3話「ココロの傷」
ちょっと話にぐたりが出てきてしまってますが、暖かい目で読んでくださると幸いです。
ルリナさんの提案により、俺たちは宮殿から少し離れた街にあるギルドにやってきていた。
「うわぁー、なんか賑わってるね」
「ギルドですから。」
「そういえば、ギルドってなにをする場所なの?」
ルリナさん曰く、仲間を集めるために来たらしいが、周りを見渡すとお酒を飲んで騒いでる人達しか目に入らない。
「ギルドはクエストを受けるための手続きや仲間を探している冒険者たちの交流の場です」
「交流の場って……あれ?」
まさかとは思い、お酒を飲み騒いでいる人達の方を指差しながらルリナさんへ問う。
「交流の仕方は様々ですから……」
呆れたようにルリナさんは言った。
「まぁ、あそこはそこそこレベルの高い冒険者たちの集まりなので、私たちルーキーはあちらで仲間を探しましょう」
「わかった!」
ルリナさんの提案を快く受け入れ、奥のルーキークラスの冒険者が集まるロビーへと向かう。
「あれは魔法使い?こっちは騎士!」
「あまりはしゃがないでください」
「すみません……」
色んな職業の人を見渡し、興奮する俺をルリナさんは冷静に宥める。
「あれ?そういえば……勇者が居なくない?」
「勇者は人間界から召喚されたものにしか与えられない職業ですから。」
「へぇ〜」
「……あんま理解してませんよね?」
「まぁ……」
「はぁ……」
「つまり……あなたは特別ってことです。」
《特別》か。悪くないかも……。
「まずは仲間を募集している冒険者を探しましょう。」
「仲間ねぇ〜」
とりあえず、周りを見渡して見ると、1人の紫髪のツインテールをした魔法使いの女の子が目に入る。
「ツインテール……」
その子を見ながら呟くと、俺の視線に気づいた魔法使いの女の子が近寄ってくる。
「あなた……今は私と他の女の子を重ねましたよね?」
「へっ……?」
いきなりの発言にキョトンとしてしまう。
「失礼しました。私はココロ。魔法使いをやっています。」
「あ、ご丁寧にどうも。俺は……」
「初めまして。新人冒険者のルリナ・ファームズと申します。ファンタジアの宮殿でメイドをしています。」
俺が名乗ろうとしたのを遮ってルリナさんが会話に割り込んでくる。
「なんと!王女様に使える宮殿の方がなぜこんなところへ?」
「それは……こちらの方が原因です。」
「初めまして。炭田酸って言います……」
「ん?変わった名前ですね」
「彼は人間界から召喚された勇者ですので」
「あぁ〜、勇者……ってえぇぇぇぇぇぇ?!」
ルリナさんが思ったよりサラッと僕のことを紹介するとココロさんはあまりの衝撃にギルド中に響く程の大声で驚愕した。
「あなたが……勇者様なんですか?」
「まぁ…一応」
「良かったら、パーティを組んで頂けないでしょうか?」
「勇者様の御一行になれるなんて光栄すぎます!ぜひご一緒させてください!」
ココロさんはルリナさんの急な要求を思ったよりもすんなりと受け入れてくれた。
「お二人はどこを目指して冒険をするのですか?」
「魔王軍に支配された区域……ここから一番近いところですとシティア・パークルですね」
ルリナさんの口から聞きなれない街の名前が出てくる。
「やはり…魔王軍を討伐するのが目的ですか……シティア・パークルなら近道を知ってますよ!」
「あ、あの…シティア・パークルって……」
「少しお静かに…案内お願い出来ますか?」
「任せてくだい!」
ルリナさんは俺の扱いが雑すぎる……。まぁ、そんなこんなで新たに魔法使いのココロさんを迎え入れ、俺たち勇者パーティは魔王軍に支配された街、【シティア・パークル】を目指し進み出した__。
【ファンタジア グランドロード区域】
ファンタジアの中心部を抜けたすぐそこには自然豊かな道のりが続いていた。異世界は変身アイテムはあってもタクシーや電車などの乗り物はない。つまり歩くしかない。
「ねぇ!ねぇ!勇者様!そういえばさっき私の事見ながら他の女の子のこと考えてましたよね?」
必死になりながらルリナさんの後を歩く俺にココロさんが目を輝かせながら聞いてくる。
「ん?ま、まぁ…というかなんでわかったの?」
「私…心が読めるので!」
とドヤ顔でココロさんが説明する。
「それがあなたのスキルですか。」
「はい!ですが…ルリナさんはいまいち読めませんね……」
心が読めるなんてプライバシーの侵害だ。
「……悪かったですね…プライバシーの侵害で!」
「あっ……」
僕の心を読んだココロさんは頬を膨らませ拗ねてしまった…。
「サイテー」
ルリナさんが棒読みで水を差してくる。
「うるさいよ!ごめんね、ココロさん。そんなに怒らないで?」
「私だって、好きで心読んでるじゃありませんよーだ!」
ぷんすか怒るココロさんを見ると、何故か懐かしい気持ちになって微笑んでしまう。
「……なに笑ってるんですか」
「え?いや、やっぱり似てるなって思って…そうやって怒ってるところとか特にさ…」
人間界にいた頃、まだシュワライザーの撮影中の頃、同じ演者の中で俺の事を慕ってくれていた女の子のことを思い出す。
「……花音。」
気づいたら俺はその女の子の名前を呟き、ココロさんの頭を撫でていた。
「あ、あの……」
「え?!あッ、ご、ごめん!つい…」
「い、いえ…///良かったら私の事もココロって呼んでください……」
不思議とココロさんは嫌がることなく、寧ろどこか嬉しそうな表情で顔を真っ赤に染め、胸を両手で抑えていた。
「……あの。イチャイチャタイムは終わりました?」
「え?!あ、ごめんなさい…?」
「はぁ……初対面の女の子の頭をいきなり撫でるなんて考えられません。」
ルリナさんに鋭い目つきで批難される。
「うぅ……反省してます」
「御二人はいつ頃から一緒に冒険してるんですか?」
「今日です。」
「え?」
「今日、パーティを組んで今日はじめて一緒に冒険してます」
「……なのにルリナさん嫉妬してるんですか?」
「は、はぁ?!…///」
「ココロちゃん…?どういうこと?」
「いえ、さっき私と勇者様がイチャイチャしてた時にルリナさんの心から嫉妬のようなものを感じたので…」
「何言ってるんですか!馬鹿ですか!私がこんな出会って数秒のしかも見るからに年下の女の子の頭をいきなり撫でるような無神経な男に嫉妬なんてするわけないじゃないですか!」
こ、心が痛い……。ルリナさんのマシンガンのような俺への侮辱はグサグサと心に刺さってくる。
「なら、私が勇者様とイチャイチャしてても文句ないですよね♡」
ココロちゃんはルリナさんを挑発するようにイタズラな笑みを浮かべ、俺の腕に抱きついてくる。
「……勝手にしてください」
「えへへ〜♡」
もう…なにがなんだか。そんなごちゃごちゃとしたらやり取りをしていたら目的の街【シティア・パークル】が見えてくる。
「あれが…シティア・パークル?」
「そうですけど、様子が変です!」
ココロちゃんの言う通り、シティア・パークルは街全体が黒い煙で覆われていて、誰も寄せ付けないような禍々しい雰囲気を放っていた。
「とにかく街の中に…」
「無理です。」
「え?」
「魔王軍に支配された街や区域には感情なバリケードが張られています。外部からの侵入は不可能でしょう。」
「じゃあ…どうすれば…」
「勇者様!あれ!」
ココロちゃんが俺を呼び、街の方へ指を指す。その先にはさっき戦った魔王軍の魔物とは異なる種族の魔物の立ちが立ちはだかっていた。
「早速か……」
俺は腰に携えた、シュワトリガーとポッケに入れていたソーダメダルを取りだし、構える。
「勇者様!ここは私が…!」
「あぁ…大丈夫!気持ちは嬉しいけど、ココロちゃんはサポートに回ってくれる?」
「え?」
「ソーダメダル!セット!」
【プッシュ!】
「炭酸武装!」
変身の掛け声と共にシュワトリガーの引き金を引いた俺は赤いソーダを纏い、シュワライザーへと変身する。
「ゆ、勇者様…?」
「説明は後です。」
「は、はぁ…」
困惑しているココロちゃんを横目に迫り来る魔王軍の魔物達ににシュワトリガーの弾丸を放つ。弾丸は当たってはいるもののダメージは喰らっていない。
「だったらこっちだ!オレンジソードメダルセット!」
メダルを付け替え、ソーダモードへと切り替え、近づいてくる魔物達に斬り掛かる。
★☆★☆
「なんですか……あれは」
「シュワライザーという戦士です。彼の世界でのヒーロー…だそうです」
「ヒーロー……キュンキュンしちゃいます!」
「そうですか……」
★☆★☆
「ぐっ……」
前の敵とは別種族ということもあり押されてしまう……。
「こうなったら…突っ切るしか…」
【ファイルプッシュ!】
一気に終わるためにトリガーを長押しして必殺技を発動する。
【オレンジスパニッシュ!】
「はぁぁぁ!」
オレンジソードに集約されたエネルギーを振りかざし、魔物達を一双していく。オレンジスパニッシュを喰らった複数の魔物が爆散した直後に空中から攻撃を受ける。
「痛っ!飛べるのもいんのかよ…」
攻撃を喰らった方を見上げると、禍々しい翼を背中から生やした見慣れない魔物がいた。
俺はオレンジソードメダルを取り外してシュワトリガーを通常の銃モードへと戻し、飛び回る魔物に弾丸を飛ばず。飛び回っているため狙いが定まらず、銃弾は全て回避された上に逆に反撃をくらってしまう。
「くそっ!ちょこまかと……こうなったら一か八かだ!」
【ファイルプッシュ】
再びトリガーを長押しし、シュワトリガーの銃口にエネルギーを集約させ、赤い巨大なエネルギー弾を生成する。曖昧な分析ではあるが、これまでの行動からするにあの飛ぶ魔物は攻撃をする時だけは動きを止める……。
「今だ!」
魔物が反撃を開始した瞬間にエネルギー弾を撃ち放つ。
【レッドソーダバスター!】
突然の反撃に戸惑い、動きを止めた魔物はそのまま必殺技を喰らって空中で爆散して行った__。
★☆★☆
「やりましたね!勇者様!かっこよかったです!」
「ココロちゃん…」
ルリナさんとは打って変わって、俺の活躍を絶賛してくれるココロちゃんに感動を覚え、近づことした時だった。
「………勇者が来たって言うからどんなもんかと思ったら結構変わってんな〜」
バリアで覆われたシティア・パークルの前に「?マーク」がデザインされたマスクを身につけた魔道士のような怪人が宙を浮いて現れた。
「何者だ!」
「オレは魔王軍侵略隊長ミステリアス。このシティア・パークルを支配してるものさ」
「お前が……今すぐバリアを解除しろ!」
「誰がお前なんかの命令に従うかよ」
「だったら…力ずくで解除させる!」
ヘラヘラとするミステリアスをシュワトリガーで攻撃するも、全て回避される。
「お前じゃ無理だ…!」
ミステリアスはすぐさま俺の背後にワープし、耳元で挑発してくる。
「ふざけんなっ!」
【オレンジソード!】
オレンジソードモードで斬り掛かるもミステリアスには当たらない…。
「どうしてっ?!確かに当たったのに…」
「だから…お前にな無理なんだよ」
「ぐはっ…!」
ミステリアスの魔法を喰らい、吹き飛ばされる。
「それにお前には…仲間がいるからな……」
そう言ってミステリアスは杖をココロちゃんに向け、電撃魔法を放った。
俺は力強くジャンプし、ココロちゃんを庇って電撃魔法を受け止める。
「勇者様っ!」
攻撃を喰らった俺をココロちゃんが心配そうに駆け寄ってきてくれる。
「ハハッ!終わりだなぁ…!勇者くん…」
余裕ぶっていて不気味なミステリアスの声に酷く不快感を覚える……。
「クソっ……」
「……撤退しましょう」
「え?」
ルリナさんはいつものように冷静に指示し、俺の持つシュワトリガーに見慣れないメダルを装填する。
【プッシュワープ!】
新たな音声と共にワープゲートが開き、俺たちは撤退に成功する。
「……逃げたか。」
★☆★☆
ルリナさんが使用したメダルによって危機を逃れた俺たちは宮殿に逃げ込んでいた。
「ごめんなさい。勇者様…私が油断していたせいで……」
「ココロちゃんは悪くないよ…だから自分を責めないで……」
不安で表情を曇らせ、俯くココロちゃんの頭を撫でながら慰める。
「ルリナさんもありがとう。ほんとに助かったよ」
「お礼は必要ありません。このままではシティア・パークルは完全に魔王軍の手に渡ってしまいます……。」
「使おう……。シュワライザーのもうひとつの力。」
この小説に使ってるヒロインのイラストは全部、AIを使って生成しているので、場面によってルリナちゃんと特にココロちゃんの見た目が変わっちゃいますが、イラストはあくまでイメージとして楽しんでください。今回も感想お待ちしております