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【連載版】愛してると言われても、頭上の数値は『殺意MAX』ですが?  作者: セトガワ


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7/11

7話 その相談、引き受けますわ

 あの腹黒をどうやって躾ましょうかね。

 取り巻きの相手をしつつ弁当を食べていると、教室が騒がしくなる。


「きゃあ〜、バイス様よ!」

「バイス様、どうされたのですかー?」

「いや、ソラリス様はいるかなって」

 

 黄色い声援に包まれながら、バイスがやってくる。


「これ、珍しい薔薇なんだ。魔素濃度の高い場所で、こうなるんだって。昨日、偶然見かけて買ったんだ」

 

 水色のバラを一本、私に手渡してくる。

 

「まあ! 絶対にお高いのに、私のために買っていただけるなんて!?」

 

 両手を組んで、目を潤ませておく。

 バイスは私の手を優しく握り、小さくうなずいた。


「貴女の喜ぶ顔を見れたんだ。全然高くない買い物だったよ」

「はぁぁ……」

 

 うっとりと、私は彼を見つめる。

 

「放課後、一緒に紅茶でも飲もう。二人で話したいことがあるんだ」

「ふ、二人で……?」

「うん。二人だけで、ね」

 

 パチッ、とウインクをすると、バイスは颯爽と教室から出ていく。

 ……おそらく、あのイベントね。

 確定ではないけれど、準備はしておこう。


「あの……ソラリス様の本命は、やっぱりバイス様なのですか? 殿下の方がお似合いだと、私は思っているのですが……」

「わたくしも、身分的にもつり合っていると思います!」 

 

 将来、バイスとどうにかなりたい女子たちが騒ぎ始めた。


「誰と結ばれるかは、私が決めることですわ。私にとってバイス様は、死ぬほど大切な人です!」

 

 ここはヒステリック気味に伝えておく。

 こうでもしないと、言葉尻を捉えてバイスに報告する女子が現れかねない。

 いまは余計なことをされては困るんだよね。


 ☆


 放課後、私は中庭に向かう。

 洒落たガーデンパラソルがあり、テーブルと椅子も用意されてあった。

 バイスが満面の笑みで手を振っている。

 私もはにかみながら、小走りで近づく。


「お姫様、こちらにどうぞ」

 

 椅子を引いて、私を座らせてくれた。

 バイスはこういった気遣いも完璧にこなす。

 ティーポットからカップに紅茶を注ぎ、私の前に差し出す。


「いい香りですわ〜! なにが入っているのかしら?」

 

 念のため、Gapは1%以上にしておく。


「柑橘香のブレンドだよ。高品質だし、気に入ってくれると僕は嬉しいんだけど」

「バイス様が淹れてくれる紅茶なら低品質だろうと、毒が入っていようと飲みますわ!」

「毒なんて入れないよ。試してみて」

 

 嘘はなさそうだ。

 まあ、ここで毒を盛るタイプではない。

 グレイみたいな嫌がらせもないだろう。

 この男はもっと計算高い。

 利用価値のある獲物を易々と逃したりはしないのだ。

 紅茶を一口含む。

 確かに美味しい。


「いままで飲んだ紅茶で、一番美味しいですわ!」

「よかった! 少し心配だったんだ、気に入ってもらえるかって」


 バイスはホッと胸を撫で下ろし、椅子に腰を落ち着ける。


「……この間の魔道具発表会、大変だったね。公爵家は先生との契約を打ち切ったと聞いたよ」

「ええ。グレイ様との契約に切り替えたそうです」

「それって、彼が君の婚約者になる確率が上がったってことだよね……」

 

 落ち込んだように、バイスはうつむく。

 

「あのときも、どこか信頼し合ってる風に見えたし……。僕としては、内心焦ってるんだ」

「それって、つまり……」

 

 私が指をもじもじさせると、彼は勢いよく立ち上がった。

 私の前に跪いて、真摯な顔で手を差し出す。


「親の意向じゃなく、僕は自分の意志でソラリス様と一緒になりたい。僕が最も大切にしたいもの、わかるかい?」

「……いいえ。教えてください」

「君の笑顔だよ」

 

【Gap100%】


 バイス・シュリーマン

【総合値】−481


【欺瞞】−100

【支配】−96

【嘲笑】−96

【打算】−95

【愉悦】−94


 いや、目の当たりにするとキツいね。

 システムと原作知識がなければ、さすがに騙されるかもしれない。

 そのくらい演技力がズバ抜けている。

 原作のソラリスが骨抜きにされるわけだ。

 バイスは気を抜くと、簡単にバッドエンドに連れていかれる。


「本当ですかぁ……バイス様ぁ……!」

 

 彼の手を取り、頭が沸騰した様子を演じる。 

 バイスは首肯して席に戻ると、今度は急に表情を固くした。


「ただ、障害は多い。最近うちのビジネスが上手くいかなくてね。公爵家に誤解されているみたいなんだ」


 彼のシュリーマン家は伯爵家で、うちと同じように商売を手広く展開中だ。

 同じ業種だと、客を食い合うこともあった。

 私は前のめりになって尋ねる。


「うちが、なにか邪魔をしていますの?」

「いや、むしろ逆だよ。うちが、公爵家の魔石流通ルートの妨害をしていると誤解されてて」


【Gap65%】


 虚実織り交ぜている感じかな。

 あまり理解力が高いと、以前のソラリスっぽくはないか。

 首を傾げておく。


「よくわかりませんが、私がお父様に頼めばいいのですね?」

「それは、まずいんだ。うちは公爵家とトラブルになりたくない。でも流通ルートが不明だと、知らずに邪魔してしまう。そこで可能であれば————いや、やっぱり貴女にこんなことは頼めない」

 

 首を左右に振って、バイスは苦しそうな表情を浮かべた。


「仰ってください! 私、バイス様のお力になりたいんです!」

「……いいのかい?」

「覚悟はありますっ」

「それなら流通ルートの資料をこっそり見せてほしい。確認したらすぐに返す。うちは今後、そのルートに関与しない」

「そうしたら、うちの誤解も解けて関係も改善……ですわね?」

「そう。僕たちが結ばれる可能性が高まる!」


 さりげなく、婚姻をちらつかせてきた。

 徹底して、こちらの心を操作しようとしてくるね。

 さらにバイスは、資料入手のレクチャーも行う。


「公爵の執務室には金庫があるよね? 鍵穴はあるタイプかな」

「ええ、金庫も鍵穴もありますわ」

「大切な資料はおそらく、その中だ。鍵の問題は、これで解決できるよ」

 

 バイスは懐から銀のペーパーナイフを取り出した。 

 爽やかな笑みで、私に渡してくる。


「『解錠変化』という魔道具なんだ。これを鍵穴に差し込むと、中で液状に溶けて適合する形に固まる」

 

 裏社会でしか流通しないような泥棒キットを、花でも贈るような顔で渡すんだね……。

 用意周到すぎるし。

 私はキットを受け取った。

 

「絶対に無理はしないで。ソラリス様が危険な目に遭うくらいなら、最悪うちが潰れた方がマシだから」

「潰れるだなんて……絶対に成功させますわ!」

「君だけが頼りだ」

 

 真摯に言って、私の手に指を絡ませてくる。

 一応、バイスの内面を解析したところ……


【警戒】−94

【疑念】−88

 

 他が下がり、これが上昇していた。

 えっ、どうして……?

 さすがに、チョロすぎて怪しまれた?

 もう少し悩んだり葛藤するべきだったか……!

 

「でもやっぱり私、少し怖いですわ……」

「ごめん、やっぱりこんなこと、いけない」

 

 バイスは解錠変化を静かに取る。

 その表情は非常に切ない。

 私は一瞬迷ってから、立ち上がって彼の手首を掴む。


「……やっぱり私やりますわ! バイス様が苦しむ姿は見たくないんです」

「本当に、無理はしてない?」

「はい。その代わり、一度だけ抱擁してください。勇気をくださいっ」

 

 そう頼むと、バイスは快く要求に応えてくれた。

 包まれるような抱擁で、ここだけ見れば完璧なパートナーだった。


「待っていてくださいね、バイス様」

「僕は、貴女を信じている」


 五秒くらい見つめ合う。

 私の方から顔を少し逸らす。

 魔道具を懐に入れると、一緒に中庭から出ていく。

 横目で確認すると【警戒】と【疑念】はひとまず消えていた。

 さて、私もそろそろ仕掛けますか。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
打算や欺瞞がマイナス値ってことは、それだけ打算抜き、嘘無しで付き合って下さってるということですね!
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