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【連載版】愛してると言われても、頭上の数値は『殺意MAX』ですが?  作者: セトガワ トウ


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12/14

12話 中庭パニック騒動

再開いたします!

 初めての嘘に衝撃を受けたのは六歳のときだった。

 小学校から帰ると、うちにおばあちゃんの友達が四、五人遊びに来ていた。

 私が頭を下げると、みんなが「立派だねぇ!」と褒めてくれる。

 嬉しくなった私は、みんなのいるリビングで宿題を始めた。

 おばあちゃんたちがなにを話しているのか聞き耳を立てると、ずっと褒め合いをしていた。

 あなたの家の息子は立派だ。

 あなたの旦那さんは素晴らしい会社に勤めている。

 あなたの家はオシャレで羨ましい。

 穏やかな時間だった——

 一人が帰るまでは。

 彼女が抜けて帰った途端、そこは悪口の場になった。

 さっき帰った彼女のことを全員で悪く言うのだ。

 夫が酒乱だとか、孫の頭が悪いだとか。

 さっき褒めていたことも全部嘘だったらしい。

 私は怖くなって、その場から立ち去ってしまう。

 その日から、人の嘘にかなり敏感に反応するようになった。

 嘘ノートなるものまで作ってしまい、そこに家族や他人のついた嘘を記録していく。

 子供同士の嘘、大人のつく嘘、悪意はない嘘。

 月日が流れ、何冊目かのノートに突入した頃、私はかなり冷めた目で世界を見るようになっていた。

 もちろん、表面上は上手くこなしていたと思う。

 家族や先生にも大きな迷惑はかけなかったし、友達も多かった。

 恋人も何人か付き合ったりもした。

 でも心の奥深くでは、誰のことも信用できない。

 そんなとき『救済のソラリス』に出会った。

 人の嘘に敏感に生きてきた私には、心が読めるという設定はあまりにも魅力的だもの。

 同時に、このゲームは嘘を見抜くだけでは幸せになれないことも教えてくれた。

 

 ☆

 

 昼休みの屋上で風を感じていると、ドアが開く音がした。

 私には関係ない人かと思っていたら、聞き覚えのある声音が届く。


「風に髪をなびかせる君も素敵だね」

 

 嫌々振り返ると、やはりアーサーだった。

 下で女子と遊ぶのに飽きて、上がってきたらしい。


「あら、そう言っていただけると自信になりますわ」

「……フッ、言葉と表情が合ってないよ。そんなところも素敵だけどね」

 

 なにが目的だろう……?

 アーサーはこちらを伺いながら、距離を少しずつ詰めてくる。


「これから中庭で、大事な用があるんだ。歌をね、うたうんだ。君のためだから、絶対に来て欲しい」


【Gap90%】


 念のため、システムを起動しておく。

 気になるのはこの二つだ。


【打算】95(−)

【好色】88(+)


 さっきのGapと打算の要素から、単に歌を披露するだけが目的じゃないのはわかった。

 これらの情報と合わせると、今後起きるのは『中庭パニック騒動』というイベントだろう。

 【好色】が+になっていることから、アーサーの中で私の評価が変わっている。

 性的な意味も含めて、私を本気でモノにしたいと考えだしたのかな。

 いかないという手もある。

 でもゲームだと、イベントを断ると別のものが発生することが多い。

 アーサーの心境も気になるし、ここは乗ってみよう。


「まあ。それは聞き逃せませんわね」

「だろう!? 僕のコンサートを楽しんでくれ。君のためだけに行うようなものだ」

 

 喜色満面に、アーサーは私の手を引いてエスコートする。

 触られっぱなしは嫌だったのでさりげなく手を離しておく。


「僕の『君に愛を込めて』は自信作なんだ。期待していてくれ」

「他にはなんという曲があるのですか」

「……ん? 他?」

「コンサートというからには最低でも数曲はあるのかと」

 

 意地悪っぽく告げると、アーサーは黙り込んでしまう。

 考えていなかったのだろう。

 だって、一曲目が終わったところで事件が起きるのだから。


「ま、それは聞いてのお楽しみだね。ほら見てくれよ、あんなに観客がいる」

 

 中庭に出ると、中央辺りに人だかりができていた。

 基本的には女子ばかりだが、王子に媚びを売りたい男子もそれなりにいる。

 そこに向かう途中、植えられた木の下で寝ている男子が目に入る。


「アーサー様、よろしいのですか。睡眠中の方もいますけど」

 

 黒髪の男子は横になり、目を閉じている。

 顔をこちらに向けているのでわかるが、かなりの美形だ。

 目を開けたら、どんな感じなんだろう。

 そして彼のそばには剣があり——日本刀?

 このゲームの世界で使われる武器に日本刀なんてあったかしら?

 私以外の転生者だったりして……さすがにないか。

 アーサーも不思議そうに目を凝らす。


「あんな奴、いたかな? ……まあ、いい。僕の美声でどこまで眠っていられるか勝負だ」

 

 また意味不明な対抗心を出して、アーサーは観衆たちのもとへ。

 

「ではいってくる。我がパートナー、ソラリス」

 

 私の手の甲にチュッと軽くキスをすると、アーサーは簡易的に作られた壇上にのぼる。

 キャーキャーと女子たちの黄色い声が耳にうるさい。

 あなたたち、こんな男のなにがいいのよ……?

 内心で突っ込みつつ、私はアーサーのコンサートを眺める。

 ギター1本での弾き語りだった。

『君に愛を込めて』を聴き終えた観客たちが、盛大な拍手を贈る。

 正直、想像の十倍上手かった。

 歌も演奏も。

 ただ、歌詞が吹き出すほど薄っぺらかった。

 小学一年生が書いたと言われても信じる。

 

「君のために」

 

 壇上のアーサーが投げキッスをする。

 私の方に向かってきた気がしたので、一応はたき落としておく。

 

「——みんな、逃げろおおおっ!」

 

 中庭に、鬼気迫る一声が響き渡った。

 その場にいた生徒たちに緊張が走る。

 さて、始まるようね。


また更新していきます。

お読みいただき、ありがとうございます。

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