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アイドルマネージャーの野望 〜戦国武将をマネージメント〜  作者: kin_kin


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1/6

第一話:マネージャーは燃え尽きた

過去に戻れるなら、あなたはいつの時代に戻りたいですか?

学生時代、初恋の瞬間、後悔してること、それとも何もかも投げ出したあの夜。


僕は戦国時代だけは勘弁です。

ステージの光が、まるでそこに立つ少女たちが


**現実ではなく幻なのでは**


と思わせるほど、眩しく輝いていた。

観客の歓声は波のように押し寄せ、照明は白い奔流となってステージ全体を包み込んでいく。


アイドルグループ《Happy☆ness(ハピネス)》のワンマンライブは無事に成功。見ていた誰もが「最高だった」と言うだろう。


――ただ一人、マネージャーの俺・小野以外は。


「小野さん、見てくれました?最後のポーズ、完璧でしたよね!」


ステージ裏で、担当アイドルのゆきが笑顔を向けてくる。


もう一人のあいなも、汗を拭いながら手を振った。


髪にはキラキラしたスパンコールが絡まっていた。


俺は小さく頷いた。「うん、良かったよ」


口ではそう言ったが、心の中は空っぽだった。


横からあいながスマホを取り出し、早速SNSに写真をアップしていた。

「今日のライブ、最高すぎた♡ #感謝 #Happy☆ness」

投稿ボタンを押す音が、やけに耳に残った。


ライブ前日に遅刻して、練習は一時間で切り上げ。


SNSには「今日もかわいい私」ばかり。


ファンはそれを褒めちぎり、数字が伸びれば努力したと錯覚する。


「……早く帰ってくれ」


心の奥でつぶやいた。


努力もせずに、人気を手に入れるやつがいる。

努力しても報われないやつもいる。


そのどちらにももう興味がなくなっていた。


「打ち上げって結局どこのお店なんですかー?」


「俺は知らない、撤収したら事務所に片付けにいくから、お疲れ様」


俺の目には、実力よりもSNS映えを優先する“アイドルの影”しか映らない。


---


三年前までの俺は、確かに熱を持って働いていた。


運営の方針に噛みつき、社長や上司に食ってかかり、

メンバーには「プロ意識を持て」「トップはそんな甘え方はしない」と叱り飛ばしていた。


今思えば、実績もないくせに、よくあれだけ吠えていたと思う。


——でも、あの日を境に、何かが壊れた。


「だったらもうアイドル辞めたら?」


言ってしまった...

自分が全て正しいと思ってしまっていたのだろう

俺の言葉が響かないことについ苛立ってしまった。


そして注意したメンバーを庇うように、上司も仲間も俺から離れていった。


やがて、そのメンバーだけが人気を集め、華やかに卒業していった。


俺の中の火は音もなく消えた。


それからは、数字と成果だけを追う日々。

メンバーも、もう“人”ではなく、“商品”に見えた。


不思議なことに、俺が熱を失えば失うほど、グループは人気になり

上司や仲間との関係も良くなっていった。


気づけば、心は空っぽで——それが、むしろ楽だった。


---


ライブ後の打ち上げも断り、俺は一人で自宅に戻った。


狭いマンションの1DKの一室。唯一の癒しは、柴犬の茶太郎だけだった。


「ただいま、茶太郎」


尻尾をぶんぶんと振って寄ってくる。

俺の膝の上に座り、撫でろと言わんばかりに背中を向けてくる


その温もりが、唯一“本当の生き物”を感じる瞬間だった。


茶太郎と一緒にソファに寝転び、缶ビールを開けてスマホを見つめる。


ゆきとあいながSNSにあげたライブ写真には、すでに「いいね」が何千もついている。


コメント欄は「最高」「天使」――そんな言葉ばかり。


「俺、何やってんだろな」


気づけば、テレビのニュースでは“戦国時代特集”をやっていた。


--立花道雪--

雷に打たれて下半身不随になりながらも軍を率いた戦国武将。

そしてその娘、立花誾千代と婿・立花宗茂の絆の物語。


“信念を貫いた人たち”


そんなナレーションが流れた瞬間、胸の奥がざわついた。


「信念、か…」


アイドルを支え、数字を追い、スケジュールを詰め、


結局、自分の中に何も残らなかった。


茶太郎がソファの上で丸くなった。


俺には、信念なんてもう残っていない。


ただ流されるまま生きているだけだ。


---


その夜、茶太郎がやけに落ち着かなかった。


カーテンの向こうをじっと見つめ、低く鳴く。


「どうした?」と声をかけたその瞬間、部屋の中でバチッと青白い光が弾けた。


「……え?」


次の瞬間、全身に電撃のような衝撃。


耳鳴りと共に視界が白く染まり、茶太郎の鳴き声が遠のいていく。


---


気がつくと、そこに見えたのは


空は赤く、地平線の向こうで煙が上がっている。

背後で馬のいななきが聞こえた。

手をついた地面は泥だらけ。

泥と血の匂いだった。


手のひらの泥を部屋着のTシャツで拭いながら、息をのむ。


「……ここ、どこだ?」


さっきまでの部屋の床じゃない。


「夢か?」


頬を叩く。痛い。


夢じゃない。


耳を澄ますと、甲冑の音と共に誰かの叫び声が近づいてくる。


「立花勢、押せぇぇぇ!」


――立花?


反射的に顔を上げた。


視界の先に、鎧をまとった武士たちが戦っている。


刀の音、矢の風切り音、そして血の匂い。


完全に、“戦国時代”だった。

最後までご覧いただきありがとうございます。

初投稿なので頻度は低いかもですがいっぱいあげれるように頑張ります。

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