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雑文ラノベ「異世界はもうこりごりだ」  作者: ぽっち先生/監修俺
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世界征服開始

「よし、これでいこう!」

とうとう俺の世界征服カデゴリーが決定した。


世界一認定委員会からあんなにダメ出しを食らって、俺程度では世界を取るのは無理かと諦めかけていたのだが要は俺が出来ることでなく誰もしないことを選べばよかったのだ。

俺が選んだ世界征服カデコリーとは「登山」である。


登山かよ!と合いの手を入れてくださったみなさん。

はい、的確な突っ込みありがとうございます。ですがこれで皆さんは蟻地獄にはまりました。

本来くだらないとスルーすべきことに首を突っ込むとろくな事がないのは世の理、皆さんも散々経験済みかと思います。

よってこれから皆さんはくだらない、本当にくだらない俺の世界一への挑戦に付き合わなくてはなりません。

でも先着50名さまに限りキャンセルをお受けします。

お電話番号は○○-○○○。混雑が予想されますのでお急ぎください。

幸運にも電話が繋がった方は案内のガイダンスに従って銀行口座番号と暗証番号をプッシュしてください。

さあ、受付はすでに始まっています。先着50名さまのみの特典です。お急ぎください。


おふざけは置いといて、登山を選んだのは本当だ。勿論チョモランマやマッキンレーなどの有名どころを登る気はない。

いや、俺に登れるはずもない。しかも誰かが既に登ってしまっている。

登ってしまっている?

そう、今回の狙い目はこの既に誰かが登っているだ。逆に言えばまだ誰も登っていない山を登れば世界初登頂。プチ世界一達成である。

しかも高い山は全て登られているから探す山は必然的に低くなる。低い山なら俺でも何とかなる可能性が高い。

低い山で先人達のお目に適うものはそれほどないはずだから、まだ誰も登頂していない山は必ずとこかにある!・・あるといいなぁ。

しかし、懸念もある。昨今の登山ブームだ。夏のシーズンなどは、ここはどこの歩行者天国だと思うほどの賑わいを各地で見せている。

低い山でも未登頂は少ないかもしれない。

とゆうか地図に標高が表記されている山って既に国土地理院の下請けの方が測量で登っちゃってんじゃん。あらら。


まず山を探す。今回の世界一への挑戦はこの山探しがほとんどのボリュームを占める。

逆に言えば山さえ見つかれば登ったも同然である。


昔の人なら無記名の山を山岳地図を調べたり登山の専門記録書を調べるしか方法がなかったろうが、俺には世界最高の情報提供機関「わーるどわいわいうえーぶ」がある。

俺はくろに頼んで未踏峰の山を探してもらう。

「お主、何でもかんでもうえーぶに頼っておるとろくな大人に成れんぞ。」

「そこをなんとか良しなに。明日から本気だしますから。」

「しょうがないのぉ。」

くろは文句を言いながらも調べてくれた。

2千m級以上は全滅である。ある意味ほっとする。だって無理だから・・、下手すると千m級ですら危ないから。

現代を生きる18歳の体力と根性を甘く見るなよ!俺は10キロマラソンを3キロでリタイヤした男だぜ!・・自慢にならんな。


「ほう、これはすごいな。2千m級なのに軒並み失敗してやっとこやつが成功か。

しかし、こやつ5回も失敗したのに諦めないとは天晴れである。褒めて遣わすぞ。」

くろが感心しているので覗いてみるとそこにはナイフのような頂の山頂で国旗を掲げて叫んでいる男たちの姿があった。

「すごいですね、俺の思い描く登山って歩いて登るものでしたけど、これはビルの壁をよじ登るのと大して変わらない。」

「そうじゃろう、うん、大変であった。これはすごいのじゃ。中々できる事ではないのじゃ。もっと褒めれ。」

くろがまるで自分が登ったかのような口調で自慢する。

だがこんなのは逆立ちしても俺には無理だ。先に進もう。


千m級を検索。該当なし・・。おっと雲行きが怪しくなってきたぜ。だが何とかの法則と同じで下に行くほど山の数は多くなる。

しかも高さが低くなるのは俺にとってはメリットだ。

500mくらいがいいんですけど、くろ以外の神様お願いします。くろはだめです。こいつは絶対なにか仕掛けてくるから・・。

「500mとはお主の志の低さを如実に表しておるのぉ。」

くろがからかって来るが気にしない。出来ることからコツコツと、だ。高すぎる目標は失敗の元だよ。受験生諸君。


500m以上を検索。該当なし・・。俺は頭から血のけが引くのを感じる。

もしかしてこの世界に未踏峰の山ってもうないの?先人の方々登りすぎだよ。

「いざ探してみると結構ないものじゃのぉ。」

「この山など地元のオトメばあさんが春の山菜取りのついでに登頂してしまっておるぞよ。」

「こうして見るとこのクラスの山は猟師やきこりが多いのぉ。後は測量屋か。」

国土の把握は国家の基礎だからみんながんばっちゃったのね。ゲームによくある前人未到の秘境は現代には存在しないのかもしれない。


一途の望みを託し1m以上を検索してもらう。1mの山ってもはや山と呼べるのか?とも思うが大阪には国土地理院認定のものがあるらしい。

だが結果は無常にも該当なし。

「そんな・・、ばかな・・。」

俺はその結果に言葉がでない。

「まぁ、そんなに落胆するな。あと千年も待てば新しい山もどこかに出来るじゃろう。」


その時、俺はくろの何気ない言葉に閃いた。山が出来る?

「パンがなければ作ればよい。」は誰の格言だったか思い出せないが、そうだ、山がないなら作ればいいんだ。

しかも前例を見つけた。福島県の○○○さんが自宅の庭に盛土をしてプチ富士山を作っちゃったのが認定されていたのだ。

「くろ!重機を出してくれ。それとスコップ。ヘルメットもだ。」

俺はくろに土木車両を出してもらって俺専用の小山を作ることにした。

ただ重機と聞いたくろが重機関銃をだしたのはお約束である。

「なんじゃ、初心に返って武力による世界征服に切り替えたのかと思ったが違うのか。」

そうですね、スコップもヘルメットも軍装備関連と共通でしたね。そう考えると土木ってアーマーなんだな。工兵なんて兵種もあるしな。


俺は1日かけ高さ20メートルの小山を作り上げた。

本当はもう少し高くしたかったんだけどくろが反対側から崩すもんだから低くなってしまった。

くろ、てめぇ、この山は砂山崩しの巨大版じゃねぇーんだよ。


「ほお、こうして下からみると20mの小山とはいえ堂々としたものじゃ。」

「そうですね。機械を使ったから1日で出来たけど人力だけだと1ケ月は掛かりましたね。」

俺も感慨深げに小山を見上げた。

すげー、俺って結構やればできるじゃん。全国に18歳男子は大勢居るけどこんなのを作り上げたのは俺だけだぜ、きっと。

夏休みの工作に出品したら総理大臣賞間違いなしだ。

「しかし、小山と侮ると痛い目を見るぞよ。我が山の至る所に対戦車地雷を埋めておいたからな。踏んだら一貫の終わりじゃ。」

なんつうことをしくさるんだ、こいつは。

「安心しろ。最先端の地雷探知装置「るんぱくん」を貸してやる。」

そう言ってくろはなにやら長い金属の棒を差し出した。

「くろ様、本物の「るんばくん」はね、こうパンケーキみたく丸くて、くるくる自分で動き回るんですよ。

これは銃剣です。地雷探査の盟友です。でも今は金属探知機が主流ですから。」

くろのお陰でいきなりハードルが上がってしまったが、対戦車用なら人間の重さでは反応しないだろう。・・しないでください。


俺は目の前の山を見上げる。

やっと此処まできた。ここにくるまでにクリアした幾多の難関を思い出すと感慨のあまり目頭が熱くなた。

時には友の手を借り、時には強力なマジックアイテムを駆使し、今ここにいる。

装備と体調は万全だ。少しでも軽くするためにおしっこも済ませた。

これまで幾多の挑戦者を葬ってきたであろう対戦車地雷も今の俺には通用しない。

あとはひたすら山頂を目指して登るだけである。

俺は初めの一歩を踏み出した。

雪解けで緩んだ(設定の)土が山への侵入者を排除しようと足元を狙ってくる。気を抜いたら最後、斜面を転がり落ちて肉片すら残るまい。

1m登っては固定ハーネスを打ち込み体を支持する。ハーネスを打ち込む前に地雷の有無も慎重に調べる。

滑落で死ぬのは山男として諦めもつくが地雷に吹っ飛ばされては俺のために協力してくれた仲間に顔向けができない。

ほぼ予定通りの時間で俺は中腹まで登ってきた。ふと山頂を見ると上空からカラスが降り立った。

鳥はいいなぁ、空を飛べるから。俺もそこまで連れてってくれよ。大丈夫、俺だって飛べるんだぜ。

俺は無意識に天に向かって手を伸ばした。

その時、くろの罵声が飛んできた。

「自己満足一人芝居なんぞしておらんでサクサク登らんか!我はつまらんぞ。」

危なかった。酸欠症状だ。幻聴が聞こえた。幻覚に引き寄せられ死んでいった山男は多い。俺は急いで深呼吸をした。

もう大丈夫、山頂までもう少しだ。俺は最後の数メートルを駆け上がった。


そして最後の一歩を踏み込む。登頂成功だ。俺は今誰も登ったことのない処女峰の頂に居る。

はるか遠くには2千m級の山々が俺の登頂を祝福するかのようにその山頂を輝かせていた。

俺は自分が登ってきたルートを上から見た。苦しい道のりであった。だが今はそれすらも懐かしい。

眼下にはまるでミニチュアのような、俺が置いておいた本物のミニチュアである家々が見える。

その傍らでは俺の登頂に飽きて重機で山を崩しているくろが居た。こらくろ、やめなさい。地雷が爆発したらどうするんだ。

俺は天を仰ぎ叫ぶ。「てっぺん、とったどー!」

そして用意しておいた白地に赤い丸の描かれた旗を掲げた。まあ、俺も一応国民だしいいよね。

こうして苦しかった俺の世界一への挑戦は終わった。

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