表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(第一部完結!)転生したら合衆国大統領だった件について 〜平社員の常識で、世界を動かしてみた〜  作者: 御手洗弾正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/74

第六十六話:顧客プロファイル (Customer Profile)

【免責事項】

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・事件などは、風刺を目的として創作されたものであり、実在のものとは一切関係ありません。


----------


【残り21時間】


ホワイトボードの前に立つ、俺。

その後ろには、固唾を飲んで、

俺の一挙手一投足を見守る、

アメリカの、最高頭脳たち。


俺は、マーカーを手に取り、

震える手で、ボードの、一番上に、

大きな四角を描いた。


そして、そこに、

今回の、プロジェクト名を、書き込む。


【プロジェクト:潜水艦、見つけまSHOW】


「……閣下」

アシュリーが、小さな声で、耳打ちする。

「……最後の『SHOW』は、おそらく、『SHOWCASE』の、誤りかと……」


「いや、SHOWTIMEの『SHOW』だ」

俺は、きっぱりと言った。

(……まずい、ただの、誤字だ。

だが、もう、後には引けない……!)


俺は、咳払いをして、続けた。

「いいか、諸君。

どんな、困難なプロジェクトも、

楽しむ心を、忘れてはならない。

これは、ショーなんだ。

世界中が、注目する、最高の、ショーだ」


ミリー議長が、

「なるほど……。

我々の士気を、高めるための……」

と、また、勝手に、納得している。


俺は、描いた四角から、

三本の線を、下に、伸ばした。


「このプロジェクトは、

大きく、三つの、フェーズに、分けられる。

フェーズ1:情報収集

フェーズ2:包囲網の形成

フェーズ3:交渉と、無力化

だ」


完璧な、WBS(作業分解構成図)の、始まりだ。

会社で、いつもやっていた、やり方だ。


俺は、フェーズ1の「情報収集」から、

さらに、線を伸ばした。


「さて、ここからが、本題だ。

タスク1.1、情報収集。

具体的に、どうやって、潜水艦の情報を、集める?

アイデアを、出してくれ。

ブレインストーミングだ」


シーン……。

PEOCが、静まり返る。

将軍も、長官も、顔を見合わせるばかりだ。


「……おい」

俺は、苛立った。

「会議で、黙っているのは、

そこに、いないのと、同じだぞ!

何か、発言しろ!」


俺の、体育会系の、部長のような、一喝に、

海軍の、提督らしき、老人が、

おずおずと、手を挙げた。


「……か、閣下。

通常、潜水艦の探知には、

P-8哨戒機による、ソノブイの投下や、

衛星からの、磁気探知、

あるいは、敵国内の、協力者ヒューミントからの、

情報などを、利用しますが……」


「よし!」

俺は、その言葉を、ホワイトボードに、書きなぐった。


ソナー → 市場調査


衛星 → ビッグデータ解析


協力者 → 顧客への、直接、ヒアリング


「……完璧だ。

市場調査と、データ解析は、すぐに、始めろ。

だが、一番、重要なのは、

この、『顧客ヒアリング』だ」


俺は、振り返った。


「今回の、我々の、一番の『お客様』は、誰だね?

イワノフ大統領か?

違うな。

現場で、実際に、商品(核ミサイル)を、

動かしている、潜水艦の、艦長だ」


俺は、ホワイトボードに、

新しい、項目を、書き加えた。


【最重要タスク:顧客プロファイルの作成】


「この、艦長の、ことを、徹底的に、調べるんだ。

彼は、どんな人間だ?

年齢は? 家族は?

好きな食べ物は、何だ?

趣味は、ゴルフか? 釣りか?

最近、どんなことで、悩んでいる?

彼の、『真のニーズ』を、探るんだ!」


俺の、あまりに、突飛な、

営業マンのような、指示に、

PEOCの全員が、完全に、固まっていた。


だが、その、静寂を、破ったのは、

これまで、黙って、俺の会議の進め方を、

観察していた、「司書」の、声だった。


「……面白い」

彼女は、立ち上がると、俺のホワイトボードの、

「顧客プロファイル」の文字を、指さした。


「……その、視点は、なかった。

我々は、イワノフという、『王』ばかりを見ていた。

だが、実際に、駒を動かすのは、

現場の、『兵士』だ」


彼女は、レオに向かって、言った。

「レオ。聞こえているね?」

『……ああ』


「イワノフのような、完璧な支配者が、

このような、重要な任務を、

ただの、狂信者に、任せると思うかね?」

『……いや。ありえねえ』


「そうだ」司書は、断言した。

「彼が、選ぶのは、

最も、忠実で、

最も、冷静で、

そして、最も、『弱み』のある、人間だ。

家族、病気、あるいは、隠された、スキャンダル……。

イワノフが、確実に、コントロールできる、何かを、

持っている、人間に、違いない」


レオの、キーボードを叩く音が、

PEOCに、響き渡った。

彼の目が、再び、狩人の、目に、変わっていた。


『……分かった。

探すものが、見えた。

ロシア海軍の、全将校の、個人ファイルを、洗う。

潜水艦を、探すんじゃない。

『完璧すぎる、艦長』を、探すんだ』


俺が、ただ、営業の基本に立ち返っただけの、

その、一言。


「お客様のことを、知ろう」。


その、あまりに、平凡な、ビジネスの、常識が、

絶望的だった、プロジェクトに、

再び、光を、灯そうとしていた。

ありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク・評価などいただけますと幸いです。

最新話は本日の20時10分更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ