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雑文ラノベ「異世界はもうこりごりだ」  作者: ぽっち先生/監修俺
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密猟者退治

北の森はさらにシダ類の葉が絡み合い地面部分は日暮れ時より暗かった。

しかも、あちこちで訳のわからん鳴き声が連呼し、隣にいるくろとの会話もままならないほどだ。

「くろ様!、これはちょっと予定外でした!一旦森の外に退避しましょう!」

これでもかという大声でくろに退却を進言する。カラオケでもここまで声を張り上げたことはないぜ。

「うむっ、これはちょっと凄いのぉ!出直すぞ!」

俺とくろは指パッチンで30kmほど離れた草原に逃げ出した。


草原に出た途端、静寂に包まれる。しかし、耳にはまだ先ほどの余韻が残っていた。おかげで会話が大声になる。

「くろ様!、あれでは歩いて探すのは無理です!ヘリを出してください!できれば装甲付のブラックホークがいいです!」

「ブラックホークはイヤじゃ!あれは米軍の装備じゃ!我は米軍は好かん!」

「ならハインドはどうです!あれはソビエト製ですよ!」

「共産圏もあまり好きではないんだが・・。」

ほざけ、お前、前にSA-2ガイドライン地対空ミサイルを山ほど出したじゃねぇか。


その時、ドスンという振動と共に巨大な影が俺たちを包み込んだ。

「うぬら、何者ぞ、よもや我の息子を誘拐せし野盗の仲間ではあるまいな。」

振り返り見上げると日中ドラゴンの成獣が俺たちを見下ろしていた。

口元はすでにブレス放射前の空気の揺らぎが起こっている。

「わっ、待って!違う!違います!俺たちは貴方の息子さんを探しに来た者です。これ、依頼書も持ってます。早まらないで~。」

母親ドラゴンが俺の手元の依頼書を確認する。すごいね、字が読めるんだ。

「そうか、園長が言っておった捜索隊とはうぬらであったか。」

ドラゴンの口元の揺らぎがようやく納まった。冷や汗ものである。

「本来なら我自ら救助に向かう所だが、我が踏み込むと森が壊れてしまうので難儀しておったところだ。森に罪はないからな。」

うおおお、このドラゴンも自然にやさしいぜ。「自然を大切に」とか口だけで行動を伴わない二足歩行生物とは大違いだ。

「我らにお任せください。必ずやご子息を密猟者の手からお救いいたします。」

何の根拠もないけれど今はこうでも言わないと丸焼きにされかねない。

「なんじゃお主、それだけかなのか?密猟者はどうするのじゃ?よもや見逃すのではあるまいな。」

母親ドラゴンの口がガバっと開き、口の中が真っ赤に染まる。こら、要らんことを言うんじゃないよ、くろ。

「勿論、密猟者もただでは済ましません!。然るべき機関に突き出します!。」

「ぬるいのぉ、歯には歯を、密猟には密猟じゃ。身包み引っぺがして逆ハンティングをして遊ぼうぞよ。」

可哀想な密猟者。くろがいる時に密猟なんかした自分を恨め。

「野盗どもに関してはうぬらに任せよう。今後、我の目につかぬ様にいたせ。」

「ははっ、仰せのままに。」

「探索にはこれを持って行け。1キロ以内なら我の息子の気に反応する。」

そういって、母親ドラゴンは自身の胸部のウロコを差し出した。


一時後、俺とくろは、くろが出した運転手付のハインドに乗って森の上空を飛んだ。

森自体は100km四方程度なので50回往復すれば必ず見つけ出せる計算になる。

位置さえ分かればハインドの30ミリで威嚇すれば密猟者など逃げ出すだろう。殺さないだけありがたく思えよ。

途中3回ほど給油の為に降りたが4回目で当りを引いた。ドラゴンのウロコが共振したのだ。

初めはヘリの振動かと思ったが進むにつれて大きくなる。

俺は運ちゃんに一番振動が強くなる地点を指差し旋回するようお願いした。

その時、今度はヘリのアラートが鳴り出す。

「ミサイル警報!」

運ちゃんは言うが早いか回避機動を取る。ぽんぽんとかわいらしい音を発して赤外線撹乱用フレアが放出された。

席を立っていた俺は旋回のGに絶えられずくろの席まで吹っ飛ぶ。

「反撃しろ!」

くろが命令する。

ミサイルは外れたらしい。

ヘリの攻撃手が赤外線装置でミサイルの発射地点を探し当てる。

「4時の方向、熱源感知多数!移動中の模様!」

「旋回そのまま、足を止めるぞ!」

攻撃手がボタンを押すとダガダガダンダンという機関砲の発射音と振動がヘリの中にこだました。

機関砲弾が着弾したあたりの木々が吹き飛ぶのが見える。

「うわ~っ、ちょ、ちょっとチビドラもいるんだからもう少し丁寧にお願いしますよ。」

俺が平和ボケしたお願いをした時、バゴンという音と共に突然ヘリに数箇所穴があいた。

アラートが鳴り出す。なんか煙も入ってきた。

「左から攻撃された。多分20ミリだ。探せ!」

「発砲!回避!」

またヘリが急機動をする。

あうっ、ぐお~、へっ、ヘリが横向いてる~。か、体が重いよ。

「ロケットでなぎ払え!」

くろが再度命令する。

「了解!」

ヘリは一旦、大きく旋回して距離をとってから敵がいると思われる地点目掛けてロケット弾を発射した。

先ほどの機関砲とは段違いの爆炎が立ち上る。

敵は沈黙したがアラートは鳴り止まない。

「くろ様、エンジンに被弾しました。もう幾らも持ちません。」

「よし、今なぎ払った地点に着陸しろ。」

「了解。」

ヘリはまだ濛々と煙を上げている場所目掛けて降下していく。

ヘリのプロペラ流が吹き飛んだ木々と灰を巻き上げる。

着陸と同時にくろは俺を蹴飛ばして機から飛び降りた。

「御武運を!」

「うむっ、大儀であった。」

くろが運ちゃんに返事を返すと同時にヘリは忽然と消えてしまった。


「先ほど機関砲で牽制した場所は向こうだ。ヤツらもヘりが降下したのは見ただろうから逃げるとしたらあっちだろう。」

くろが指差す。でも樹が邪魔して何も見えません。

「左から先回りして待ち伏せといこう。走るぞ!」

俺の返事も待たずにくろが走り出す。

待ってよ~、こんな所で置いて行かれたら泣いちゃうよ~。


30分ほど薄暗い森の中を全力疾走する。

いや、後半はほとんど歩くのと速度は変わりませんでした。気持ちの問題です。

「居たぞ。」

くろが立ち止まって俺に告げる。

確かに少し離れた所からピーピー鳴く声が聞こえる。

すまん、くろ。3分くれ。呼吸が戻らない。というかお前なんで息が乱れてないんだよ、子神さまだからか?ずるくね?

「だらしがないぞ。だが安心しろ10秒で終わらせてやる。」

くろはパチンと指を鳴らした。

出てきたのはくろの管轄エリアでも見た20ミリ対空機関砲である。

だがその光景はちょっと異様だった。なんと空中に浮いているのである。しかも銃座がない。砲身と機関部と弾装だけだった。

銃身がくろの目線と連動して森の奥を左右に動く。

ガサガサという葉を掻き分ける音が近づいてきた。

「ファイヤー!」

くろの命令に20ミリが火を噴いた。耳をつんざく射撃音がすぐそこで発せられる。

多分、銃弾の雨に降られているあたりでは「ぐわっ。」とか「うわわあ。」とかの叫び声が発せられているんだろうけど20ミリが煩くて聞こえません。

10秒後、あんなに見通しの悪かった森に1本の通路が出来ていた。

地面には30人ほどの元人型生物と思わしき残骸と、元はドラゴン運搬用の台車だったと思われるスクラップが転がっている。

でも一番驚いたのはスクラップの向こう側に転げていたチビドラが傷ひとつない体で立ち上がったことだ。

「ドラゴンってハンパねーな。」

はっきり言ってゲームや小説の中に出てくるドラゴンは偽者です。勇者といえど本物には絶対勝てません。


その時、森の木々がガサガサ揺れだす。

「新手か!」

くろが木が揺れている方を見る。連動して20ミリも旋回して照準を定めた。

手前の木が二手に別れその奥から大きな物体が現れた。

俺はこいつを知っている。とゆうか、ちょっと前に似たのに会っている。巨人族のチビ助だ。間違いない、そっくりだもん。

「我々は園長にチビドラ探索を依頼された捜索隊です。決して密猟者ではありません!」

俺は依頼書を掲げ先手を打つ。密猟者に間違われるのは懲り懲りだからね。

「あう?そう。チビ見つかった?」

あれ?意外と冷静だな。

その時、チビドラとチビ助の目が合う。

するとさっきまで密猟者に捕まってピーピー泣いていたのが嘘のように嬉々としてチビドラはチビ助を追いかけ始めた。

「キャカカカカッ。」

「うあ、よせ、くるな。うああーん。」

逃げ出すチビ助。

「おっ、追いかけっこなら我も負けんぞ!」

くろも俺の首根っこを掴みながら追いかけはじめる。

「くっ、首が・・、俺は猫じゃねぇぞ。くっ、くるしいー。」

2匹と俺たちはあっという間に北の森を抜け母親ドラゴンが待機している草原にでた。

2匹の追いかけっこだけならいつものことだが、その後からくろが追いかけたのがまずかった。

母親ドラゴンが俺たちを密猟者と勘違いして攻撃モードに入ってしまったのだ。

「お母さん、よく見てください。俺たちですよ、ちょっと前に別れたばかりでしょ?忘れちゃったんですか~。」

だが、興奮している母親ドラゴンに俺の言葉は届かない。

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