帰ってきたぜ
こうして俺は無事元の世界に戻ってこれた。
戻った途端に頭部に激痛が走ったが携帯で救急車を呼び保険証を握り締めて玄関で待つこと10分。
時々意識が飛びそうになるが、ここで沈んだらまたあの平原で目が覚めそうなので傷口をわざと弄ってがんばった。
救急車のサイレンがアパートの前で止まる。
いつもならこんな近くでサイレンを聞いたらうるさいと罵倒するのに今日は感謝の気持ちでいっぱいだ。
玄関で放気ている俺に救急隊員の方が駆け寄って名前を確認してくる。
俺は返事をし立とうとした所で気を失った。
目覚めるとそこは病院の部屋だった。
頭の傷は5針縫っただけで思いのほか軽症だった。
なんとかスキャンとかいう装置で頭の中を確認しても内部出血や骨折はなかったそうだ。
どちらかというと傷口を縫う為に後頭部の髪を刈上げにされたショックの方がデカイかもしれない。
だから運び込まれてからたった2日で退院となった。
バスを降りてアパートに向かうと途中にこじゃれた都市内緑地維持林があった。
こちらの方は駅とは正反対の方角なのでまだ散策していなかった。
林には小道がありアパートの方角へ続いていた。
俺は散策も兼ねてその小道を歩いてみることにする。もしかしたら近道かもしれないし。
その時俺の前を南米産の猛毒蜘蛛「ワンパンチ(いっぱつころりん)」がよたよたと横切ろうとしていた。
毒蜘蛛とはいえとてもきれいな柄のためマニアの密輸が後を絶たないとニュースで聞いたことがある。
一般市民の義務としては保健所への通報もしくは駆除が正しいのだろうが俺は違う。
あの日以来、俺は害虫だからといって無闇に殺すのはやめようと心に誓った。
だってあんな目にあうのはもうこりごりだしぃ。
俺は「ワンパンチ」から目を逸らしつつゆっくりとその場を後にする。
俺は成長したんだ。危機回避性能は当社比300バーセントアップだぜ。
とその時、ぐにゃっと何かを踏み潰した感覚。
俺は恐る恐る足元を見る。
そこには内臓をぶちまけ瀕死のアフリカ産の猛毒蛇「ミニマムデビル(ちんまいあくま)」がいた。
ヘビは俺の足の下でもがきつつつぶやく。
「ぐふっ、我は愚民軍第7師団長「盲目の国の片目」。よもやこのような所で討ち取られようとは・・不覚なり。」
「しかし我とて愚民軍第7師団長を勤める者なり。最後に一太刀、一矢報いざるや。」
世にも不思議なしゃべる毒蛇は最後の力を振り絞るかのように俺の足首にパクリと噛み付いた。
その時俺の頭にはマフィーの法則やら世間の教訓やらがぐるぐる巡っていた。
一度あることは二度ある。
あぁ、「くろ様」の満面の笑みが目に浮かぶ。
-完-
これにて1順目終了です。
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