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不死の探求者

私とエマさんは、とあるダンジョンの下層にいる。

歯ごたえのある敵はいなかった。敵は全てアンデッド。

そんなに古くないダンジョンの壁は、まだ新しく

私の唱えたイルミネイトが先導しダンジョンを照らしている。

恐らく次辺りが最下層だろう。

曲がり角を曲がると下へ降りる階段、一際大きな部屋がある。

そこで私たちが見たのは、しゃがみ込んでいる薄汚れたモスグリーンのフードをかぶったローブの者

「ゼログラビティー」私が唱えるとイルミネイトを部屋中央天井付近に固定する。

周辺が光に照らされる。辺りは血だまりがそこかしこにできていて戦闘痕も散見される。

「よし。刻印完了。」声で男であることが分かる。

ゆっくり立ち上がると、こちらを見る。

「また我が下僕が来たと思えば、女子供ではないか。」

死体に刻印を施しているところをみると

こいつがダンジョンのアンデット共を作り出している

ネクロマンサーだな。私は思った。

「ここまで女子供で来られた事を誉めてやろう。

褒美として我が下僕共と戦うがいい。クフフ。」そう言うと男は詠唱を始めた。

「志半ばに倒れし者よ…我が己らの主となりて…

仮初の息吹を吹き込まん…ここに来たれ!ビィリボーン!」

詠唱と共に討伐に来た冒険者たちであっただろう者たちの

亡骸、その胸の刻印が赤い光で満ちて行き詠唱が終わると刻印は赤黒く輝き満たされた。

フードの男の下僕と化した冒険者たちは立ち上がった。

「やれ。」フードの男が命令すると私たちに襲い掛かる。

私は即座にグラビティーを唱え力場を作る。

案の定、中衛の弓使いだった物。は弓に矢をつがえ

私に狙いを定める。剣士は切りかかってくる。ガイン!!と重力場で剣が弾かれる。

ヒュン!ガッ!唸りを上げて飛んできた矢は力場に弾かれ明後日の方に跳んでゆく。

エマさんは魔法使いに突撃していた。

アンデットと化した魔法使いは無詠唱で魔法を放つ事ができる。

エマさんは連続で放たれる青白い光を放つ火球を二つ三つと盾に当てる。

すると、スッと盾に吸い込まれるようにして魔法は消える。

エマさんは宝剣アトリビュートを構え魔法使いを袈裟切りにする。

踵を返すと弓使いの胴体を薙ぎ払う。そしてぐっと一瞬溜めて跳躍し

剣士を背後から鎧の間に剣を滑り込ませ切り崩す。

ファサ…カラン!…カラン!…コトッ。

冒険者たちだった物は衣服と道具を残し肉体は塵となって消えた。

「歯ごたえないねぇ。」エマさんはローブの男を見ながら言う。

「チッ…こんな小娘共に!」男は詠唱する。

「気高き炎の精霊イフリートよ…我が契約に応え全てを焼き尽くせ!イグニスオールト!」

エマさんは男に歩み寄りながら飛んできた青白い火球を盾でかき消す。

「まぁよい。その小娘は我が主と同類だな。クフフ…」不敵に笑う。

「リーフを貴様たち小汚い輩と一緒にするな。ラストスラッシュ!」

声とともにエマさんは電光石火のごとき剣捌きで

Z字型にローブの男を切りつけた。男はバラバラになる。

「我が主…今…同類が訪れますぞ…。」そう言うと男は地面に四肢をまき散らし

動かなくなった。

「エマさんありがとうございました。」私が言うと

「いやぁリーフが詠唱して気を引いてくれたから

楽だったよ。こちらこそありがとう。」

いやあれは、私の方が楽に殺せそうだったからだと思う。

「ゼログラビティー!」

私はイルミネイトを先導させ

「行きましょう。最下層かもしれません。」そう言った。

階段を下ってゆくと、封印を施されたような頑丈な扉があった。

「あちゃー…これ以上は無理かな。」エマさんは言う。

「多分大丈夫ですよ。」私はそう言い詠唱を開始した。

「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムガープ!」私の魔法で放出した暗黒の縦横2M面状の霧が

ダンジョンの壁ごと扉を飲み込み消え去った。

「へぇ~!こんな魔法があるんだ!凄いねリーフ!」そう言いながら

頭をわやくちゃに撫でてくるエマさん。

「はしゃいでる場合ではないですよ。封印刻印のあった頑丈な扉とくれば

恐らく、ここにヤツはいます。」エマさんは真顔になり

「そうだねごめん、気を引き締めるよ。」そう言い警戒態勢をとる。

そこは大広間だった

「ゼログラビティー!」イルミネイトを天井中央付近に固定する。

奥には金銀宝石類で装飾の施された玉座のような物があり

黒いローブの何者かが座っている。

「貴様モンタギューかっ!」エマさんは問うと、男はすっくと玉座から立ち上がり。

杖を水平に構えた。

「エマさん魔法!」私は叫んだ。

私を庇うようにエマさんは盾を構える。

直後水平方向に巨大な四本の雷撃が男から放たれる。

盾はかろうじて雷撃の一本を受け流しているが霧散しない。

「冗談だよね…この盾で焼失しない魔法とかっ…!」エマさんは踏みとどまっている。

私は見抜いた。これは特級術師が行使しうるレベルの雷撃魔法だ。

しかも詠唱無しという事はアンデットだ!

30秒ほどで攻撃は終わったが、体感時間は30分以上だ。

『良い盾だ。どれ、このモンタギューがいただくとしよう。』脳内に直接響く低い男の声

男は座ると玉座に片肘をつき。パチンと指を弾いた。

ローブから見えた腕は骨だった。

私たちの周囲360度に200、いや300以上の槍状の石が何もない空間から出現した。

「グラビティー!」私は力場を張った。

『ほう。お主、黒の使い手か。』頭に声が響くと同時に

男は骨の指先をこちらへ向けた。

一斉に何百もの槍状の石が私たちに向かって飛んでくる。

ガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

石の槍は全て力場に当たり砕け散り私たちの周りに散らばった

『そうなるな。』エマさんの頭の中にも、あいつの声は響いてるはず。

「余裕かっ!」エマさんは地面を蹴り跳躍した

玉座のローブの男に切りかかる。

私も走りエマさんの近くへ移動しようとする。

ガイン!!エマさんの斬りかかった剣は透明な壁に弾かれ

エマさん自身も勢いで後方へ吹っ飛ぶ。

エマさんを追い越しそうになった私は急いで足を止める。

「まさか…」私は目を見開いていた。

『グラビティーによる力場だ。お主が先ほど使っていたやつじゃな。』

脳内に愉快そうな男の声が響く。

こいつは特級術師モンタギューしかも黒の使い手がアンデット化した

高位の魔法使い!リッチだ!

リッチは片手に持っている杖を水平に薙ぎ払った。

するとエマさんは

凄まじい勢いで弾き飛ばされ壁に激突し衝撃で壁はクモの巣状に凹む様に崩れ

「カハッ!」大量の血を吐き倒れたエマさんはピクリとも動かなくなった。

マズイ…内臓も相当損傷しているだろう!

「我らが親愛なる神よ!傷つきし子羊の肉体をあるべき姿へ戻し給え…」

私は詠唱しながら急いでエマさんに駆け寄る。

「ヒールッ!」両手をエマさんの体につけると癒しの光がエマさんを包み込む。

反応がない。体の向きを変え心臓の位置に手を置いてみる。

心臓が…動いてない…。

「我が主よ!その寛大なる慈悲において我が願いを聞き届け!この者に再び命を授けたまえ!リザレクション!!」

エマさんの体がぴくっと動く

「ガハッ!ゲホッ!ゲホッ!」

横を向いて気管に入った血を吐き出す。息を吹き返してる。

「よかった…エマさん…」私は泣きそうになっていた。

『三文芝居は終わったか?お主、黒だけではなく治癒も使うのか…厄介じゃな。』

リッチは玉座から立ち上がり悠然とこちらへ近づいてくる。

私は杖を一回コンと石床に叩き「グラビティー!」詠唱する

そしてエマさんに少しの間耳打ちをした。

エマさんはそのまま動かなくなる。

リッチは私の方へ杖を向け歩いてくる。

リッチの杖先がスッと力場を通り抜けると力場は干渉しあい繋がる。

今の私は完全に無防備だ。何をされても死ぬだろう。

『……提案じゃが…。のう黒の使い手の娘よ、そなたも高位の存在となり

ワシの真実への探求を手伝わぬか?どうじゃ?ん?』

骸骨の中の真っ赤な瞳が私をじっと見つめる。

「その際エマさんはどうなりますか?」私は震える声で訊ねた。

『そやつか…アンデットにすれば、いいガーディアンになろうて。カッカッカッ』

その瞬間私はエマさんの剣を素早く手に拾い、” ザグッ! ”リッチの胸に突き立てる!

剣は白く輝き聖なる光を湛えている。

『き…さ…』

リッチの杖先に青白い火球が出来、どんどん大きくなる。

「そうは問屋が卸さないんだよねぇ!」

そう言うとエマさんはガバッと起き上がり

私の手と共に剣を握り剣を前方に突きだす!

「アトリビュートストライクッ!」そう言うとリッチの胸に風穴があいた。

『お…の…レ…』

そう言い残すとリッチは杖とローブを残し消滅した

「やったか?」エマさんは言う。

「エマさん。それはフラグなので辞めてください。」

私は言うとエマさんはぺろりと舌を出した。

「さぁそれでは脱出しましょう。私に近づいてくださいね。」

エマさんは盾を回収し私に近寄る

「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、万物の理を曲げここに顕現せよ!ブリッジオブローゼン!テネブラールム!」詠唱を終えると私達はエドワード伯爵家の前にいた。

コンコンコンノックをし

「リーフです。ただいま良い知らせを携え帰還しました。」

そう言うとエドワード伯爵がドアをバン!と開けて出てきた。

「お待ちしていました!おけがなどはありませんか?」

「はい大丈夫です。懸案の通り

宮廷の特級魔術師モンタギューのリッチ化を確認後

討伐して参りました。」

「あなた達以外には成し遂げられないと思っていました!ささ、お入りください」

片膝を折り胸に手を当て頭を下げる。

「伯爵様!頭をお上げください!困ります!私達は一冒険者であり

あなた様のようなご身分の方が、そのような…」

慌てて私が言うとエドワードは言葉を遮り。

「いいえ、あなた方はわたくしの命の恩人です敬意こそあれ、身分など関係のない事。

そんな事より中へお入りください、早速食事の用意をさせます。」

私達はエドワード伯爵の部屋で豪勢な食事をご馳走になった。

色々と話をしたが、エマさんが一度死んでしまったところは伏せておいた。

「それでは失礼いたします。」私が言うと

「はい、明日調査隊を派遣します。」伯爵は言う

「報酬はその後で。」私が答えると

「本当はこの場でお渡ししたいのですが…」伯爵は表情を曇らせ言葉を濁す

「いけません伯爵。報告と調査結果をすり合わせた後に報酬は渡すものです。」

私が言うと

「いえ!あなた方が虚偽の報告をするはずがない!」伯爵は真顔で言う

「例え恩がある相手でも、依頼や報酬とは別にお考え下さい。

そうしないと、いつか騙されます。」私が諭すと伯爵は

「承知いたしました。肝に銘じておきます。」としょんぼりした。

別れを告げ、私達は宿屋へ戻った。

翌日、金貨2000枚を伯爵家の使いが持ってきた。

「約束は金貨1500枚ですそれ以上は受け取れません。」

私がそう言うと

「この件で私は王様から大きな評価を頂きました。

評価としては値10000金貨です。些少になりますが、せめてもの、気持ちです

お納めください。お受け取りいただけなければ使者は屋敷へ戻る事は許さん。」

と使者はエドワード伯爵の言伝を述べた。私の事をしっかり読んでますね。

エドワード伯爵…やりますねぇ!私は思った。

「そうですか。それでは喜んで頂きます。

エドワード伯爵には、ご健勝にと、よろしくお伝えください。」

私が言うと使者は戻っていった。

報告によるとダンジョンにいたアンデット共は全く見当たらず

私たちの戦闘後の状況証拠はそろっていたようだ。

あのダンジョン空っぽになったという事だけど、どうするのかな?

そんなことを私はぼんやりと考えた。

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