メリルといい感じになる俺
母神さまの仲介?で皇帝陛下と魔王は手打ちをすることとなった。
双方遺恨はあるのだろうが黄門様の御印籠たる母神さまのお言葉である。これは絶対だった。絶対だからほぼは付かない。
母神さまがご光臨になったというので全世界から子神たちが集まってくる。
もうそこ等辺、子神だらけである。メルも学園青春エリアの4人に連れられて帰ってきた。
母神さまは3日ほど子神たちとお遊びになり、その後、お住まいにお帰りになられた。
俺はメルと二人っきりになりたいのだが母神さまがお帰りになっても子神たちは帰ろうとしない。
何でだろうとくろに聞いてみた。
「皇帝陛下がお主の3級勇者への昇格をお決めになった。その式典に出席する為残っておるのじゃ。」
3級勇者?昇格?3級って昇格なの?
「3級は最上位じゃぞ。この上は弩級しかないが弩級は名誉位だから死なぬと貰えん。」
「くろ様、まさか今考えたんじゃないでしょうね?」
「バカを申せ、この世界の解説~改定、改定で内容が破綻しているのが自慢~改訂版にも載っている由緒正しき設定じゃ。」
ん~、そんなこと書いてあったかなぁ。
「式典はいつなんですか?」
「今日の正午じゃ。我も準備で大わらわじゃ。期待してもよいぞよ。最高の余興を用意してやるからのぉ。」
「俺は別に準備することはないんですよね。俺、メルと現世での今後について少し話したいんですが。」
「なんじゃ、乳繰り合うのか?ラブホにしけ込みたいのか?まったく青春ど真ん中の男女はそれしか頭にないのかのぉ。」
「ばっ、ばか言うな!俺と違ってメルは戦う術を持っていないんだ。現世の魔王の手下共に狙われるかもしれないだろう。
そういう事の相談をするんだ。決してやましい事など考えるか!」
「仕方ないのぉ、これだから軟弱草食系などというジャンルができるのじゃ。
まあよい、メルメルも子供ではないからな。式典の用意が整うまで二人でいろ。ほれ。」
くろが指をパチンと鳴らした途端、俺は真っ白な砂浜に飛ばされた。
傍らにはメルもいた。どうやらくろが気をきかせて二人だけにしてくれたらしい。
「保さん、ここは・・。」
メルは説明抜きでいきなり飛ばされて来たのだろう。ちょっと戸惑っている。
「えーと、くろに頼んで二人っきりにしてもらいました。
いや、二人っきりといっても、話、そう、今後の話をちょっとしたくて。
ほらさっきまでの所は子神さまだらけで落ち着いて話も出来そうになかったんで。」
「ああ、・・そうですね。でもいきなりだったんでちょっとびっくりしちゃいました。」
「そ、そうですね、まったく、くろは性急過ぎます。」
「これから私たちはどうなっちゃうんでしょう?」
メルが話題を変えてきた。
「メルさんは皇帝陛下が守護神だからメルが望めば学園青春エリアとのやり取りは今まで通りにできるそうです。」
「そうですか、よかった。」
メルは安心したらしい。まだそれ程一緒にいた訳でもないだろうがあの4人の子神たちとは別れたくないのだろう。
「メルさんは今回のことを迷惑に思ってないんですか?」
「ちょっと怖かったけど、でも保さんやくろ様が解決してくれましたから・・。」
く~っ、嬉しいぜ、実は俺、大したことしてないんだけどメルの中ではくろより前に呼んでくれるのね。
「魔王とは手打ちをしましたが現世の魔王シンパは魔王から独立したそうです。」
元々クズたちの自己保全衝動の質を上げるキャンペーンもシンパたちが独自にやっていたことらしいから、魔王はただの神輿だったのかもしれない。
「元の世界には魔王の影響を受けた人たちがいるのですか・・。」
「大丈夫です。俺が守りますから。全世界を敵に回しても守って見せます。」
言いながら俺は思わずメルの手を握ってしまった。
メルはちょっと驚いたようだが俺の真剣さが伝わったのか頷いてくれた。
その後はお互いのことを話したりしていたのだがメルが俺を見ながら急に黙り込んだ。
「・・・。」
俺の心臓は最高心拍数と圧で血液を全身に送り出す。
あまりの高圧に自分の鼓動が聞こえるほどだ。
俺はメルの肩に手をやりそっと抱き寄せる。
メルは頭を俺の肩に載せてくれた。
多分メルにも俺の鼓動が聞こえているだろう。でも不思議と恥ずかしくはなかった。
今、世界はふたりだけのものになった。
波の音も風の音も聞こえない。
そう、もはや何者もこの世界に割り込むことはできないのだ。
そしてしばらく俺たちは二人で海を見ていた。
ぱこん。いきなり頭部を何かで殴られた。
振り返るとくろが指揮官棒を手に立っている。
「お楽しみのところ悪いが式の準備が整った。帰るぞよ。」
「くろ、てめぇ~。わざとか?わざとだな!豆腐の角をぶつけるぞ!」
「一応10分は待ってやったのじゃがな。己がヘタレさを呪え。」
くろはやってられんとばかりに指をパチンと鳴らした。
くろ~、お前には情けというものがないのか!




