私は閉じこめられています。
私は生まれたときから閉じこめられています。
私には広すぎるくらいのこの家の中は、とても過ごしやすく、居心地がよいのですが、私は外を知らないのです。それはとても悲しいことだと、私は思ったのです。
けれど、それは私だけではないのです。そこにいる彼も、私と同じ境遇にいます。彼は私が生まれてからしばらく立った後、ここへ訪れました。彼は支えでした。この閉ざされた空間の中で、私以外のいきもの。それがなにより嬉しいことでした。それは彼も同じでした。
彼とは沢山話をしました。それはもう沢山。けれど私たちは、そんなことは三日も経てば忘れてしまいました。
私たちは、惹かれ合っていました。そしてお互いに、もうここから出られないと、思っていたのです。だからこそ私と彼は、生涯を誓いました。外に出られなくとも、お互いに支え合えれば、それでよいと考えました。私たちは幸せでした。
今日も私たちにご飯を与えてくれる、あの人が来ました。私たちはもう怖くありませんでした。何をされても、お互いが居れば、怖いものなど無いと考えていたからです。
それは間違いでした。
「―― 値段は安いな。でも…」
「いかかでしょうか?」
「うーん、まあいいだろ。こいつにします」
「ありがとうございます」
私たちは離ればなれになりました。彼は悲しげでした。けれど涙は出ませんでした。私も悲しかったのですが、涙は出ませんでした。私は彼を失ってしまいました。
男は私を連れて行きました。扉が開かれると、そこは光り輝く外でした。私は晴れて外へ出ることが出来ました。望んでいたものが手に入りました。彼が居なくなって悲しいけれど、得たものもありました。
「さあ、今日からここがお前の家だぞ。そうだ、名前を決めてやらなきゃな」
お前の名前は――――――――。
それからしばらく経って、私は閉じこめられてしまいました。私には広すぎるくらいのこの家の中は、窓からは外の景色も見え、とても過ごしやすく、居心地がよいのです。前にも似たようなことを言った気がしますが、三日も前の事は覚えていません。
それから、男は私にとって大切な存在となりました。毎日一緒に遊んで、とても楽しい毎日を送っています。前にもそんな大切な存在がいたような気がしますが、三日も前のことは覚えていません。
外へは出られませんが、男は私に尽くしてくれ、今はとても幸せです。
さあ、今日はひなたぼっこでもして、眠りましょうか。
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