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戦乙女(ワルキューレ)が眠る丘で  作者: 雨音緋色
第2章ー初陣は唐突に始まり、少女は英雄への一歩を踏むー
18/31

2-7

 第正門を通る騎士団は、ベリアル率いる近衛騎士団を筆頭に序列ごとに並んで国内へと凱旋する。すると、騎士団の帰りを待ちわびていたのか国民達が一斉に中央の大通りに集まり、パレードよろしくの状態となる。


「まだ早朝だいというのに……この国の国民達に余程慕われているのですね」


「何を言うサニア。貴女もその一員だろう」


 驚きの表情を見せつつ国民に手を振るサニアは、小声でギランに話しかける。対しギランは微笑みながら返答し、サニア同様国民に向け拳を掲げた。

 ギランの戦勝パフォーマンスとも取れる行動に国民達は湧き上がり、ギランに続いて拳を掲げる。そして彼らは声を揃え騎士達を祝福した。


『アルトリアの誉れ達‼︎栄えある勝者に最高の敬意を表します‼︎』


「ありがたい‼︎其方らの誉れである事、誠喜ばしいぞ‼︎」


 国民の声に応えるベリアル。本当に嬉しそうな顔で叫ぶ彼にサニアは微笑み、改めて騎士になれて良かったと感じた。


 擬似的な凱旋パレードどなった帰還は、国民が囲む中真っ直ぐ王城を目指しガラード王の元へと向かう。

 エントランスに着き自身達の騎士隊を解散させた騎士団長は、戦果を挙げたサニアとレイバック、そしてレオルグとヴォイドの親子を連れて昨日訪れた王の間とは別の、謁見の間へと向かう。

 するとそこには、ガラード王とその本妻であるパルマ女王が鎮座しており、騎士団長の帰還を見るや立ち上がって迎え入れた。


「良くぞ無事に帰ってきた。我が誉れよ。して、戦果は?」


「はっ‼︎6万の兵を束ねた近隣諸国の連合軍は壊滅。敵総大将は討ち死に、残った兵は解放し諸国の再建に向かわせました」


「ふむ。して、こちらの損害は?」


「はっ‼︎総勢8万の我ら騎士団は死者は無し。損傷した兵が80余り。各部隊長以降は無傷のまま帰還しております」


 ベリアルの報告を聞き目を見開くガラード王。これまで、圧勝はすれど戦場の中で死に絶える者も多く、騎士達の士気が下がる事を常日頃から懸念していた彼にとって、今回の戦は過去類を見ない程の快勝だった。


「して、目覚ましく戦果を挙げた者は居るか?此度の戦、その者には褒美を取らせよう」


「勿論、此度の戦で勇猛果敢に敵を討ち、類稀なる才能と策を講じ一騎当千の活躍をした者。そして、その者を助けた騎士がおります。2人共、前へ」


 ベリアルの言葉で騎士団長の前へと出るサニアとレイバック。それを見たガラード王は再度驚きながらも、何処か納得した表情を見せた。


「サニア・ローレンよ。お主の師は聡明かつ高潔な誉れだった。見事オリエントの誉れを受け継いできたらしいな」


「ありがたきお言葉」


「そして貴殿はレイバックか。数年前、期待の星として入隊するも燻っていた才能が此度漸く開花したな」


「はっ‼︎誉れの中の木っ端を覚えていて頂き至極幸せ‼︎」


 2人は膝を着きガラード王の前で頭を下げる。そんな2人に顔を上げさせた王は、望みを聞き始めた。


「此度の戦尤も誉れ高き騎士となったサニアよ。その華々しい戦果を評し望みの物を与えよう。何が望みだ?」


「はっ‼︎……ならばこの2人の命を‼︎」


 顔を上げサニアが振り向いたその視線の先には、レオルグとヴォイドが捕縛されており、ガラードに頭を下げ床に座らされていた。


「此度の戦で捕まえた敵将の命を?何をするつもりだ」


「このレオルグは武こそなかれど兵の士気を上げるのがとても達者で、私の下で補佐を頼みたいと思い申しました。そしてヴォイドは武芸者。ギラン公と互角の剣戟を繰り広げる誇りある将。この2人を見事改心させ、私の下で素晴らしき誉れにしたいと‼︎」


 サニアの強い眼差しを見たガラード王は、彼女が本気で考えていると悟る。だが、新兵である者がこれまでに敵将を従えた事など勿論なく、彼は少し悩んだ。すると、思わぬ所からサニアへの支援が届いた。


「我が王よ。宜しいではないですか。私達の誉れならば、獅子でも手懐けるでしょう」


「パルマ……うむ。その通りだ。良かろう‼︎捕虜2人の命、サニアに預ける‼︎」


「はっ‼︎ありがたき幸せ‼︎」


 要求が通った事に喜びを隠しきれなかったサニアは、満面の笑みを浮かべて頭を下げる。そして王はレイバックにも同様に望みを聞いた。


「其方の望みは何だ?誉れよ」


「はっ‼︎……誉れとしてこの場にいる事が我が望み。故に私にはありませぬ。しかし……‼︎」


 そこで言葉を切ったレイバックはちらりとサニアを見る。


「此度の戦、燻っていた私を見出し采配していただいたサニア副隊長には国内に住処がありませぬ‼︎どうか、誉れ高き紅玉に住処を……そして出来るならば、その下へと着く彼らの、祖国の家族にも王の慈悲の下住処を与え下さい‼︎」


 レイバックはサニア以上に真剣な眼差しで王を見つめ返す。その見事とも言うべき無欲な姿勢にこれまた驚かされたガラード王は、二つ返事で了承する。


「なんとも潔い誉れよ‼︎良かろう。その望み、どちらも叶えよう‼︎」


「ありがたき幸せ‼︎」


 一方、レイバックの言葉に驚いたサニアは、思わず彼を見つめ、彼に対しても頭を下げた。

 その後、ベリアルの手により解放されたレオルグ達を背後に立たせたサニアは、ギランの後方に戻り真剣な表情へともどる。

 その後の報告は各国の敗戦処理についての処罰、今後の訓練方針、昨日呼ばれた4人以外の合格者の読み上げとなり、解散となった。



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