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冒険者のお買い物

昨日『銀翼の羽』PTで初の依頼をこなしたリーフは

今までとは違った強い魔物と対峙し魔力を消費していた

泥のように眠り朝が来る。

体がだるい…朝いつもの時間に眠りから覚めると体が重い。

いつもなら目が覚めれば、すっと起きれるのに、だるくて起き上がる気がしない。

昨日慣れないレベルの魔力を使ったからか

初ダンジョンでとても緊張したからか。

どうせ今日は休みなのだ。私は二度寝を堪能することにした。

(時間経過)

「ふぁ…」上半身を起こし両腕を万歳するように伸びをする。

「うん、悪くない。」そう呟きベッドから起き上がると

まもなく昼頃という時間だった。

『ちょっと出遅れてしまったかな』そう思ったのは今日買い物をしようと思っていたから。

貯めておいた分と昨日の分あわせて金貨25枚、あとはコツコツ貯めた銅貨が沢山

軍資金は十分だ。起きがけのルーティーンをこなし

ローブを羽織って部屋から出て1Fへ降りる。

昼は食堂、夜は酒場のカウンターに向かう。今は食堂だ。

「すみません、さかさ豆のグリーンスープをお願いします。」

食堂のおば…いや、おねぇさんに注文をした。「量はいつも通りでいいかい?」

「はい、そうしてください。」私は席に着いた。

「はーいお待たせ、さかさ豆のグリーンスープ。」コトリとテーブルに置かれた。

作り置きなので温めるだけで、すぐに出てくる。

「どうしたの?今日は遅かったねぇ体調でも悪いのかい?」

食堂のおば…おねぇさんが聞いてくる。

「いえ、少し疲れていただけです。」そしていつもの営業スマイルだ。

「あらあらー無理はダメよ!」最早2年の付き合いになるのだが

めんどくさい。気にかけてもらえるのはありがたいのだけど。

このおば…おねぇさんは話が長いのだ。

「いつもありがとうございます。」私は、そう言うと銅貨一枚をテーブルに置いた。

おねぇさんは銅貨を受け取り何かぶつぶつ言いながらカウンターに戻っていった。

私は神に感謝を述べスープを完食した。

ついでなので一週間分の宿賃銅貨15枚を受付で支払った。

「いつもありがとうございます。」宿屋受付カウンターのおねぇさんはとびきりの笑顔で答えた。

私は知っている。これは手練れの作り笑顔。おねぇさんはプロなのだ。

私は、ぺこりと頭を下げると入り口を出て街へ出た。

「お嬢ちゃん!どうだい掘り出し物のマジックアイテム入ってるよ!」

宿屋の前の露天商のおじさんだ。いつもなら無視するところだけれど

私の今日の目当ては『銀翼の羽』で足手まといにならないための装備なのだ。

「掘り出し物って何でしょうか?」

私が初めて反応したので、おじさんは驚きつつも

「お嬢ちゃん何かの職業やってる冒険者かい?」と聞いてきた。

「魔法系です。魔術と治癒系の。」と私。

「ふむふむ、いい杖とローブがあるけど見てみるかね?」

「はい。」とぶっきらぼうに答えた。買い物にワクワク感がないわけではない。

けれど、よく知らない人の前で感情を出すのは苦手なのだ。

「これ、先ず杖ね、しかもお嬢ちゃん向き!なんと魔術効果20%アップと

光属性、治癒だね、効果30%アップ!ちょっと値は張るけど

なかなか手に入らないいい品だよ!金貨15枚!」目の前に置いたと思うと畳みかけるようにローブも出してきた。

「これはね鎧には劣るが物理抵抗のあるローブで当然魔法防御も10%上がる!金貨10枚!

しめて金貨25枚ってところだね!お買い得だよ!ここで買わないと即売れするレア商品だからね!」

怪しい。必要以上に購買意欲を謳う商人は信用ならない。

「手に取ってみてよ、お嬢ちゃん!」

取り合えず手に取ってみる。まずは杖から。

『?!』触れた瞬間に。それ相応の闇と光の魔力が流れているのがわかる。

ローブも手に取ってみた。漆黒のローブだ。こんこんと叩いてみると

ローブから手ごたえが返ってくる。物理防御の効果だ。微かながら魔法防御の効果も感じ取れる。

先ほどの、おじさんへの無礼を心で訂正した。嘘は言ってない。本当だ。

でも…手持ち金貨全額だ。銅貨はまだあるとはいえ私は心配性なので

金貨をすべて使うのは抵抗があった。悩んだ。

私は、ただでさえ傍から見れば無表情で、何を考えているのかわからないと言われる。

悩んだ。30分過ぎただろうか私はまだ悩んでいた。

「はぁ…お嬢ちゃん、おじさんが勉強したら買ってくれるかい?」

どうやら、おじさんと根競べになっていたようだ。

「わかった!2年の付き合いだ金貨22枚!これ以上は赤字だから無理だ!

買うのかい?買わないのかい?どっっちなんだい?!」

何か聞いたことがあるような、ないようなフレーズで問われた。

しかも2年間私はこのおじさんを無視してきたのだ。付き合いはない。

「決めました。買います。」私はバックパックから22枚の金貨を取り出し

店頭カウンターに無造作に置いた。

「おぉ!嬢ちゃん太っ腹だね!その潔さ、おじさん感服だよ!」

年頃の女の子に例えでも太っ腹はいけない。と心で突っ込みながら

金貨を数えるおじさんの手を眺めていた。

数え終わると、おじさんは質素な包装用紙を使い丁寧に商品を包むと

「ありがとね!お嬢ちゃん!冒険頑張るんだよ!」そう言った。

私は商品を受け取り宿屋に帰ろうとすると

「お嬢ちゃん!言い忘れてた!杖は使うごとに変形するらしいから気にしないでね!」

「…わかりました。」私は無表情で、答えた。

そういう事は先に言ってほしい。商品の授受が終わった後で言う事ではない。

そう考えつつ部屋に戻った。

包み紙を開けてみる。杖を手に取る。確かに闇と光の魔力の流れを感じる。

これで少しは冒険の役に立てるかもしれない。そう思いつつ杖を壁に立てかけた。

次はローブ。白いローブを脱ぎ、漆黒のローブを羽織ってみる。

見た目は…すごく…何だろう…悪い人みたいだ…。いいのだろうか…。

挿絵(By みてみん)

店頭と同じようにローブを外から叩いてみると内側から外へ力が発生してるのがわかる。

物理防御。後衛は万が一の事が起こると高確率で物理攻撃で仕留められる。

『これはいいものだ。』心でつぶやいた。

部屋に鍵をかけ再び外出することにした。目的はアクセサリー。

金貨一枚で買えるものと意を決して外へ出ると

「さっきはありがとねー!」露天商のおじさんが笑顔で手を振っている。

私は、ペコリと一礼して、アクセサリー屋へ向かった。

アクセサリー屋の店のドアを開けるとカランカランとベルの音が店に響いた。

「いらっしゃいませ。どうぞゆっくりご覧になってください。」

店主らしき人は品のある、感じの良いおばあさんだった。

「あの…金貨一枚で購入できる…十字架のペンダントを探しているのですが…」そう言うと、おばあさんは

「それなら、これなんかどうかしら。」棚から出したのは、シンプルな銀の十字架だった。

「これはね、名のある神父さんが10年間礼拝で身に着けていたもので

神のご加護が宿っているのよ。どうかしら。」おばあさんは手渡してきた。

うん、いい感じで光の加護の流れを感じる。

「これにします。」と金貨を一枚差し出した。

「ありがとうねぇ、あなたに神のご加護がありますように。」

「ありがとうございます。」ぺこりと一礼をして店を出る。

またカランカランとベルの音がなっていたがドアが閉まると音は遮られた。

宿へ着く頃には夕方になっていた。部屋へ戻ると早速ネックレスを首にかけてみる。

光の魔力が少しばかり両の手のひらに集まっているのを感じた。

私は満足した。買い物は楽しい。何故だろうかわからないけれど楽しい。

部屋に鍵をかけ1Fに降り酒場で食事を済ませ部屋に戻った。

夜のルーティーンをこなし終わると外は暗くなっていた。

「ふぁ…」昨日とは違った心地よい疲れにまどろみ

『明日もお休みだ。』。そう考えつつ深い眠りに落ちていった。

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