表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私は閉じこめられています。

 私は生まれたときから閉じこめられています。

私には広すぎるくらいのこの家の中は、とても過ごしやすく、居心地がよいのですが、私は外を知らないのです。それはとても悲しいことだと、私は思ったのです。

 けれど、それは私だけではないのです。そこにいる彼も、私と同じ境遇にいます。彼は私が生まれてからしばらく立った後、ここへ訪れました。彼は支えでした。この閉ざされた空間の中で、私以外のいきもの。それがなにより嬉しいことでした。それは彼も同じでした。

 彼とは沢山話をしました。それはもう沢山。けれど私たちは、そんなことは三日も経てば忘れてしまいました。

 私たちは、惹かれ合っていました。そしてお互いに、もうここから出られないと、思っていたのです。だからこそ私と彼は、生涯を誓いました。外に出られなくとも、お互いに支え合えれば、それでよいと考えました。私たちは幸せでした。


 今日も私たちにご飯を与えてくれる、あの人が来ました。私たちはもう怖くありませんでした。何をされても、お互いが居れば、怖いものなど無いと考えていたからです。


 それは間違いでした。


「―― 値段は安いな。でも…」


「いかかでしょうか?」


「うーん、まあいいだろ。こいつにします」


「ありがとうございます」



 私たちは離ればなれになりました。彼は悲しげでした。けれど涙は出ませんでした。私も悲しかったのですが、涙は出ませんでした。私は彼を失ってしまいました。

 男は私を連れて行きました。扉が開かれると、そこは光り輝く外でした。私は晴れて外へ出ることが出来ました。望んでいたものが手に入りました。彼が居なくなって悲しいけれど、得たものもありました。


「さあ、今日からここがお前の家だぞ。そうだ、名前を決めてやらなきゃな」



 お前の名前は――――――――。



 それからしばらく経って、私は閉じこめられてしまいました。私には広すぎるくらいのこの家の中は、窓からは外の景色も見え、とても過ごしやすく、居心地がよいのです。前にも似たようなことを言った気がしますが、三日も前の事は覚えていません。

 それから、男は私にとって大切な存在となりました。毎日一緒に遊んで、とても楽しい毎日を送っています。前にもそんな大切な存在がいたような気がしますが、三日も前のことは覚えていません。

 外へは出られませんが、男は私に尽くしてくれ、今はとても幸せです。





 さあ、今日はひなたぼっこでもして、眠りましょうか。






見てくださってありがとうございます。

よろしかったらご感想もどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ