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重なる記憶と依頼完了

アレイさんの独白を聞いた後ミレさんに火の当番を交代し

私とアレイさんはテントで眠りについていた。

「皆起きて!ジャイアントデスストーカーよ!」あれから数時間後だろうかミレさんの警告に私とアレイさんは目を覚ます。

「そいつは素早いぞ!気をつけろ!」アレイさんは体を起こし鎧をつけながら叫ぶ。

「今出たらダメ!」ミレさんは叫んだが。私たちはテントから出たところだった。

4Mほどの体長だろうか、テントのすぐ横に、そいつはいた。

私は詠唱を始める「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムバインド!」

無数の闇のリングが大きなサソリの動きを止める。

「素早いなら止めてしまえばいいのです。弱点はあるんですか?ふぁ…」私は、あくびをしながら暢気に近づいた。

「近づいてはいけない!」アレイさんは叫んだ。

その声にビクッとなった瞬間、霧のようなものが私に降りかかる。

「あ…ぐ…」全身の力が抜け、その場に倒れ込む。やわらかい砂地だったのは幸いだ。

アレイさんは私を小脇に抱えサソリから距離をとる。

「ミレッ!」アレイさんは叫ぶと。

「わかってるわっ!気高き炎の精霊イフリートよ…我が契約に応え全てを焼き尽くせ!イグニスオールト!」

焚火の火が揺れる。

青白い火球がサソリに当たり瞬く間に消し炭となった。

「あ…が…あ…」喉の筋肉も弛緩し声が出ない。息もできない。

わかった、これは神経毒だ。あぁダメだこれは死んじゃうな…そう思った。

「神よ、我ら忠実なる羊に神の御慈悲を!キリエエレイソン!」アレイさんが詠唱を終えると

窒息寸前だった私に呼吸が戻った。息ができる。解毒?

「ごえん…な…さい…」まだ上手く発音できないが、ちゃんと言葉が出た。

「リーダーの命令は絶対だ!」私はアレイさんの膝の上に頭がのっかっていた。

しずくが顔に落ちてくる。雨?砂漠でありえない。

見上げるとアレイさんは顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

「もう…俺の前で…死ぬのはやめてくれ…。」

アレイさんの涙がぽたぽた顔に落ちてくる。

先ほどの独白が頭をよぎる。

「ぁ…ぃ…」まだしっかりとした発音ができないまま私は答えた。

ミレさんは離れた場所から無言のまま複雑な表情でこちらを見ていた。

想いはまた同じなのだろう。

この人たちは、可哀そうな人たちだ。私はそう…思った。

(時間経過)

準備はまだ暗いうちから始まった。二人はいそいそと出発の準備をしている。

私は『動いてはいけない』というリーダー命令で動くことは許されなかった。

火のついている、たき火のそばで私は言われるままに体を温めていた。

最後に分けておいてあった火の消えた木炭を数個持ったところで準備は完了していた。

「背中に乗って。」アレイさんが私に言った。

砂漠で人を背負って歩くなんて、そんなのは負担が大きすぎるし。恥ずかしい。

私は12歳のレディーなのだ。それと、人とくっつくのも…やっぱり苦手なのだ。

「いえ、随分よくなりましたし、歩けます。」

間髪入れずにアレイさんは私をたしなめる。

「ダメだ。これはリーダー命令だ。」

リーダー命令なら仕方がない。無言で私はアレイさんの背におぶさり、両手を首筋に回してつかまった。

男の人の匂いがした。

「よし行くか。」アレイさんが言うとラクダの手綱を引いた。

「はい。」私たちは返事をした。

ある程度進む毎にミレさんは位置確認の為に雨降らしの魔法を唱えた。

なんか、むにょむにょした海の生物が頭に浮かんだ。

「優雅なるウンディーネよ…我が契約に応え恵みを与えたまえアクエレイン」

昨日まで湯気だった筋に沿って雨が降り始めていた。

「そろそろ視認できるかしら。」そう言ってミレさんは、その方向をじっと見つめると

「遠く。遠くに、葉のついた木が見えるわ!オアシスが見えるわよ。」

「おぉ!」「わぁ!」私とアレイさんは口にした。

「ひと踏ん張りだね。行こう!」ラクダの手綱を引きながらアレイさんは言った。

おぶさっている私にも、アレイさんの足取りが軽くなったのがわかった。

(時間経過)

「意外と遠いわね…」ラクダにくくりつけられていた水袋を外し手に取りごくごく飲みながら

ミレさんは言った。

「おいおい、帰り道もあるんだから、あんまりごくごく飲まないでくれないかな?」そう言いながら

アレイさんも同様に水をごくごく飲んでいた。まさにDD論。どっちもどっちだ。

私はおぶさられているためアレイさんの仰け反った後頭部に顎を押され私も仰け反っていた。ちょっと苦しい。

「そ…その心配はいらないですよ。」私が言うと。

「え?」驚いた顔をして二人は顔をこちらに向けた。

「す…すみませんアレイさん顔近いです。あ…あと仰け反るの辞めてもらいたいです。」私が言うと。

「あ、あぁ、ごめんね。」そう言うと水袋の紐を結びながらアレイさんは元の体勢に戻った。私は楽になった。

「えっとですね、闇魔法のBランクに帰還の魔法があるのです。

行った事のない所とエーテルの流れが薄い所は無理なのですけれど

条件を満たしていれば魔法陣を介して空間をつなげることができるんです

いつもの町は条件を満たしているのでつなげる事ができます。」私は説明をした。

「すごいわね!」「すごいじゃないか!」二人は若干ハモっていた。

「帰りの事を思うと、ちょっと気が重かったけど。」「これなら楽できちゃうわね♪」二人は言った。

(時間経過)

「到着ね♪」「うおー!」ミレさんは言い、アレイさんは吠えていた。

アレイさんは万歳を広げた状態で仰け反っていたので、また圧迫される。

「ア…アレイさん、苦しいです。」

「あっ、ごめんごめん」すぐに元の姿勢に戻ってくれた。

「そろそろ降りてもいいですか?」私は聞くと。

「OK降りていいよ」そう言ってアレイさんは屈んでくれた。

「う…うぅーーーーー」私は手を上に伸びをした。おぶさるのも意外としんどい。

アメイリアの木は一見して分かった。というかその木しか生えていなかった。

アメイリアの果実5個。見たところ10個ほど実がなっている。

「あの…提案があるのですが。」私が言うと二人はこちらを見た。

「見たところ10個ありますので全部取っていきませんか?

ひょっとしたら、収集なら、また新たに依頼が出ているかもしれませんし。」

私の推測というか感はそこそこ当たる。

「そうだね、私たちには多くて害があるわけじゃないし

リーフ君の言うとおりだったら、儲けものだ!」そう言うとアレイさんはサムズアップをした。

私は背伸びしても届くかどうかだったので、低い木はミレさん高い木はアレイさんが丁寧に果実を摘み取った。

丁寧につぶれないようバックパックにしまっている。

それではお二人とも集まってください。アレイさんはラクダを引いてきた。

「一番外側の魔法陣の円が効果範囲となりますので、中に入ってくださいね。」

2人とラクダは私に近寄った。私は神経を集中させ目を伏せる。杖で2回砂地を叩く。

そして魔法陣の紋様を精密に頭に浮かべる。

「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、万物の理を曲げここに顕現せよ!ブリッジオブローゼン!」

黒い光が内側から順に魔法陣を繊細に描き出す。完成したのを感じ取り

うっすら目を開け皆が魔法陣内にいるのを確認。よし。

「テネブラールム!」

次の瞬間、3人とも町の入り口に立っていた。2人は呆然としている。

「…すごいなこれ本当にBランク魔法なのか?。」「闇魔術って奥が深いのね…」二人とも驚き半分関心半分で周りを見渡す。

私は杖で1回コンと地面を叩き「できました。」と言った。

2人は「すごいすごい!」「すごいわ!すごいわ!」そう言って

アレイさんは私の髪を乱暴にくしゃくしゃしてきて、ミレさんは顔を押しつぶす勢いで撫でてきた。

ひとしきり二人は私を愛で続け、満足した後伸びをしていた。

「私はラクダを返しに行くよ。二人は報酬受け取りと、再度依頼がないか探して欲しい」

そう言うとミレさんに戦利品の入ったバックパックを渡しラクダを連れアレイさんは馬小屋の方へ行った。

私たちはまず追加依頼がないか掲示板を確認しに行った。

「あったわ!同じ依頼、報酬も同じ。多分同じ人で追加が欲しかったのかもね♪」

ミレさんは俊足で依頼書を剥がし持ってきた。

一緒にギルドへと戻る。そこへ、アレイさんは、おっとり刀で駆け付けてきた。

「アレイあったわよ同じ依頼。リーフちゃんはすごいわね♪」

片手でくしゃくしゃだった私の頭を手櫛するかのように撫でながら

もう片方の手で新たな依頼書をひらひらさせつつミレさんは言った。

「ついてるね!」アレイさんが言うと「じゃあ後はお願いね。」依頼書とバックパックをアレイさんに手渡す。

「よし、早速もらってくるよ。二人は待合室で待ってて」アレイさんは言った。

「OK♪」「わかりました。」共に返事をした。

アレイさんは待合室に来ると金貨を16枚ずつ三つに分けて置いた。

「合計48枚だから1人あたり16枚ね。いやーいいね得した気分だよー。」

そう言いながらアレイさんはバックパックに金貨を入れる

「ふふふ♪」「いただきます。」ミレさんは微笑みながら、私はお辞儀をしてバックパックに金貨を入れた。

「それじゃみんなお疲れ様。次は、んー1週間後でどうかな?今回実入りもよかったし。」

ウインクしながら人差し指を立てアレイさんは言った。

「異存はないわ。」「私もです。」アレイさんの問いに二人で答えた。

「解散!また1週間後!」アレイさんは言った。「OK♪」「はい。」私たちは返事をした。

「お疲れさまでした。」ぺこりと頭を下げ、宿へ向かう。

ローブの匂いを嗅いでみる『くんくん』…くさい。

宿屋に戻ると、すぐに部屋に向かいシャワーを浴びローブを洗った。

浴室には、いい香りが充満する。そこで私はやっと、ほっとした。

浴室から出ると洗いたてのローブを干した。

ベッドに寝転がっていたら、そのまま寝ていた。

翌朝。乾かして寝なかった髪はぼさぼさだった。

冒険者は敵を目の前にして油断してはいけない(戒め)

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