ゆいこのトライアングルレッスンU2~約束~
『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』のコーナー『ゆいこのトライアングルレッスンU2』(ユニフォームがテーマ(第二回))に応募した作品です。
ゆいこ・たくみ・ひろしの原案者は巽悠衣子さんです。
俺は『結婚指輪』を渡した。
純白のウェディングドレスを身にまとうゆいこは「ありがとう」と、白い花が咲くように笑った。
◇
「うっし。作りますか」
黒シャツに黒いエプロンを結び、袖をまくる。
彫金作業台へ向かいプラチナを金槌で叩いて硬くしていく。
カンカンカンカンと鍛造の音だけが響く工房で、俺は深く、低く、息を吐いた——
木槌に持ち替え、幅3mm厚さ2mmになった角形のプラチナを丸棒に沿わせて形を整えていく。
『わぁ! ゆびわだ!』
なつかしい声が鮮明に浮かんだ。
◆
『やるよ』
『ありがとうたくみ!』
『ん』
『かわいいねぇ』
白い花の茎を輪っかにした「ゆびわ」を、ゆいこは手のひらで包み込み、せわしく見た。
『このお花の名前なんだっけ』
『さぁ?』
『ひろしに聞きにいこ!』
『「シロツメクサ」だね』
木陰に座っていたひろしが、読んでいた本をぱたんと閉じてゆいこに笑いかける。
『おいで』
ひろしはゆいこの薬指に「ゆびわ」をはめた。
『花かんむりも作ろうか』
手をつないだひろしとゆいこが「シロツメクサ」の草原に向かう。前を行くふたりが、まるで本の表紙みたいで——俺の足は止まってしまった。
三日後に会ったゆいこは元気がなかった。
『お花しおれちゃったの』
『また作ってやるよ』
ゆいこは首を横に振る。
『いい。枯れちゃうもん』
『じゃあ、いつかホンモノの指輪渡す』
『ホンモノ?』
『うん。枯れないやつ』
『ずっと?』
『ずっと』
◆
好きだったよ。ずっと。
俺は、指輪に触れないキスをした。
「バイバイ」
——トトトトトトトト
「このっ! 絶対に幸せにならないと許さないんだからな! 永遠に幸せでいろ! ケンカしてもすぐ仲直り!! し!! ろ!!」
共付けして真円になったプラチナの側面を金槌で打ちつけ、槌目を幾重にも重ねる。
ふたりからの信頼に、彫金師の俺だからこそ応えられる最高の指輪。生涯枯れずに身につけられる『幸せのお守り』だ。
◇
「ありがとな、たくみ」
『結婚指輪』を受け取ったひろしが「感無量だ」って嬉し泣きしやがるから、俺はこいつの白いタキシード――左胸に挿したシロツメクサのブートニアのそばに、握ったこぶしを押し当ててニカッと笑った。
「おう。頼んだぜ、新郎」
お読みいただき誠にありがとうございます!
今回ビターな味が読みたくて挑戦してみました。
いかがでしたでしょうか?
今年の放送はバレンタインデー当日でしたね!!U2もとっても楽しかったー!!
なろうでのトライアングル交流会も驚く作品に出会えたり、ドキドキワクワクの続きが読めたりめっちゃ楽しいです!
寒い冬に甘い安らぎをありがとうございます!!
(2021年2月26日放送の『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』にて、ご自由にとのことでしたので投稿しました。
もしも投稿の仕方に問題がありましたら、すぐにお知らせください。よろしくお願いします。)