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雑文ラノベ「異世界はもうこりごりだ」  作者: ぽっち先生/監修俺
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まあ、あのシチュエーションならこうなるわな

目が覚めるとそこは病院でも俺の部屋でもなく、どこまでも平らな平原だった。

でも地方都市育ちの俺には違和感はない。

実家の田んぼで昼寝から目覚めた時と差ほど変わらない風景だ。

敢えて変わった所を指摘しろと言われれば、目の前に旧大戦時の欧州軍の軍服を着た女の子が立っていることか。

女の子は左手に持った棒の様な物を右手の平にぺしぺしと振り当てている。

あっ、あれ知ってる。確か指揮官棒だ。高級官僚級の人しか持てないんじゃなかったっけ?

少女の髪は白い。そして軍服を着ているせいか某ハーレム系アーマー格闘アニメのキャラに似ている気がする。

まあ、目の前の彼女は眼帯はしていないが。

そして彼女の腰にはデカイ拳銃が吊るされている。

その特徴的な形は俺も良く知っている。

「ルガーP-08」旧ドイツ軍の軍用拳銃だ。

知名度は泥棒アニメの影響で別の拳銃の方が上だが俺はこっちの方がかっこいいと思うけどね。

でも彼女の手にはちょっと大きすぎないかな。飾り用の模造品なんだろうか。


いくら辺りを見渡しても人は軍服少女しかいないので俺は彼女に声をかけた。

「あのぉ、ちょっと聞きたいんだけど君は誰だい。俺は何でここに居るんだ?」

いや、なんか聞く内容がちょっと違う気もするが頭を強打したからな。

軍服少女は俺の問いかけに答えず見当はずれなことを言った。


「貴様は我が追っていた虫魔軍第7師団長「極黒のゴキ」をみごと仕留めた。」

「よって我が皇帝陛下より褒美を下賜(かし)されることとなった。喜べ。」


虫魔軍?皇帝陛下?

ああ、これは夢だな。頭を強打したからなぁ。でも「極黒のゴキ」って俺、名前付けるセンスがないな。

これじゃ本物の中二病患者に鼻で笑われてしまう。

でもすごくリアルだ。手の平のしわの細部まで確認できる。頬を叩けばちゃんと痛いし。

しかも総天然色あーんど高画質。草の葉一本たりとて手を抜いていない。

さすが俺。未来の名クリエータ間違いなし。


「あー、これは夢ではないぞ。」

自分の頬をつねっている俺を見て軍服少女が忠告する。

あっ、やっぱり夢だ。声に出していない俺の考えに応えるなんで芸当は夢か小説だけだ。

いやもうひとつあった。テレパシーというやつだ。となるとこの子はエスパー?


「極黒のゴキを一撃で倒したくらいだから経験者かと思ったが違うようだな。」

経験者?非童貞ってこと?確かに俺はチューすらしたことが無いけど、最近の18歳男子だからって全員が全員、脱童貞とは限らないんだぞー。全国の未経験男子に謝れ!


「すまないが君の言っている言葉の意味がわかんないよ。」

俺はムッとしながら軍服少女につっかかる。

「貴様は虫魔軍第7師団長「極黒のゴキ」を仕留めた功績により皇帝陛下より褒美を下賜されることとなったのだ。だから我が貴様をここに呼び出した。」

「お前が俺をここに連れてきたのか?拉致は犯罪だぞ。今すぐ開放しろ!」

少女相手に語気を荒げて人質解放要求をするのもなんだが、ちょっとビビッているのよ。

相手、軍服だし、鉄砲持ってるし・・。

「うーん、今ひとつ状況が読み込めていないようだのぉ。」

いや、状況もなにもお前全然説明してくれてないじゃん。

「褒美だかなんだか知らんが、お前のお遊びに付き合って・・。」

俺が文句を言い終わらない内に軍服少女は指をパチンと鳴らした。

途端に背景が草原から俺のアパートに戻る。

いや二方の壁と床だけが再現されただけで他は草原のままだった。

その再現された部屋の床には俺が頭を抱えて転がっている。

畳にはちょっと危ないくらいの血溜まりが出来ていた。

この情景を第三者が見たりしたら「この部屋は出るんだぜ。」なんていう噂が広がりかねんな。

ああ、大家さんごめんなさい。引っ越す時は畳を交換しときます。

「なっ、な、なんだぁー。」

俺は状況が理解できず変な声を上げてしまった。

「お前、なんなんだ・・。」

俺の質問には答えず軍服少女がまた指をパチンと鳴らすと俺の部屋は消え元の草原に戻った。


「皇帝陛下のお言葉は、ほぼ絶対だ。断ることは相成らん。」

軍服少女は手にしていた指揮官棒をパチリとさせて言い切る。

あっ、なんか眼がヤバイ。

軍服というのは少女が着ていても威圧感がある。

しかも少女の腰にはデカイ拳銃が吊るされている。本物だったらちょーこわい。

軍服少女の気迫にビビッて俺は自然と丁寧語(保身)になっていた。


「あのぉ、ゴキは仕留めそこなったはずですが・・」

「最初に仕留めたゴキが第7師団長だ。その後のはただの住宅備品昆虫群だな。」

あっ、そうなの?俺、虫魔軍第7師団長「極黒のゴキ」じゃなくて普通のゴキに負けたんですか。とほほ・・。

「あの、俺・・。死んじゃったんですか?」

「いや、死んでおらんが。」

「でも、ここ、俺の部屋じゃないですよね?」

「うむ。皇帝陛下のお言葉を貴様に伝える為、魂だけこちらに連れ出した。

お前の体は今でもあの部屋に転がっておる。」

ぐわ~ん、そんなことできるんかい!

「い、生きているんですよね?」

「生きておる。」

「でも、頭にケガをしているんですよね?」

「しておるな。」

「結構血とか出ていたんですけど大丈夫なんでしょうか?」

「だめかもしれん。」

そんな、あっさりと言わないでくれ。

「なっ、なんとかなりませんか?」

「貴様次第だな。」

「俺次第と、言いますと。」

「戻ったら緊急通報に電話して住所と名前を告げろ。そして保険証と幾ばくかの金を握り締め救急車の到着を玄関先で待てば良い。」

うーん、至極全うなことを言われてしまった。

「そういうことでしたら早急に戻りたいんですが。」

救急搬送が必要なくらいのケガをした場合、1分1秒が大切なことくらい誰でも知っている。

「ああ、それは大丈夫だ。連れて来た時と同じ時間に帰れるから。こちらで何年過ごそうが戻った途端、浦島太郎になる心配はいらん。」

あ、そうなの?なら大丈夫か。いや大丈夫とかの話じゃないだろう。


それでも少しずつ状況が掴めてきた。

つまりここは俺にとっては異世界だ。あの世じゃなくて良かったよ。

そして俺の目の前に居る軍服少女が召還能力者。

召還理由は、彼女が追っていたなんとかのゴキとかいうゴキを俺が殺したから。

本来殺しは罰せられるものだか殺した相手がお尋ね者なら褒められ賞金まで貰えちゃう。

その賞金の授与式に魂だけ呼ばれたということらしい。

それならばと、俺は下手にでて、とっとと褒美を貰って帰ることとした。

こんな時は慌てず、騒がず、冷静にだ。

よし!まずはもちっと情報が必要だな。

それにしてもなんで異世界への召還能力者ってのはどいつもこいつも態度が偉そうなんだ?

でも俺は賢いから口にも態度にも出さない。


「あの、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「我は旧大陸軍第7師団長「紅玉のくろ」だ。」

また第7師団長かよ。しかも真っ赤な黒ってどんな色だよ。

「紅玉のくろ様。」

「貴様には特別にくろと呼ぶことを許す。」

「くろ。」

「敬称は付けろ。」

「くろ様。」

「うむ、よろしい。」


「ところで、ゴキは何をやらかしたんですか?」

「職場放棄だ。」

「職場って・・。軍を脱走したんですか!そりゃ重罪だ。」

「いや、やつは実写エリアのホラー部門に居たんだがドブネズミと比べて昆虫系の扱いが低すぎると抗議して下水管の管理をボインコットしたのだ。」

なんだそりゃ。いや職場内での差別は自由平等を掲げる現在社会においても深刻な問題だけど、でもねぇ。

「あの、こういっては何ですが、その程度のことで殺してしまってよかったんでしょうか?

いえ、私はあくまで現世での彼らと人類の生存競争のルールに則って正々堂々真っ向から勝負しただけですので・・。

殺意はありましたが、躊躇もしませんでした。すいません、勝手にきれい事を言っちゃいました・・。」

「気にするな。どうせ3日もすれば復活する。」

おっと、さすがゴキ。人類は敗北するな。


「ご褒美ってどんなものなんでしょうねぇ。」

職場放棄のゴキを倒したくらいではたいした物は期待できないが、贈り主は皇帝とか言ってるからもしかしたら金の延べ棒とか?

いやせいぜい俺には無価値な勲章くらいだろうな。あと信長の家臣じゃないから茶碗なんか貰っても嬉しくないよ、俺は。

「褒美に関しては昨今の贈答環境の変化に対応し、自分の好きなものを選べるようになっている。」

あ~、結婚式の引き出物方式か。だったら55ページの神戸豚10人前ってのをお願いします。お砂糖は間に合ってます。

「カタログとかあるんですか?」

「いや口頭伝達方式じゃ。我が説明する。」

「私、ご褒美なんで生まれて始めてかもしれません。しかも皇帝陛下様からなんて。

金の斧とか黄金水とかあるんですかねぇ。」

「それは貰ってからのお楽しみだ。」

俺は少しフランクにカマを掛けたがあっさりかわされた。

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