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おじいさんと私と蘇生術

装備を新調し翌日、休日のリーフが向かった先は?

強くなるまで、冒険者に休みはないのだ。

次の日、古本屋にリーフはいた。熱心に治癒術書を読んでいる。

昨日の買い物で財布の中身は雀の涙だったので立ち読みをしていた。

店主は小さな丸眼鏡をかけた、おじいさんだ。

リーフは以前から魔術書の類をよく購入しているお得意さんの為

長時間立ち読みをしていても、特段注意されること等はなかった。

おじいさんはチラと熱心に読んでいるリーフの手元の表紙を見た。

『Aランク治癒術書。』と書いてある。

おじいさんは少し目を細めると口元が少し緩んだ。

『もう、そんなところまで行ったんだねぇ。』心の内で呟くと

眼鏡のブリッジを人差し指でクイと上げ目を伏せた。

リーフは2年前に初めて来た時はEランク魔術書を買いに来ていた。

その時の事が頭をよぎったのだ。

--------

『蘇生術リザレクション。』Aランク治癒術士が1つの登竜門と言われるのは

この複雑な蘇生術について詳しく知る事と、現場での蘇生を可能とするからだ。

魂のありかは特別な事でもない限り、肉体と共にある。

つまり必要とされる状況は現場で、蘇生率が一番高いのだ。

魂と肉体、世界に満ちているエーテルの流れ、様々な条件下で

蘇生可能か不可能か学びを納めておかねばならない。

何故ならば魂の存続が絶対の第一条件であり、間違った蘇生を試みれば

例え魂が肉体にとどまっていたとしても、その魂は、その時点で永遠に失われる。

その為パーティー募集でも治癒術士はAランクからの募集が圧倒的なのだ。

私は何としても早くAランク治癒術士にならなければならない。二人の為にも。

その一心で、私は今日、朝から立ち読みをしている。手段は選んでいられないのだ。

挿絵(By みてみん)

後ろめたさから、たまに、おじいさんの方をチラとみると

目が合う、でも、おじいさんは眼をしょぼしょぼさせ寝たふりをしてくれる。

私は冷や汗が出る。申し訳なさ過ぎて。それでも集中して読み込んだ。

日も落ちてくる頃、私は本を棚に戻しておじいさんの方を見た。

「また、おいで。待ってるからね。」おじいさんは優しく微笑み

私に向かって、ゆらゆらと手を振っていた。

また冷や汗が噴出した。極めて申し訳ないのだ。

深々と頭を下げて、急いで古本屋から飛び出した。

この町は不思議だ。皆私に興味を持ってくれるし、優しくしてくれる。

孤児院を脱走する前の私は、誰からも相手にされず

私も誰かを必要としていなかったので、食事をとり本を読み知識を得る事だけが

神さまから与えられた唯一の作業だった。

何故だろう、何が違うんだろう。

ぼんやりとしながら考えていると、宿屋についていた。

酒場へと移り変わる1Fの食堂で夕食を済ませ部屋へと戻る。

ナイトルーティーンをこなし、読み慣れたBランク魔術書に目を通しながら

頭の中では、私はなぜ生きているのだろう?

皆も何故、何が目的で何の為に生きているのだろう?

思考は魔術ではなく、そちらへ引っ張られていった。

魔術書を閉じベッドにバフンとダイブしながら、自問自答を続けた。

答えは出ぬまま…いつの間にか私は寝ていた。

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