お早いお帰りですね、ご主人さま。
目が覚めるとそこは都市林の小道でも病院でもなく、どこまでも平らな平原だった。
俺はここを知っている。
これで二度目だからな。
俺は周りを見渡しくろを探した。
すると、なにを血迷ったかメイド姿のくろがスカートの端を摘んで俺に礼をしている。
澄ましているが、ギュッと口元をかみ締め、笑いを堪えるのに必死なのがありありだ。
「お早いお帰りですね、ご主人さま。」
「くろっ、てめぇ~。」
今度はアキバ系かよ。まあ、嫌いじゃないがそんなことでは許してやらんぞ。
「もと勇者はガラが悪いのぉ。」
口調がいつものくろに戻る。
「また、お前のしわざか!」
「そんな訳あるか。お主の日頃の行いが悪かったのだろう。
見ろ、こちらはまだお主の送別会の片付けすら終わっていないぞ。」
くろが俺の後ろをあごで指し示す。
振り返るとそこには前回俺の送別会でくろが出現させた88ミリ高射砲が鎮座していた。
いや88ミリは絶対今お前が出したんだろう。さっきは無かったぞ。
「だったら誰が俺を召還したんだ。」
「あぁ~、それは我じゃ。」
しれっと言いやがる。
「言ったな、認めたな、訂正、修正、記憶にございませんは認めんぞ!」
「だ・か・ら、お主が最初に質問した愚民軍第7師団長「盲目の国の片目」にパックンチョとされたことには我は関与しておらん。」
「なっ、なら一体誰が仕組んだんだ。」
「ん~、敢えて言うなら「盲目の国の片目」かのぉ。もしくはお主の所の「神」か?
こんな短期間に修学旅行中の子神を2柱も倒すのは偶然とは思えんしな。
やっ、流石は神じゃ。あつぱれである。」
なんかやんわりと俺の世界の神様を馬鹿にしているだろう。バチが当たるぞ、いや当たれ。
「神のご意思なのか・・。」
俺はくろに対してカマを掛ける。
「いや、あっさり信じるでない。つまらんではないか。」
あっさりゲロするくろ。
「くろっ、てめぇ~。」
「まぁ、我も本当のところは分からんが、あのままではお主が死んでしまうからな。
緊急処置としてお主を召還した。まだ保証期間中だしな。アフターサーカスじゃ。」
俺は電化製品か!後、もっと日本語勉強しなさい。いやアフターサービスは外国語か。
「本当にお前じゃないんだな。」
「神と精霊と憲法に誓い断言する。我はむ・か・ん・け・い。」
言い方がムカつく。
「偶然なのか・・。そんなことってあるのかよ。これでも俺、気を付けていたんだぜ?」
「まぁ、こんな事は滅多にないが絶対ないとは言い切れんからな。
お主の世界の格言にもあるじゃろ。宝くじは買わねば当たらん。買っても当たらん。」
あっ、なんかやっぱり怪しいかも。
「大体において今回の我はお主の命の恩人だぞ。もう少し敬え。」
「そうゆうならちびへび野郎を踏み潰す前に警告してくれてもいいじゃないか。
すぐ召還したってことは見ていたんだろう?」
「いや見てはおらんぞ。ストーカーやスッパイでもあるまいし。
お前が我を呼んだから見てみただけじゃ。
そしたらお主が口から泡を吹いてぶっ倒れておったから緊急事項第999項に基づいて国会の承認無しで緊急召還したのじゃ。」
くろ、お前ニュースの政治フレーズを間違って使っているよ。
「国会の承認なし」は政治家の決めゼリフじゃないっての。
「やぁー、我も緊急召還は初めてだったからのぉ。カエルやナメクジに誤変換しなくて良かった。」
えぇ~、召還ってそんなリスクがあったのぉ。あっぶねぇ。
「とにかく今回は褒美も宝玉もなしだ。とっとと元の世界に返してくれ。」
俺はお前の世界はこりごりなんだよ。
大体俺は元の世界に帰ってからまだ自分のアパートにさえ戻ってないんだぞ。
「良いのか?今回は救急車では間に合わんぞ。戻ってすぐに血清を打たんと一貫の終わりじゃぞ?
そして我はこちらの世界での血清の在り処を知っておるがのぉ。ぐふふふっ。」
くろは勝ち誇ったように俺の弱みをぐりぐりと弄ってくる。
「ううっ、くろ様、お情けを・・。」
俺はあっさり屈服した。
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