かないように、適当にぶらついて行こうか。




