宝玉分配戦始まる プロローグ
そして迎えた宝玉分配戦初日。俺とくろは指パッチンで競技場に移動した。
競技場にはすでに多数の参加者が来ていた。俺たちは時間ギリギリであった。
それというのも、管轄エリアを離れる時にくろがあれこれ準備を始めたからだ。
まず、2連装対空機関銃を森の中に並べ、その後ろに88mmを置いた。
丘の上には対空レーダーまで配置し、万全の備えをする。
圧巻だったのはSA-2ガイドライン地対空ミサイルで、まるで剣山と見まがうくらいぼこぼこ出しやがった。
でもくろ、ガイドラインって共産圏の兵器だよ、時代も大戦後だよ、なんか設定ゆるくね?
そんな俺の突っ込みも聞こえないくろは、これで最後とエリア境界線に対人地雷をばら撒きやがった。
最後に管轄エリア防衛連隊を召集し激を飛ばす。
「我はしばらくこの地を離れることとなった。
我の不在をつき、我らが聖地を狙う不届き者は多いが我にかほどの不安はない。
なぜか!我にはそなたたちがおる!
極王の契りを交わし幾多の激戦を共に戦った戦友が守りしこの地を如何なる者が侵攻できようか!
否!できるわけがない!
しかし、己が力を過信し愚かにも我が領土に土足で踏み入らんとする不届き者あらば我が剣、我が槍たる諸君の精鋭たる刃でもってこれを退けよ!我はそなたたちと共に!!」
「我らはくろ様と共に!!」
「くろ様、バンザーイ!」
「「紅玉のくろ」に栄光あれ!」
「我ら、常にくろ様と共に在り!」
「くろ様、バンザーイ!」
「くろ様、バンザーイ!!」
くろを称える連隊の喝采に片手を挙げ応えるくろ。
20分程そんなことを続けて満足したのか、くろは解散を宣言してやっと終了した。
くろちゃん!、こうゆうことはちゃんと前日までに済ませておきなさいって、お母さん、いつも言っているでしょ!
子供に小言を言う母親の気持ちが分かってしまった・・。
まずは頭脳戦である。事前に調べた限りでは頭脳戦といってもペーパーテストは1回もなかった。
殆どがクイズ戦だ。中には漫才戦なんてのもあったが漫才って頭使うのか?
いやそうゆう意味じゃなくてどちらかといえば芸術戦に入るんじゃないかなぁって思っただけ。
なのに今回は初めての5教科学問習得状況確認戦だった。
ちょっと、俺の12時間をどうしてくれるんだ。クイズ番組「ターイムびっくり」にも出れそうなくらい勉強したのに。
「おー、これは以外じゃったのぉ。だが他の参加者も頭を抱えているから条件は同じじゃ。というかお主の方が少し優位じゃろ、のぉ、元受験者。」
くろが嫌味な笑いでからかってくる。
ぬごぉ~、俺は合格発表の日に俺の受験番号を見つけた瞬間に全てのデータを脳内ハードディスクのごみ箱へ捨ててしまったんだよ。
「だ、大丈夫だ。あれからまだそれ程過ぎていない。元に戻すコマンドが使えるはずだ。信じるんだ、あの苦しかった8ケ月間を!」
「まあ、まだ配分戦は始まったばかりじゃ。この受験を失敗しても滑り止めはあと4つもある。諦めて落書きでもしておれ。」
「くろ様、そういう無神経なことを言ってはいけません。受験は常に真剣勝負なんですから。現世では受験するだけでもお金が掛かるんですからね。」
「すこいのぉ、金儲けもそこまでいったか。学校経営はウハウハじゃのぉ。我も国から国有地を譲り受けて始めるかのぉ。」
「あっ、それこの前のニュースでやっていたやつですね。さすがくろ様、情報が早い。あっ、もうすぐ新作アニメが始まる時間ですよ。」
「なに?それは見落としていたぞよ、なんチャンじゃ。やっぱり12チャンか?テレビはどこじゃ、国会中継は国営放送の専門利権じゃ~。」
俺は偽情報でくろを追い払った。そして指定された机につく。ひとつ気になるのは試験会場が屋外なんだよな。なんで?
外国の国家公務員採用試験はカンニング防止のために広場で机を離してやるなんて聞いたことがあるけどそれを真似てるのかなぁ。
試験監督官がハンドマイクを口元にあて説明を始める。そうだね、そうでもしないと後ろまで声が届かないよね。
試験開始時間になった。音花火がぽんぽんと鳴り響く。まるで運動会みたいだ。
えっ、わからない?運動会の時に音花火上がるよね?お祭りとかでも上がるでしょ?
え、音花火って俺の学校や地域だけのローカルアクションなの?
それは置いといて試験開始である。俺は試験用紙をめくった。




