俺、俳優を目指すよ
みるくを送り出してから2ケ月。俺は2学年に進級した。
2年になたからといって別段変化はない。勉強して、バイトをして、時々異世界でくろと遊んでやる。
転生したメリルのことに関しては子神たちは俺に情報を与えない。
くろにいたってはメリルと別れた時の俺の決めゼリフを真似て茶化しやがる。
「必ず見つけ出すよ。くろ様に教えてもらってね。自分で探す?冗談だろう?少子化が進んでいるとはいえ年間100万人近く生まれているんだぜ。なんで俺がそんなことをしなくちゃならないんだ。」
「くろぉ~、ちょっと聞いただけだろう。後、後半を捏造するな。」
「いや、捏造ではない。お主の心の呟きを聞いたのじゃ。我は創作が出来んからな。」
「はいはい、それは失礼しました。どうせ俺は一皮向けば暗黒魔王ですよ。」
「なんじゃ、自傷行為は多感な青年期の自己優先願望の表れだぞよ。お主まだ中二病を患っているのか?」
「うるさい、何が100万人だ。女の子はその半分だから50万人が正解だぜ、くろよ。ぬかったな。」
「お主、思い違いをしておらんか?メルメルは必ず女子として転生するとは限らぬぞ?現世での出生時の男女比は凡そ51対49で男子の方が上回っている。数字上はメルメルではなくメル太郎として生まれる可能性の方が高いぞよ。」
なに~っ!メリルが男の子として転生?いやそれは反則だろう!
確かに俺はメリルは女の子として転生すると思い込んでいた。
いや、普通そうだろう?異性に転生するなんて話聞いたことが・・いやそもそもそんな話、普通しないか。
「だっ、大丈夫だ。49%の確率で女の子だ。うん、大丈夫。・・大丈夫かな?」
「ぬふふふふっ、想像するのじゃ。18年後、お主の前に現れるメル太郎を。」
-押忍!自分、生前のメルクリルの記憶を持って生まれてきたメル太郎と言います。保さんには会えるのを楽しみにしていました。押忍!-
「ぎゃあーっ!メリルが、メリルがどっかの応援団小僧になっちゃったぁー!」
「なんじゃ?なんで応援団なんじゃ?別に普通の美少年でよかろうに。もしかしてお主の趣味なのか?」
「美青年・・?うわぁー、いやだぁー!美青年でも男は嫌だー!」
「見た目はメルメルそっくりじゃぞ?」
「メリルそっくり?・・ならいいか。」
「お主のメルメル信奉はすごいのぉ。安心せい、メルメルはちゃんと女の子として生まれ変わったわい。とゆうか母神さまがわざわざ男の子になぞするはずなかろう?」
「ぐはっ、はあはあっ、そっ、そうだった。くそっ、謀ったな。地獄に落ちるぞくろ、いや落ちろ!」
「我は仮に落ちてもVIP待遇じゃが、それでも良いなら落ちてやるぞよ?」
「くろよ、お前には信仰心というものがないのか?地獄のアイデンティーが揺らぐような真似はよせ。」
「どちらかというと天国の方が退屈じゃ。」
「くーっ、今、全国の天国ファンを敵にしたぞ、くろ!」
「あほ。そんなやつはおらんわ。あのメルメルですら天国には行っておらんのだぞ?生半可なやつでは天国の門の前で記念撮影をして終わりじゃ。」
「えっ、天国ってそんなに入るの難しいの?」
「本天国はな。仮天国なら自国通貨6枚で3年間入り放題じゃ。」
「くろ、話が段々ボロけているぞ。どうせつくならもう少しましな嘘を考えろ。」
「おっ、言ってくれるな。天国に言ったことも無いくせに我の話を嘘と決め付けるとは、お主も所詮無神論者か。」
「はいはい、どうせ俺はクリスマスに祈りも捧げずケーキを食べていますよ。で、なんかヒントは無いのか?」
「お主も懲りぬのぉ、大体今会ってもメルメルは1歳にもなっておらんぞ。おしめでも取り替えたいのか?」
「えっ、いいの?おしめ取り替えたいです!」
「今の言葉は録音した。成長したメルメルに聞かせてやろうぞよ。」
「あうっ、くろ様のイ・ケ・ズ。ちょっとふざけただけですぅ。」
「そもそも、転生したメルメルには18歳になるまで過去の記憶はないぞよ。」
「??どうゆうことです?」
「新たな体と人格の妨げにならぬようメルメルの魂は現世の仏様の下に預けてあるのじゃ。」
「はあ?」
「転生したメルメルの体には実は魂がない。そこにはメルメルの魂が入るからな。」
「言っている事がわかりません。」
「別に魂が無くても体は成長するし脳は記憶する。それらの一部始終は仏様を通じてメルメルの魂にリンクしておるのじゃ。」
「つまり転生したメリルは体と魂が分離していると。でも繋がってもいると?」
「そうだ、但しメルメルの魂側からは伝達できない。新しい体からの一方通行じゃ。メルメルから見たら観察だな。」
「何でまたそんなややこしいことをしてるんだ?」
「メルメルが望んだ。お主や我を思い出すために。」
「!!」
「こうしないと人格が多重生成されてしまい本来の魂が新たな事象に侵食され変異してしまうからな。そうなってはメルメルはお主を思い出せない。」
「俺のため・・。」
「そして死んだ歳と同じ位に体が成長したら魂は体に入れられる。相性が良くなるからな。」
「魂が体に入ればメリルは俺の事を思い出してくれるのか?」
「いや、無理じゃ。メルメルの魂は覚えているじゃろうが、体と記憶と心は新しい人生を送って来た新しいメルメルの体に主導権がある。そして新しい体にはお主や我の記憶はない。」
「でっ、でもさっきは18歳になったら記憶が戻るって言ったじゃないか!」
「18歳になるまで過去の記憶はないとは言った。魂が体に戻されることにより体は魂の記憶を共有することになるが、わざわざ魂の記憶を読み返すことはない。」
「すまん、よくわからない・・。」
「んーっ、例えるならパソコンに、ある日突然不可視属性の掛けられた外付けハードディスクが接続されたようなものか?」
「接続されたのは分かったが中身が見えないから気にしない?」
「そうじゃ。だが何かのはずみで不可視属性が外れれば体はメルメルの過去の記憶を認識するのじゃ。」
「つまり18歳になったからといって突然俺を思い出してはくれないとゆうことか・・。」
「まあ、我は魂が入った時点でメルメルに会いに行くがな。」
「ううっ、くろ様、どうか俺も連れて行ってくださいぃ。」
「なんじゃ、ズルはいかんぞ。お主、自分で探すと言ってたではないか。」
「だって、50万人はちょっと・・。せめてどこの町に生まれたかくらい教えてくださいよ。ね、ね?」
「必ず見つけ出すよ。くろ様に教えてもらってね。自分で探す?冗談だろう?少子化が進んでいるとはいえ年間50万人近く女の子が生まれているんだぜ。なんで俺がそんなことをしなくちゃならないんだ。」
くろがまたメリルと別れた時の俺の決めゼリフを捏造して非難する。
くそ~っ、お前だけ子神特典で会いに行くなんて言うからちょっと羨ましくなっただけだ。でも周りがみんな手を挙げているのに自分だけ答えが分からない学生の気分だ。これは辛いぜ。カンニングしちゃだめですか?駄目だよねぇ。
「ところでメリルが俺を思い出すきっかけってなんなんだ?これも秘密か?」
「いや、秘密ではない。というか秘密ですらない。目の前にお主が現れればそれで済むぞよ。」
「へっ?」
「お主の写真を見るだけでも思い出すかもしれん。」
「はあっ?」
「お主がロリコン疑惑でテレビニュースに映ればほぼ絶対思い出すな。」
「それって・・、つまりメリルが俺を見てさえくれればいいってことか?」
「そうじゃ、絶対ではないがほぼ確実じゃ。だが18年後のお主を見てもメルメルは分かるかのぉ。」
「くっ、それは・・。」
「何かをやらかして18年間逃亡生活を送れば全国指名手配の犯人写真としてタダで交番に今の写真を掲示して貰えるがどうじゃ?」
「くろ様、もう少し空気を読んでください。今は真剣な話をしているんですから。」
「我はもう、飽きた。」
「後でちゃんと遊んであげますからもう少し情報をくださいよ。」
「なに!そうか、ならもう少し教えてやらんでもないぞ。」
「ではメリルが今住んでいる場所と今の名前を教えてください。」
「沖縄県の千代田区1番地で、名前は羽川翼じゃ。」
「すいません、俺が悪かったです。」
くろは俺に絶対教える気はないらしい。まあ、メリルの転生には母神さまが関わっているから無理もないか。くろたち子神にとって母神さまは絶対だからな。
でも希望は見えてきた。それもかなり明るい希望が。俺はメリルに見つけると言ってしまったが、保険としてメリルに気付いて貰う方法も模索することにする。
くろの例えじゃないが、何処にいるかも分からない人に気付いて貰うには有名人になればいいんだ。それも出来ればテレビ系の。ニュースキャスターでもいいけど今時の子がニュースを見るかは疑問だ。いや生前のメリルは見ていたけどね。
メリルは女優に憧れていた。いや、目指していた。このことは転生した子に引き継がれないだろうか?
絶対とはいえないがそもそもアイドルや女優に憧れるのは普通のことだ。
俺は転生したメリルに気付いてもらう為、俳優を目指すことにした。




