(151A 作)
ジンッと指先が痺れた。
掴んでいるノブの向こうから勢いよく電流を流されたかのように感じて思わず反射で手を放す。
安いアパートやマンションありがちな金属製のドアはまるで瑠璃色の地球に恋でもしているのかと疑いたくなるほど、深く、深く丁寧に色を重ねられていた。
そのドアの向こうから驚いた顔を覗かせているのはどう見ても若い女性で、大学に入って知り合った友人の家を訪ねてきたはずの僕もきっと同様の表情をしているに違いない。
間違えた――――?
謝罪しようにも、言い訳をしようにも言葉が出てこない。
簡単な単語すら頭の中になにひとつ浮かんでこないのだから日本男児として情けない限りだ。
彼女が困惑気に眉を下げて首を傾げると、昼下がりの太陽を受けた淡い茶色の髪がふわりと揺れた。
大人びた顔立ちをしているのに少し半開きになっている唇のふっくらとした柔らかさや、スカートの裾から覗くピンク色の膝がどこか幼さを感じさせる。
更に白い肌に残る日焼けの跡が大きく肩を出した上着から見えてドキリとした。
そしてなにより。
色とりどりの魚たちが泳ぐ南国の青い海のような――いや、流星が美しい紺碧の夜空のような、はたまたどこまでも高く澄んだ空のようでもあるその瞳の煌きに目を奪われた。
一瞬で。
言葉も無く、ただ彼女を美しいと純粋に思った。