ハッピーの冒険
…何か音が聞こえる。
その音で彼は目が覚めた。
ワイワイガヤガヤ、騒いでいる声だ。
その声は笑っているのだろうか。
しかし、彼にとって、その笑い声がなぜだか、凄く嫌なものに聞こえた。
…やだな。
また寝ることにした。二度寝しても、特に問題はないだろう。
ガタガタ揺れて、はっと目を覚ました。
…うわっ!?なんだ?なんだ?
どうやら、家が動いている。
いや、いつも動いている気はするのだが、いつもの動きとは違い、ちょうど家がまるで暴れているような感覚だ。
音が止んだ。またガヤガヤと声が聞こえた。
また嫌な声である。ただ違うのは、何かを喜びあっているおじさんたちの声だった。
…よくわからないけど、やだな。
また寝ることにした。寝過ぎたとか言わないでほしい。体力を蓄えとかないといけない気がするからだ。
何週間かたった。自分の部屋が少し狭く感じた。
…なんだって、こんなに狭いんだ。
彼は壁を蹴った。
するとまた、部屋はガタガタと動いた。
…なんだって、こんななんだ。
彼は嫌な気分になった。
また数週間がたった。
…そういえば、この部屋の出口がないじゃないか。
彼は思うと同時にホッとした。
何故だかはわからない。ただただ、外に出るという行為が自分の人生を残酷に、悲しいものに感じているのだ。
彼はもう一度、寝ることにした。
しかし、眠れない。
外の世界には、一体どんな世界が広がっているんだろう。
恐怖もあったが、それと同時に好奇心がわいてきた。
それに、動く度にぐらぐらするのはもううんざりだったのもある。
…一度出てみようかな。怖かったら戻れば…いいよね?
彼はそう思い、出口を探し始めた。
そして…
ついに彼は、外の世界へと飛び出した。
あの嫌な声はしない。外の世界はぐらぐらしなかった。
少し時間がたって、自分に目があることを思い出した。
彼は目を開けた。
目の前には、何やらよくわからない、
鉄でできた頑丈な柵があった。
嫌な予感がした。
彼は部屋に戻ろうとした。だが、
そこに部屋はもうなかった。
彼は、鉄の柵を見て、激しい恐怖を覚えた。その時、足音がして彼を突然掴み……
「やったー!!」
全員が拍手した。
「ついにやりましたね!」
「これはもうお祭り状態だヒャッホー!」
「ついに…!ついにやりましたね!」
「ありがとう!皆のおかげだよ、この赤ちゃんパンダの天然出産は世界的にみても例をみない!素晴らしいよ」
「これでこの動物園も、これで有名になりますね!」
「…それで、このパンダはどうするのですか?」
「決して死なないように、先程飼育員を行かせた。人工保育をしよう。」
「そのうち大きくなったら、来てくれた方にもぜひ見てもらいたいですね!」
「もちろんだ。
来てくれたお客は新しいパンダをみて大喜び。パンダの方も賑やかで楽しいだろうな。」
「それで、名前の方はどうするつもりですか?」
園長は言った。
「もう決めてある。人々も幸せにできて、自分も生まれて幸せだろうから…」
「…ハッピー。うん。ハッピーにしよう!」
こんにちは、動物の赤ちゃん。