ペットと戯れよう
“ペットシステム”
それは、お役立ちペットを手に入れ、育てて召喚するというもので、職業の召喚師とはまた毛色が違う。
そして、ペットの住む亜空間、フェアリーガーデンから預かり所にアクセスできたり、戦闘で一緒に戦ったりと、内容を聞くだけならわくわくする、夢のようなシステムだ。
その実、ペットのレベルを上げないと機能が開放されなかったり、フェアリーガーデンにいけるのは安全地帯(町)のみだったり、ペットの攻撃力が低過ぎて役に立たない上に、横狩り(他のプレイヤーと戦っているプレイヤーに横槍を入れて、ターゲットを奪うこと)をしてしまったりで、愛玩用に落ち着いてしまった。
それに、ペットを連れていると進行できないイベントや入れない区域なんかもあった。
普通、逆じゃね?ペットが居ないと通れないとか、そういうイベントや地域を作るべきじゃね?
廃れるのも当然と言える。
フェアリーガーデンはペットがいなきゃ行けない?確かにそうだのだが。
先ほど挙げたように、町に行かなければフェアリーガーデンへ入る事ができない。
でも、各町に預かり所があるんだから、その旨みも無いに等しい。
どうしてこんな仕様にしたんだか。
「わざわざフェアリーガーデン使わなくても預かり所に行けばいいじゃん。レベル上げるの大変だし。」
って流れになるよ、そりゃぁ。
しかも、卵時代、幼体時代を超え、フェアリーガーデンに行く事ができるようになると、だ。
それまで可愛かったグラフィックが、モンスターと同じモノになるのだ。
更に成長すると見た目が変わるのだが、その仕様がプレイヤーの持つ「特別なモノを持ちたい」という願望を刺激した。逆方向に、だ。
横狩りをする上に弱いし、成長すると可愛くない。じゃぁレベルを上げなければいいじゃん。
そんな感じで、このシステムを使う人は愛玩用に連れ歩き、それ以外の人はシステムの存在すら忘れ去るという結果を生んだ。
ちなみに俺は後者だ。
レベルを上げて強くしたはいいけど、横狩りをしまくるペットを連れ歩くのは厳しく、召喚しないようになり、やがて存在を忘れた。
たまに餌と与えないとアイコンが出るので、その時に「ああ。そういえばいたな、コイツ。」と思い出す程度の存在と化していた。
その結果、めったに餌を上げないこいつの好感度はゴリゴリと下がり、ゲームが現実と化した結果がこれである。
「クエ!!クエエエエエエエエエ!!!!」
「いや、ちょっ、まっ」
俺は高速で繰り出される噛み付きを必死で避けていた。
油断すると引っ掻きが待っている。
バッシーン!!!
ああ、尻尾もあったっけ。
「痛いよ。ちょい、ちょっとタンマ・・・!」
距離を取ると、凶悪な視線を向けては来るものの、一旦、攻撃は収まった。
とりあえず、こういう時はどうしたらいいだろうか。
こいつの餌って何だったっけ?
このペットシステム、餌はレベル帯に合わせたドロップアイテムなのだが、運営は何を考えたのか。
いや、おそらく何も考えてなかったのだろうと思うが、鉱物だろうが毒物だろうが何でも食う仕様だ。
気をつけなければいけないのはレベル帯だけっていう・・・。
「あ、これなんてどうだ?」
・腐食したゴーレムのかけら
・キマイラの骨
・毒の砂
「キエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」
ドゴーーーーーーーーン!!バゴーーーーーン!ズゴーーーーーーーーーーン!!!!
思いっきりブレスを含む多段攻撃を食らった。
めっちゃ怒ってる。どうやら違ったらしい。
他にそれらしいゴミ、もとい餌になるアイテムなんて・・・
「お?」
それ「らしい」アイテムがあるじゃないか。
俺は恐る恐るフォレベアの死骸を差し出した。
レベル帯だけで言うとアウトだが、運営の適当な仕様こそオカシイのであって、常識的に考えて、餌といったらこっちの方が妥当だろう。
「・・・・・・・。」
どうやらお気に召したらしい。
まずは一安心だ。
さっき出したアイテムをしまう。
この世界での価値がどうなのかは分からないが、250レベルの狩場のドロップアイテムなだけあって、高く売れるはずだ。
それに、大量に必要ではあるが、武器や魔道具、薬の素材にもなる。
で、食事中のペット:ましゅまるに意識を集中する。
[ペット:ましゅまる]
うん、知ってる。知りたいのは詳細だ。っと。
[レベル:8 好感度:12 幸福度:23 状態:空腹]
[もっと面倒を見てあげて!]
ペットの最大レベルは10だったと思う。
それは最新の話で、俺がまだペットを育ててた頃は最大が8だった。
レベル8でブレス攻撃を覚え、戦闘に参加できるようになった結果、ペット離れを引き起こす事態となってしまったわけだが。
面倒は・・・すみませんとしか言いようが無い。
確か、好感度は普通~満腹の状態でしか上がらず、好感度は幸福度が50以上無いと上がらなかったはずだ。
で、フェアリーガーデンに行ける条件は好感度70以上だったかな?
・・・・・・・・。
「ましゅまる、ごめんなぁ。
言い訳をするようだけど、でも半分以上は運営が悪いんだ。
本当は俺もずっと連れ歩きたかったんだよ・・・・・。」
頭を撫でたら、食事の邪魔をするなとばかりに噛まれた。
・・・甘噛み、だよね???
ともかく、フェアリーガーデンまでの道は遠いらしい。
さて、食事も終わったみたいだし、送還:ましゅまるっと。
「・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
なぜ送還できない???
何故か睨み合うような形になる俺とましゅまる。
「クエエ。」
ブラシが頭の上に落ちてきた。
ペットのお世話アイテムだ。
ああ、そんなものもあったね!
「・・・?」
ああ、ブラッシングをしろと。
小っさかった頃ならともかく、お前、毛なんて生えてるのか?
まぁいい、それで気が済むのならいくらでもブラッシングしてやるさ!
数回の「やり直し!」を受けつつ、馬より一回り小さいましゅまるをピカピカに磨き上げる。
ようやく納得したらしいましゅまるは、最後に一鳴きして送還って行った。
少しは機嫌を直してもらえていたら良いんだけれども。
フォレベアは伏線じゃない。たまたまだ(キリッ)。




