こんなはずでは…勇者の帰還を奪い取り、地球に行くとそこで待っていたのは…
何時ものように、思い付きで書いた作品です。
今作はあえて、全登場人物に名前を付けてません。何となく、その方がいいと感じたからです(決して、手抜きではありません…決して…)。
『ウガァーッ!!』
断末魔をあげて、魔王は絶命、死体は塵となって消えていった。
そして、昼なのに真夜中のように真っ暗闇だった魔王城周辺に、天から光がさし始めた。
「ついに、魔王を…」
勇者と思しき青年が、剣を掲げる。
彼はこの世界に召喚された勇者だ。魔王の脅威に脅かされたこの世界を救って欲しいと、召喚されたのだ。
「うおー!!」
「やったぞー!!」
歓喜する勇者パーティ。凱旋すると、国中の人々に祝福された。
国中でパレードが行われた。主役は勿論、勇者パーティだ。皆に感謝の言葉を浴びせられる勇者。
愛想よく返す勇者。が、その内心では、
「(やっと日本に帰れる…)」
だった。いきなり召喚されて、危険な戦いをさせられたのだから、突然と言えば突然だ。
彼が、地球に帰る為の条件は、魔王を討伐する事のみ。地球に帰ることを目標に、魔王を討伐したのだ。その条件をようやく満たした。これで帰れると、安堵している。本来なら、こんなパレードどうでもよかったが、パレードが終わってから帰還の儀式をすると、王女に言われたので、渋々している。
「(こんなパレードいいから、早く帰りたい…)」
と、心の中でボヤいていた。
これは異世界に召喚され、見事、魔王を討伐し世界を救った彼こと、勇者……
ではなく、
「……」
勇者恨めしそうに、無言で見つめる男が一人。
勇者の後方にいる、この男の話である。
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パレードも終わり、ここは王城。
城下町の方は今もなお、お祭りムード真っ只中だが、王城内はその逆で、静かだった。
「ご苦労だった勇者よ!」
「いいえ、当然の事をしたまでです!(そんな事いいから、早く帰してくれっつーの!いきなりこんな、得体のしれない世界に連れてきやがってよ…)」
王様に対して、本音を押し殺して、爽やかに答える勇者。
「では早速、姫よ!」
「はい、お父様!」
そう言って姫が詠唱すると、何も無かった空間に、ゲートが出現した。
このゲートが、勇者が元いた世界、地球に繋がっているのだ。ここを通れば、地球に帰れる。
「…(ようやく帰れる…早く帰って、やりかけのゲームな続きをしてーよ!後、ポテチにコーラにそれから…)」
爽やかな雰囲気を出してはいるが、内心は結構俗っぽいこの勇者こと青年。地球では冴えないフリーターだった。早くに両親を亡くし、交友範囲も狭い。なので、特に会いたい人もいない。頭の中は、やりかけのゲーム・漫画の続きに、この世界に無い飲食物を求めている。
突然、この世界に召喚され、勝手に勇者に認定された。命懸けで戦うなんて嫌だったが、魔王を倒さない事には帰れないときたものだ。仕方なしに、魔王及び魔王軍との戦いに身を投じた。
大変だったが、それもようやく終わった。魔王を倒し、帰れる時が来た。
王様から謝礼とばかりに、金銀宝石類をたんまり貰ったからそこはまぁ、良しとした。
「では、コレにて…」
そう言ってゲートを潜ろうとした。
その時だった。
ドン!
傍観していた人達の中から、一人の男が飛び出して来て、勇者を突き飛ばした。
「な、何だ!?」
「あ、お前は!?」
「へへへ…」
勇者と共に、魔王討伐の旅をしたメンバーの1人、盾兵の男だった(以下タンク)。
タンクは周囲の人達の静止も聞かず、ゲートに飛び込んで行ってしまった。
「あぁ…」
「ゲートが…」
タンクが潜ると共に、ゲートは閉じて締まった。
ゲートを潜れるのは、この世界に呼び寄せた者の人数分だけ。なので、今回の場合は1人のみ。しかも、互いの世界間のバランスを保つ為、同じ世界に繋げる事は不可なのだ。
その事を姫様が、勇者に説明すると、
「嘘だろ…」
と、顔面蒼白した。
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一方その頃、勇者の帰還を奪ったタンクは、
「やったぜ!勇者のヤローから、帰還を横取りしてやったぜ!」
歓喜するタンク。
このタンク、前から常々、自身の現状に不満を持っていた。
盾役として頑張っても、称賛されるのは勇者や賢者などの花形の役職の者ばかりで、地味な盾役は殆ど注目されない。それでもコレが自分の役割と割り切って頑張って来た。
が、それも遂に限界を迎えた。
そんな時、勇者から彼のいた世界の話を聞いた。地球には魔法こそないが、様々な文明の機器があり、無数の美食に娯楽、そして数多の美女!
それらの話を聞きタンクは、妙案を思い付いた。それが、地球への帰還を奪う事だった。ゲートは召喚された者でなくても通れるらしい。とある文献に、そう書いてあった。
そしてタンクは、チャンスをうかがっていた。勇者が気を緩めたその瞬間に、帰還するのを奪うチャンスを。
結果は成功だった。帰還を奪い取る事に成功した。そしてタンクは今、地球に足を踏み入れた。
地球の都会のある場所にて…
「へぇ~ココが地球か…空気はあまり良くないが…まぁイイだろう!勇者のヤローに変わって、この世界を思う存分、楽しんでやるぜ!!」
タンクは1人大声をあげて叫んだ。
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それから数カ月後、タンクは…
「ほら、モタモタすんな!早く砂袋運べ!」
「ハイ…」
日雇いの仕事をしていたのだった…
何故彼が日雇いの仕事をしているのかというと、単純に金が無かったのだ。
地球でも、生きていくには金がいる。が、異世界から来たタンクは、この世界で使える金をビタ一文持っていなかった。
正確には、異世界で溜め込んだ金を持てるだけ持って来ていた。が、そんなもの、地球では使える訳が無かった。金貨・銀貨なら兎も角、彼の持ち金は全て、価値の低い銅貨・鉄貨だった。換金しようとしたが、足元を見られ二束三文にしかならなかった。
更に彼は、地球に戸籍も住民票は愚か、住所すらもなかった。なので仕事に就こうにも、面接すらもろくに受けれなかった。
結果、彼はこの知り合いの一人もいない世界で、一人ぼっちの宿無しとなった。
そして今は、橋の下で寝泊まりし、日雇いで食いつなぐ毎日だった。当然、美食も娯楽も女も全く無縁だった。
挙句の果て、魔素の関係なのか、異世界では使えた魔法も、コッチでは使えなかった。
タンクの彼は、初級魔法を少々使えた(初級魔法位なら、元の世界では大抵の人が使える)。使えれば何なりと出来たかもしれないが、コッチで使えなければ意味はなかった。
「いただきます…」
そしてその日の夜、その日の仕事の日当で、スーパーの見切り品の弁当を買って、食べていた。
「う、うぅ~…」
食べながら彼は涙を流した。おかずの塩鮭が塩辛かった訳ではない。自身の現状に涙しているのだ。
「こんなはずでは…」
地球での暮らしは、思い描いていたものとは程遠いモノだった。コレなら元の世界の方が良かった。
幾度となく後悔した。
が、どんなに後悔しても、もう遅い。後の祭りだ。全ては自分で蒔いた種。
誰にも文句は言えなかった…
彼は今後も一人さみしく、この地球で生きていくのだった…
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一方その頃、異世界に取り残された勇者は…
「勇者様ー!」
「ははは、どうもどうも!」
歓声をあげる人々に、愛想よく振りまきながら町を歩いていた。
地球に帰れなくなった時は、酷く落胆したが、すぐに吹っ切れた。どうせ地球には、ろくに知り合いもいない。自分がいなくなっても、心配する者もいないだろう。
なので、
「だったらこの世界に骨を埋めよう!」
と、決めたのだった。
召喚されてから魔王討伐までの間に、文明の機器の無いコッチの生活にも慣れた。慣れればこの世界も悪くない。
何よりも、自分はコッチじゃ英雄なのだから。
今はかつての魔王討伐パーティの仲間達と共に、各地を旅して回っている。
むしろコッチの方が刺激的で、充実していた。
「さぁ、次の町に行こうぜ!」
と、言った。
奪った者と奪われた者。
反する者同士だったが、結果的に、その後の生活も又、真逆のものとなったのだった。
終
いざ完成したら、今までのと比べて短く、殆ど中身も無ければ、救いも無いモノに仕上がってしまいました…




