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雑文ラノベ「異世界はもうこりごりだ」  作者: ぽっち先生/監修俺
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宝玉分配戦始まる 首都環状戦

でも首都環状戦って何やるんだ?

お教えしましょう。公道自動車レースです。「サーキットの大きな紙」です。「湾岸みっともないと」です。

お台場をスタートして右周りに首都を1週する社会秩序完全無視の非公認公道レース。当然パトカーも出走します。

「くろ様、私まだ車の免許を取っていません。オートマすら運転できません。」

「そうか、別にお主だけ足で走ってもよいぞよ。いい運動になろう。」

「それで勝てますかね?」

「アホ、無理に決まっておる。しょうがないのぉ、車をちと改造してやるから待っておれ。」

そういうとくろはテレビゲームの「グランツーリズム5」を出現させぽこぽこと設定を始めた。

「あっ、なんだ、ゲーム内で走るんですか。俺、実際に走らせるのかと思ってビビッてました。」

だがくろは俺にかまわず指をパチンと鳴らした。

「いでよ、出産GT-アーレ改!痛車仕様!」

くろが命令するといきなり俺の前にあの有名な出産GT-アーレが出現した。

しかもボンネットには初代プリティキュアのお二人が変身後のコスチュームでポーズを取っていらした。

「おおっ、これが痛車ですか。でもなんで初代なんです?」

「初代が我のお気に入りだからじゃ。あと5人も描くのは面倒じゃ。」

俺は車の中を確認する。まさかフィギュアは置いてないだろうな?

流石に中は普通だった。すごい太い鉄パイプが運転席を囲っていたがレース仕様とはこうゆう物なのだろう。

でも問題もあった。

「くろ様、この車、ハンドルがありません。」

「運転できないお主にハンドルは不要であろう、車の操縦はこれじゃ。」

そう言ってくろは家庭用ゲーム機のコントローラーを俺に手渡した。

「ああ、成るほど。フロントガラスをテレビ画面に見立ててゲーム感覚で操作するんですね。ってそんなこと出来るかい!」

「お主本当に我がままだのぉ、しょうがない、これを食べろ。」

「なんですこれ?」

「23世紀の未来から来たネコ型ロボットが置いていった瞬間強制学習機能内蔵「しろパン」君じゃ。

試験前に遊び呆けていた主人公に泣きつかれて渋々出した一品じゃ。」

「くろ様、そうゆう危ないネタは止めましょうよ。唯でさえ今回はパクリまくりらしいんですから。」

「うるさい、そもそもお主がぐだぐだ言うのが悪いのじゃ、はよ食べろ。」

くろは嫌がる俺に無理やり「しろパン」君を食べさせる。

一拍おいて俺の頭の中に車の運転方法やノウハウが濁流のごとく流れ込んで・・きません。

その代わり○○○や○○○などのレース漫画やカーアクション映画が脳内再生されました。

脳内時間で240時間くらい見ただろうか、俺はくろに引っぱたかれて現実に引き戻される。

現実時間では3分も経っていなかった。しかし、俺は変わった。3分前の俺はもういない。

俺は伝説の公道レーサー「紙吹雪ゆうやーん」だ!


そうこうしている内にスタートラインに車が並びだす。

俺も慌てて指定された位置に愛機ロータス・ヨーロッじゃなかった、GT-アーレ痛車仕様を移動させた。

するとレースの実行委員が俺の所にやってきた。

「なんです?」

「あなた、宝玉をお持ちですよね?宝玉を身に着けてのレース参加はドーピングとみなされます。

貴重品庫に入れるか隣の方に渡すかして下さい。」

おっと、それは知らなかった。俺はポケットから宝玉をくろに渡した。

「そうゆうことらしいんで持っていてください。」

「しょうがないのぉ、ほれここに入れるが良い。」

くろは皮の袋に宝玉を入れ首から下げた。


スピーカーから搭乗者以外の退去が告げられる。俺はアクセルを一吹かししてスタートに備えた。

シグナル代わりの信号機が赤から黄色になり青に変わる。

俺はアクセルをめいっぱい踏み込んだ。矢のように加速するGT-アーレ・・、と思ったらなんかいまいち。

忽ち後続車が抜いて行く。

「くろ様、なんだか馬力が弱い気がするんですけど。」

俺は隣に乗っているくろに尋ねる。

「あっ、すまん。このクルマは一般公道では100馬力に出力を自主規制するのじゃった。」

「え~、100馬力ってウチの親父のセダンより低いよ~。」

「大丈夫じゃ、コンソールのR-18ボタンを押せば解除される。それでお主も大人の世界に仲間入りじゃ。ぬふふふふっ。」

いや、絶対お前ワザとだろ。その冗談を言いたくて隠していたな。

文句を口に出して言いたいが、言うとくろが待ってましたとばかりに切り替えしてきて漫才大会になるので俺は無視してR-18ボタンを押した。

すると忽ちエンジンが息を吹き返した。V6ツインターボ1万馬力が唸りをあげる。

かなりの台数に抜かれたがこれなら大丈夫だ。俺は追撃を開始した。


俺の前にはど太い排気音を撒き散らし加速のたびにホイールスピンを繰り返す派手なクルマが進路を塞いでいる。

デ・タ・マゾ パンチーラ。アメリカ製の大排気量エンジンを積んだ伊・米ハイブリットスポーツカーだ。

「まぁ、公道でなら腕に関係なくマシーンの性能で大抵は勝てるからな。」

だがクルマの性能に対して明らかにドライバーの腕が劣っている。あれでは宝の持ち腐れだ。

「だが既に時代は4駆なんだよ。ノンターボは道をあけな!」

俺は敢えて直線での加速勝負を挑んだ。4つのタイヤが最大限のグリップでエンジンの出力を路面に伝える。

忽ちGT-アーレはパンチーラに並んだ。相手のドライバーもアクセルを踏むがその大馬力に後輪のタイヤが悲鳴をあげる。

派手なタイヤスモークをたなびかせて加速するパンチーラ。しかし、タイヤは出力の半分さえ推進力に変換できていない。

俺は小さくなるハンチーラの姿をバックミラーに確認すると次の獲物を求めてコーナーへ進入した。


「おぉ~、やるのぉ、因みに今速度監視システムの前を通過したぞ。」

「大丈夫、俺は免許を持ってないから減点されない。」

自分で言っていてなんだがむちゃくちゃだ。


何台かのクルマを追い抜きビル街を信号無視で疾走していると突然、黒いゴキブリみたいなクルマが交差点から乱入してきた。

あっという間にGT-アーレの後ろにつきパッシングを始める。

クルマの正体はランボロギュウニュ カウンタークLP-500。見た目、性能、ステータス、どれをとっても世界一といわれている超スーパーカーだ。

「ばかな、なんで公道レースなんかにあんな化け物が出てくるんだ?」

俺は悪態をつく。GT-アーレは性能ではカウンタークを凌駕しているが見た目と知名度、ましてやステータスでは未だに勝てない。

「ふふふっ、俺様は雑魚は相手にしない主義なんだ。」

なぜかカウンタークのドライバーの声が聞こえる。

「ふんっ、GT-アーレか、レースでたまたまポロシャツに勝ったからっていい気になっていると怪我をするぜ。」

「オラオラオラオラぁっ、国内レースなんかで連勝したぐらいで天狗になるなよ。こちとらレース優勝経験はゼロだ!」

それって、自慢になるのか?

その後、GT-アーレとカウンタークは数キロに及び抜きつ抜かれずの展開を繰り返したが首都高に再度上がったところで決着がついた。

いきなり減速するカウンターク。

「くそっ、ガス欠だ!」

なぜかカウンタークのドライバーの声が聞こえる。

カウンタークのガソリンタンクは確か100リットルのはず。幾ら燃費の悪いスーパーカーでも数キロで使いきれる量ではない。

となると答えはひとつ。

「満タンに出来なかったんだな。」

一時期よりは落ち着いたとはいえ未だにカゾリンは高値を維持している。

空っぽの状態から満タンにしたら2万円出してもお釣りが少ししか返ってこない。

カウンターク。恐ろしい相手であった。しかし、貧乏人には維持することすらできない。

俺は小さくなるカウンタークの姿をバックミラーに確認しつつ次の獲物を求めてコーナーへ進入した。


「かわいそうにのぉ、ハイオクはレギュラーより10円高いからのぉ。」

くろ、お前本当に現世の世情に詳しいな。


何台かのクルマを追い抜きお台場のループをくるくる回っていると一台の白いクルマが雑魚どもを蹴散らして近づいてきた。

あっという間にGT-アーレの左に並ぶ。

「くそっ、なんだ、このクルマは?」

「おや、まさか日本人のくせにミーのクルマを知らないなんてことはないよね。」

なぜか相手のドライバーの声が聞こえる。あと、知ってますとも、これから説明しますから。

トヨス2000-GT。日本が世界に誇った初の国産スーパーカー。でも高すぎて誰も買えなかったという曰く付のクルマだ。

「ふふふっ、ユーは日本人なのにどうして外国のクルマばかり乗りたがるんだい?日本にもいいクルマは沢山あるだろうに。」

いや、俺のGT-アーレは日本製です。あなたのとはメーカーが違いますが。

「ミーはそんなクルマしりませーん。地獄に行きなさい!」

ヤツはいきなり2000-GTをドリフトさせ俺の進路を塞いた。路面の凹凸を拾いクルマが小刻みに震える。

「よせ、七宝焼きのエンブレムが剥がれたらどうするんだ。」

俺の忠告も空しく振動に絶えられなかったエンブレムが中を舞う。

いきなり減速する2000-GT。

「くそっ、あれはもう手に入らないんだミー!」

なぜか2000-GTのドライバーの声が聞こえる。

だったらダミーかレプリカに変えておけよ。

2000-GT。珍しい相手であった。あんまり珍しすぎて貧乏人には維持することすらできない。

俺は小さくなる2000-GTの姿をバックミラーに確認しつつ次の獲物を求めてコーナーへ進入した。


「さすがはガイジンである。本家の日本人が忘れた和の心を大事にしておる。関心、関心じゃ。」

いや、あの人、ハーフ設定じゃなかったっけ?


次の獲物はヤンキー仕様のトヨス ソララだ。昔は高級車として幅を利かせたソララも生産中止になってから久しい。

しかも、前を走っているのは初代である。不思議だ。俺はスピードメーターを見ながらいぶしがる。

現在のスピードは300キロを越えている。あんな煙突マフラー、出っ歯スポイラーの車が出せる速度ではないハズだ。

しかも、助手席の男は窓から乗り出して箱乗りしてるし。

それを見てくろが真似をする。ほんと真似するのが好きな子神だ。

まぁ、喜んでるからいいか。どうせ落ちても死なないし。

と、思ったらソララがコーナーを曲がり切れずにスピンした。

助手席の男は振り払われてアスファルトの上を大根おろしのように身を削って滑ってゆく。

哀れ444メートルで削る身が無くなった。

ソララはそのまま側壁を突き破り東京湾へジャンプ。鳥人間コンテストなら努力賞くらいは貰えたかもしれない。

俺は散らばっている破片を巧みにかわしながらなんとかその場を切り抜ける。

ふと横を見るとくろがいない。落としたか?バックミラーで後ろを確認するとリヤウイングを掴んだくろが大喜びで笑っていた。

「よいぞ、よいぞ!ジェットコースターより楽しいぞ!」

俺は呆れたが良い子が真似すると困るので車を停めてくろを中に押し込んだ。

「小さい子が真似するから止めてください。」

「何をゆう、人生何事も模倣から入るものじゃ。政治家も言っておる。外国がやっているんだから我が国もやるのが当然とな。」

だめだ、子神と政治家の常識にはついていけない。


その後も写真でしか見たことのないスーパーカーと激闘を繰り返し、いつしか俺は2位まで浮上していた。

そしてトップのクルマのテールランプを射程におさめた。その独特な後姿に俺は驚きを隠せない。

今まで戦ってきた相手は殆ど外国車だった。中には例外もいたが公道において走りの頂点を目指すのは外国車、特に欧州車である。

だからトップを走っているヤツは当然、欧州車でまだ登場していないドイツ車だと思っていた。

英国のジャガーンは文中には出ていないけどちゃんと抜いてきた。

だが今俺の前を走るクルマは日本車だった。

ミツバチ ランランサーⅤエボリューションモデル。海外のラリーでツバルのインプやフォークと優勝争いをしているやつだ。

「そうゆうことか。」

俺はヤツの走りを見て納得する。

ラリーというとパリダカなどの未舗装路と思われがちだが今は山岳の曲がりくねった舗装路区間の方が多い。

そして首都高はビルの合間を縫って造られているため、本当に高速道路なのかといぶかるほどくねくねコーナーが続くのだ。

ここでは大きなエンジンで大馬力にもの言わせて走る欧州系のスーパーカーより、小型軽量なハイパフォーマンスカーの方が合っているのだろう。

俺のGT-アーレもヤツのランランサーⅤも駆動方式は4輪駆動で同じだ。ターボを装備しているのも同じ。

排気量は俺の方が大きいが車重も重い。唯一制動力だけは向こうが有利だ。

同じ速度から減速した場合、軽い方が重い方より早く減速できる。これは物理法則だ。覆せない。

「ふっ、まったく子供ってのは覚えなくていいことから覚えやがる。」

なぜかランランサーⅤのドライバーの声が聞こえる。

「俺は不安なんだよ、本来真っ先に覚えなきゃならないつまらない事を無視して、走ることだけに夢中になっていくお前たちが。」

あれ、いきなり独白ですか?俺、置いてきぼりですか?

「破局は突然やってくる。お前の周りにいる人たち全てを巻き込んで、大切に育ててきたものを一瞬で壊してしまう。」

すいません、「湾岸みっともないと」読んだのかなり昔なんでこのあとどうなったか忘れてます。

「俺はもう、そんな状況に疲れたんだ。」

あっ、もう最終コーナーまで来ちゃいました。すいません、ここからはオリジナルでお願いします。


最終コーナーを全力で2台が駆け抜ける。

直線の加速勝負なら1万馬力のGT-アーレに負けはない。コーナーを並んで抜け直線にはいる。

僅かにGT-アーレが先だ。

「勝った!」

俺は思わず叫んだ。アクセルを床まで踏み切る。体が後ろに取り残されるほどの加速、フロントの加重が僅かに抜け前輪の推進力が下がる。

しかしGT-アーレのコンピュータはたちどころにエンジンの出力を後輪に移す。莫大な出力を提供された後輪は一瞬だけスピンしたが次の瞬間にはグリップを取り戻してGT-アーレを押し出していた。

「勝った!」

再度、俺は叫ぶ。しかし、その時異変が生じた。

隣を併走するランランサーⅤがロボットアニメのように変形を始めたのだ。

見る見るうちに姿を変えるランランサーⅤ。俺はこいつを知っている。

ミツバチ MRJ700。日本が戦後挫折した航空機製造業界に再挑戦するために創られた希望の銀翼。

その二基のジェットエンジンを全開にして元ランランサーⅤ-現MRJ700は勝利の青空に飛び立っていった。

負けて悔いなし。

俺は既に点となったMRJ700を見送りながら呟く。

俺の戦いは終わったが、奴はこれから世界中のライバルと小型中距離航路の争奪戦に突入してゆく。

負けた俺が言うのもなんだが、がんばれよ。日本のユーザーは結局値段だからな。


レース終了後、優勝者不在で表彰式が行われた。

が、そこで、優勝者のドーピング問題が指摘され金メダルの剥奪が決定する。

繰り下がりで2位の俺に宝玉が手渡された。


結局俺は宝玉を2個集めることに成功した。あと一個はくろに借りて帰ろう。

仮玉の交渉をしようとくろを探す。

くろはGT-アーレのボンネットをお立ち台代わりにして観客たちにレース中の出来事を当社比300%増で聞かせていた。

よく見るとくろが首に提げていた宝玉を入れた袋がない。

「くろ、宝玉はどうした。」

「ふぬん?あれ、ないぞよ。落としたか?」

落としただとー!居たよ、本当に宝玉をおっこどす子神がここに居たよ!

「やっと集めたのに・・。」

俺はこの世界のお約束に打ちのめされた。

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