表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/430

斜め上空の戦い

俺が剣を構えたのは、敵対の意志を感じたからでもあるが、それだけではない。


[人喰らい]


そいつのネームだ。

どこかでそう呼ばれているという事であり、つまりは人を食い殺した、という事だろう。

外見の特徴で判断するとブラゴンというモンスターに見えるが、ブラゴンはせいぜい150レベルのモンスターだし、別物と考える。

体格は、ましゅまるより二回りほど大きいし、なんかゴツゴツしている。

プテラノドンという恐竜を思わせる外見だが、翼の他に鋭い爪の付いた前足が付いていて、こちらの方が些か凶暴そうな顔付きをしている。

まぁ、プテラノドンの顔付きなんぞ知らないわけだが、突き出した牙が怪獣っぽいというか、凶悪そうというか。

グラフィックではドラゴン系モンスターなんて色以外はちょっとした違いしか無かったのだが、結構違うもんなんだなぁ。

名前が付いてると他のモンスターより手強てごわいのはお約束だし。

手加減する必要は無いし、間違えればこっちの身が危ない。


スキル:斬首きりくび


スコッ、という、思ったよりも軽い手応えで俺を斬り裂こうとしていた[人喰らい]の前足が一本飛んだ。

岩のような外見だったので、もっと堅いかと思ったんだが、意外だ。

そして、その翼を掴み、背中に回る。

ふぅ、足場があるのはいいな。回転も無いし。

飛んだ前足は回収し損ねた。

もし回復させる事になるなら、あった方がいいと思ったのだが、何しろ空中戦。

俺には余裕も空を飛ぶすべも無いからな。


スキル:斬首きりくびは、重い一撃で、高確率でクリティカルになるスキルだ。

総合ダメージでは千斬乱衝(サウザンドミンチング)に劣るが、こちらを選択したのはダメージを分散させてしまうよりも、集中させて一撃入れた方がいいという判断したからだ。

相手の強さが分からない以上、表面だけ傷付けて終わる、というのは避けたかったしな。


「ギュオァ??!?」


スキル:疾風 のおかげで、俺は攻撃した上で[人喰らい]によじ登り、一息入れるくらいの余裕はあったが、[人喰らい(こいつ)]にしてみれば一瞬の出来事だったのだろう。

戸惑ったような挙動と声を上げる。

その翼の付け根に切れ込みを入れた。機動力を奪う為だ。

ましゅまるは飛ぶ前に羽ばたいていたし、魔法的な不思議力で飛んでいたとしても、翼が全く無関係ということはない筈だ。

切り落としたら落ちそうだから、そこまではしない。

・・・そして、効果はいまひとつのようだ。

どっかに着陸してくれないかなぁ。

いくら海上でも、100メートルの高さから落ちたら人ってだいたい死ぬらしい。

何メートルから落ちたら、水がコンクリート並みの硬さになるとか聞くし。


『首を飛ばせ!』


ましゅまるが何か言ってるが、コイツの言い分もあるだろうし、いきなり殺すのはどうかと思うわ。

喧嘩売ったの、ましゅまるだろ?

とはいえ、見たところモンスターだし、ネームも物騒なので、事と次第によっては討伐しなければならない。

言葉が通じなくても同じだ。相手はモンスターだからな。


「言葉がわかるか?」


念話を意識して話しかけてみる。

一応PTチャットやクランチャットは念話という扱いだった筈だ。

つまり、俺が使えない道理は無く、ましゅまるが話せるんなら、こいつも話せるんじゃないかと思ったのだ。

例え人を殺していたとしても自衛の為かもしれないし、事情があるなら聞いておきたい。

が・・。


「シギャァァアアア!!! ギシャァァァアア!!」


暴れる、暴れる。

こいつに傷を付けた相手ほんにんが背中に乗ってる訳だし、落ち着けって言う方が無理だろう。

だいたい、こうしてる間にも、ましゅまるが攻撃を加えてきているのだ。

割とアクロバティックな動きで、急旋回や宙返りを繰り返す。どうやら俺を振り落としたいらしい。

何度か話しかけてみたが、言葉が通じる気がしない。

軽くペシペシ叩いて気を引こうとしてみたが、それに対しての反応も無い。

コミュニケーションを取るのは厳しいようだ。

「生意気」とか言ってたし、ましゅまるとは話せるんだよな?・・ドラゴン語???


『無駄。殺せ。』


ドラゴン同士って仲間じゃないのか?斬れだの、首を飛ばせだの、殺せだの。

喋ったと思ったらこれだもんな。物騒にも程があるだろう。

仮に倒したとして、俺の足場ってコイツなんだよね。コイツを倒したら、当然落ちるだろう。

ましゅまるは俺を乗せてくれる気あるのか?チラとましゅまるを見てみる。


「フスン。」


・・・・・ですよね。


不本意ではあるが、討伐する方向で考えはまとまっていた。

仮に何か事情があったんだとしても、こうして相見あいまみえた以上、敵である。

それに、おそらく人を見付けたら、やはりまた襲うだろう。

そうなったら絶対に後悔する。


幸いにも、[人喰らい(こいつ)]のDEF(ディフェンス)(防御力)は思ったほど高くないっぽい。

戦って倒せない相手では無さそうだ。


背後の死角からというのは、ちょっと卑怯な気はしないでもないが、むしろ有利だし。

急所は射程内と言えるだろう。


何が問題かって、この高度なんだよな。

手応てごたえはあったものの、一撃で止めを刺せるような雑魚ザコではない。

地上で戦えば勝てる見込みは充分あると思うんだが・・・言っても仕方ないな。

ゲームで空を飛べるモンスターが地上で戦ってる方が不自然なんだから、こんな事もあるさ。


で、どうしようか?


俺は、機会が無くてしていなかったというか、うっかり先延ばしにしていた検証を試してみる事にした。


CC(キャラチェンジ):リーフレッド


俺は、125レベルのキャラにCC(キャラチェンジ)する。

何故かって、こいつが一番重量級のアイテムを持っているからさ。


俺は、アイテムボックスからワープポイントを取り出す。


「??!? ギュェエ! ギュァア!」


うん、ドラゴンでも重いもんは重いみたいだな。

さて、ましゅまるは・・・、っと。CC(キャラチェンジ)しても自動では送還されてないな?

ペット連れはログアウトすると、ペットも一緒に消えるが、やはりゲームと現実との違いがあるようだ。


このまま元のキャラに戻ってもいいんだけど、あっちはアイテムボックスの空きが少ないんだよな。

一応、戦闘中なので、咄嗟とっさに身動きが取れないようだと困りそうだしな。

戦闘になったら、また元のキャラに戻ればいい。


俺が[人喰らい]のスタミナを奪う為に出したワープポイントは、大変いい仕事をした。

あまりの重さに空中機動は不安定になり、宙返りをできるだけの速度が出せず、旋回を繰り返すのみ。

徐々に高度が下がり、ヘロヘロになっていく。


だが、速度は相変わらずだ。このワープポイント、ざっくり言うと“めっちゃ重い板”である。

それを両手で持っていた俺は、足の力だけでコイツの背にしがみ付いていたわけだが、度重なる旋回により風の煽りを受けた結果、俺はついに空中へと投げ出されるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ