ぽっちの書いた小説をwebに投稿する
あれ以来くろは俺の部屋に居ついてしまった。俺のアパートはペット禁止のはずなのだが、なぜか大家さんや隣の住人は文句を言ってこない。くろのヤツなにかやったな。
「お主もwebばかり見ていないで、たまには振り込め詐欺の電話でも掛けぬか。110番に無言電話という遊びもあるらしいぞよ。」
「くろ、そういうのはたまたま人間に生まれてしまった前世が豚の糞だった一部の特殊能力者だけが許される儀式なんだよ。」
「なはははは、我にしてみれば豚の糞も珍宝の真珠も大差ないがな。
あやつら己が所属している組織の社会基盤に寄生しているだけで何も寄与しておらん。だから魔王は大喜びじゃ。」
「なんで魔王が出てくるんだよ。」
「魔王の力の源はクズたちの自己保全衝動だからのぉ。お主たちは魔王を悪の頂点のように言っておるが、実際の魔王は悪さをせぬ。」
「どちらかというと悪を制御し抑制しておるぞよ。悪の暴走は自己保全衝動の質を落とすからのぉ。」
「もしかして知能犯とかは魔王の忠実なしもべなのか?」
「認識はしておらんだろうがな。ほぼ全ての自己保全衝動は魔王の元に集まる。
最近は人間も増えたからのぉ、今じゃ魔王は異世界一の大魔力持ちじゃ。」
俺は勇者の肩書きを持っているけど魔王討伐は降ろさせていただきます。
「なんじゃ、ぽっちの原稿ではないか。お主、捨てたんではなかったのか?」
くろが机の上に置いてある原稿に気づいた。
「あれから考えたんだけど、せっかく書いたんだから他の人にも読んでもらえればぽっちさんも浮かばれるかなと思ってさ。」
「なんじゃ、お主が自費出版してくれるのか?仕方がない、我の取り分は6割でよいぞよ。」
「ちげーよ、web内に自主制作小説を投稿できるサイトがあるのさ。そこに送れば誰か暇な人が読んでくれるかもしれないだろ。」
「なんじゃ、無料か、世の中、タダより高いものはないぞ。読み始めて3分で気分が悪くなるかもしれんではないか。」
お前は、そんな物を俺に読ませたんかい。
「ただ原稿はデジタル化しなきゃなんないんで躊躇しているところだ。今時手書きだもんなー。」
「なんじゃ、そんなことか。ほれ、これが電子データじゃ。たった十数キロバイトじゃぞ。」
くろは俺に3.5インチフロッピーディスクを差し出す。
これはくろのボケネタなんだろうか。なんでやねん!って突っ込まなきゃだめかな。
「くろ、確かに俺のパソコンは最新じゃない。でもさすがにフロッピーの読み取り装置は付いてないよ。」
「なんじゃ、記録媒体の種類にケチを付けるとはお主も偉くなったのぉ。ふんっ、これならよかろう。」
あっ、やっぱりボケだったのね。くろは俺が真面目に返したものだから気を悪くしたらしく、USBメモリーを放ってきた。
俺はUSBメモリーをパソコンに接続し中身を確認した。
「うん、大丈夫だ、読めたよ。」
しかし、さすがデジタルデータである。原稿用紙80枚以上の原稿がたった十数キロバイトになってしまうのだから。
でも十数キロバイトといえど手で入力していたら1日仕事になってしまう。
デジタルデータがあるなら最初から出せ!と心の中で文句を言う俺。口には出さないよ、くろとのやり取りは慣れてるからね。
俺はぽっちさんの小説を投稿した。・・でも他人の小説を投稿して良かったんだろうか?著作権はくろにあるのか?




