町に戻ろう
さて、午後もよい時間だし、ささっと町に戻る事にする。
町はマップの最大範囲にもギリギリ映っていない。
俺はフィールドを駆けた。
っは。早ええ・・っ。
尋常じゃない速度だ。
車に乗ってるみたいに景色が流れる。
これならあっと言う間にコランダに・・・あ、マップに見えてきた。
あ、検証、検証。これは時間ないな。
走るのはやめよう。
うん、びっくりした。
マリッサが一生懸命歩いているのを見て、歩行速度の違いに驚いていたんだが、ゲームの歩行速度設定はどうやら生きているらしい。
AGIの高いキャラほど歩行速度が速い他、職業・・・というかキャラごとに歩行速度が違う。
補助のキャラなんかは「鈍足」と呼ばれており、クランメンバーに歩行速度を上げる装備をプレゼントされまくる程度には足が遅い。
おかげで、補助キャラにCCすると、クラメンにプレゼントされたフリフリ&キラキラの衣装に身を包まれる事になる。
ゲームでは割り切っていた仕様だが、今後は絶対に遠慮したい。
ちなみに、1stと呼ばれるキャラはゲーム作成時から存在するキャラで、王道ファンタジーと言った感じの、剣・弓・魔法・槍や斧なんかのキャラばっかりだ。
大剣キャラや補助キャラなんかがそうだ。
で、2ndと呼ばれるキャラは後から追加されたキャラで、ちょっと捻くれたキャラが多い。
そして、「運営の趣味」や「プレイヤーへのご機嫌取り」などと言われている程度に、幼女キャラや獣耳少女がいたりと、ツッコミには事欠かない。
テイマーという、ペットシステムの矛先を剃らす為に作られたようなキャラまでいる始末だ。
その2ndの投擲武器キャラ、通称クノイチの獣耳少女こそがキャラ最速だったりする。
まぁ、それも同じレベル帯、同じ装備であればの話。
所持するキャラで比べた場合、対PK特化のキャラの尖がったステータスを除けば、やはりメインキャラに軍配が上がるだろう。
それでも「どちらが速い?」と聞かれると悩む程度には速いのだから恐れ入る。
そして、スキルの使用によって速度を上げることができるので、一概に「このキャラが一番」とも言えないんだよな。
1stキャラこそ熱中してレベルを上げをしたものの、ほとんど2ndキャラは150前後で止まっている。
投擲キャラは160ぐらいだっただろうか。
どちらが速いのかを比べたことはないが、それでもレベル差を感じない程度には速かった気がする。
2ndキャラでも銃キャラは例外だ。メインを語るだけあって(?)246レベルと大剣キャラに追い付かんばかりだ。
まぁ・・・お色気キャラを狙ったような外見なので、投擲キャラも封印対象だ。
だいたい、ファンタジーにクノイチって何だよと思う。
それを言うなら銃もなんだけどさ。銃はほら、ロマンだから。
いや、クノイチも自分が羞恥プレイさせられることを前提にしないのであれば、大いに結構だと思うのだが。
そういえば、ペットシステム以外にも廃れてしまったシステムがあったな。
それが2ndキャラが登場した頃に出現した「乗り物」だ。
これがなんと一定の速度なので、低レベル時はともかく、高レベルになって装備が整うと走った方が速かったりする。
しかも、乗り物に乗ってる間は攻撃を受けても攻撃できないという仕様。これは廃れる。
その上世界観がめちゃくちゃで、掲示板でもものすごい避難されまくっていたな。
話が勢い良く逸れまくってしまった。
ともかく、歩行速度だけでも低レベルの冒険者と比べて異常な速さなのだ。
ゲームの世界であるうちは、初心者と上級者の違い程度だったが、リアル世界となるとどう転ぶか分からない。
「持ち物」のように「当たり前」であれば問題ないのだが。
俺の感覚からすれば、現実世界で車と並走する人間がいたら、それは怪奇現象だ。
世間的には「ただの冒険者」として埋没しつつ、スローライフを送るのが望ましい。
そう言って埋没できないのが小説の世界。
でも、俺は違う。
うん、きっと違う筈だ。 ・・・多分。 ・・・・・めいびー。
さて、マリッサたちはどうなったかな?
・・・作業、終わってるといいんだが。
・・・・・・。
行かなきゃまずいよな。さすがに。
俺は意を決して西門をくぐった。
行きには広場にまだ人が残っていたのだが、帰りには誰もいなかった。
虫を炒っていた釜も片付けられている。
よし。
宿の裏の畑に向かう。
すると、マリッサと女将さんに数名が加わって、お茶会が催されていた。
見る限り、あのフォレビーの小山は影も形もない。
「あ、お帰りリフレ~。」
マリッサがこちらに向かって手を振る。
振り返ってみたが誰も居ない。
「あ、ゴメン。リーフレッドの事だよ。」
実は、その呼び方はクランでも呼ばれていたりした。
最初はリーフさんと呼ばれていたんだが、リーフ被りした人がクラメンに加わって呼び名が変わったのだ。
決して大剣キャラだから冷遇されたとかじゃないんだからね!向こうが譲らなかっただけなんだから!
閑話休題。まさかとは思ったが、ここで呼ばれるとは思わなかった。
なんだかとても懐かしい。
「お、おう。」
近寄ると、数名のオバサマ達の視線が集中した。・・・なんぞ?
「はじめまして。うふふ。」
「思ったよりも男前じゃない。」
「挨拶ぐらいしなさいよアンタ。こんにちは。待ってたわー。」
・・・待ってた?
ああ、本命か。
「この人たち、ご近所さんなんだけど。蜂蜜分けて欲しいって。」
若干申し訳なさそうな顔のマリッサ。
ご近所さんなら仕方ないね!
もしかして、あの虫の小山も手伝ってくれたのかな?
もしそうなら、ケチケチするわけにもいくまい。
ってか、甘いものは嫌いじゃないが、あの虫の体内から出てきた液体だと思うと無理に欲しいとも思わない。
俺は笑顔でサムズアップを掲げ、蜂の巣を取り出した。
ちょっとした説明回でした。
女キャラは羞恥プレイ。封印対象だ(キリッ)
埋没できないのが小説の世界。でも、俺は違う(キリッ)
大丈夫だ、問題ない。