初めての依頼。初めてのダンジョン。
翌日冒険者ギルドに集合の予定だったので予定時間に足を運んだ。
ギルドの受付嬢が話しかけてきた。
「あら?あなたは『銀翼の羽』に入った子ね!」と話しかけてきたので、私は頷いた。
「おめでとう!アレイさんやミレさんと上手くやっていけそうかしら?」と聞いてきた。
「はい……多分…」と私は答えた。
「良かったわね!」と笑顔で言ってくれた。
ギルドの受付嬢は「アレイさんやミレさんはもう来てるわよ」と言ったので、私も2人を探した。
すぐに見つけたが何やら話し込んでいる様子だった。
2人は私を見つけると手を振ってくれた。
私は2人の元へ向かった。
「やぁリーフ君おはよう」「おはようリーフちゃん」と挨拶されたので私もそれに答えた。
「おはようございます。」と会釈をする。
「さぁ、リーフ君の『銀翼の羽』としては初の依頼だ」とアレイさん。
するとミレさんが「クエストボードを確認してくるね!」と言い受付嬢のほうへ走っていった。
しばらく待つと「これなんてどうかしら?」と依頼書を持ってきた。
「ふむ……これなら問題ないだろう」アレイさんはその依頼票にサインをすると私に手渡した。
私はそれを受け取り目を通した。内容はこうだった。
・収集品:プラチナ鉱石10kg
本で見たことがあった。
プラチナ鉱石の入手方法は
鉱山を掘るか鉱山ダンジョンに生息するプラチナゴーレムのコア
前者は完全に運任せな上、私たち3人が
マイニングしている所は想像がつかない。
となるとプラチナゴーレムの討伐の戦利品しかない。
「プラチナ…ゴーレムですか?」と口にすると
アレイさんは頷き、ミレさんも「うん!そうだね!」と笑顔で言った。
3人はギルドを後にし『銀翼の羽』として初のクエストへと出発した。
私たちは馬車を借り鉱山ダンジョンへと向かった。
道中は何事もなく目的地へ到着した。
「このダンジョンは、様々な鉱石が採掘される鉱山に
昔ゴーレムクリエイターが呪いを施したために
様々な鉱石のゴーレムが徘徊している。
今回狙うのは勿論プラチナゴーレムだ。」人差し指を立ててアレイさんは言った。
「だから相当深い階層に行かなければ私たちでも問題なく攻略できるよ」とミレさん。
私は頷き2人についていった。
先頭は前衛のアレイさん、続いてミレさん、私の順番。
実のところ私はダンジョン初体験だった。
当たり前の話で。今までギルドで受けてきた依頼は薬草などの採取や
弱いモンスターの討伐だけだったからだ。
ダンジョンのモンスターは外とは一味違う。
そう、この鉱山ではゴーレムが徘徊しているのだ。
私は緊張で体が固くなっていた。
そんな私を気遣ってかミレさんが話しかけてきた「リーフちゃん大丈夫?緊張してる?」と。
私は頷きつつ「はい…すみません…」と答えた。
「最初はみんなそうだよ!」とミレさんは笑顔で言った。
「でも安心して!私たちが守るからね!」と続けた。
しばらく進むとアレイさんが立ち止まり、前方を指差した。
「あれはクレイゴーレムだね、つまり粘土のゴーレムが…2体いるな。
メインディッシュの前の前菜といった所かな。」私の方を向きニコリとする。
私の固まっていた体の緊張が少しほぐれた気がする。
アレイさんは剣を鞘から抜き掲げる。
「神よ、我ら忠実なる羊にご加護を!エンチャントブレス!」
アレイさんが高らかに叫ぶとパーティーメンバーを柔らかな光が包み込む。
「よし、これでバフはかかった。皆、状況判断しつつ撃退するぞ!」
言い切る間もなくアレイさんは一体のゴーレムに体当たりし吹き飛ばし転倒させた。
次の瞬間もう一体のゴーレムに剣を打ち付けた。
「気高き炎の精霊イフリートよ…我が契約に応え全てを焼き尽くせ!イグニスオールト!」
ミレさんの詠唱が終わると転倒していたクレイゴーレムに青白い球体の炎が命中し
高温に包まれ瞬く間に消し炭となった。粘塊のコアが残った。
「ミレ、オーバーキルじゃないか、その魔法は!」アレイさんが茶化すように叫ぶ。
私は2人の連携に圧倒されていた。
これが『銀翼の羽』の実力。はっと我に戻り私も詠唱を始めた。
「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムガープ!」
唱え終わるとアレイさんが対峙しているクレイゴーレムの手足が闇に飲まれ消え去った。
ドスン!と胴体のみが地面に転がった。
「ナイスアシスト!クレイ君!」アレイさんは、そう言うとクレイゴーレムのコアに剣を突き立てた。
クレイゴーレムは霧散し。剣の突きささったコアが残る。
「ふぅー、ミレはちゃんと魔力温存してくれよ、メインディッシュでガス欠とか困るからね」とアレイさん。
「リーフちゃんに、いいとこ見せたかったからね!
それにプラチナゴーレムは魔法が殆ど効かないから、あなたの出番よアレイ♪」ミレさんが嬉しそうに言う。
「まぁそうだね。」苦笑いをするアレイさん。
2人はこちらを見てニコリとする。私は2人を見つめ返す。私の視線に気付き2人も笑顔で頷いてくれた。
私も頷き返した。
一行はダンジョンを更に進み、ついに目的の階層にたどり着いた。
「プラチナゴーレムは、ここの階層かな。
プラチナゴーレムは魔法が効きにくい代わりに物理に弱い
私に任せて二人は周囲に気を配って。」穏やかな表情でアレイさんは言った。
「OK♪」「はい!」2人は同時に返事をした。
「早速お出迎えだ。」階段を下りた入り口にプラチナゴーレムはいた。
「一匹だね、それでは頂くとしますか。」
「神よ、我ら忠実なる羊にご加護を!エンチャントブレス!」
アレイさんは皆にバフをかけ剣を構える。
私は詠唱を始めた。
「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムバインド!」
プラチナゴーレムの両手両足に闇のリングが形成され動きを封じた。
それを見たアレイさんは「イイネ!!」と言うと同時に地面を蹴りあっという間に距離を縮め
プラチナゴーレムの四肢の付け根を剣の柄で強打。闇のリングごと四肢は宙に残したまま
胴体だけが地面に転がった。アレイさんはすかさず、プラチナゴーレムのコアに剣を突き立てる。
体は霧散し、プラチナの塊コアが、ゴロリと地面に転がる。
「よし、どれどれ。」アレイさんはコアを手に取り重さを測っているようだ。
「うん、5kgってところかな、あと一体おかわりと行こうか。」
クレイさんはサムズアップで私たちの方に振りながら笑顔で言った。
「私は2人に任せて周囲警戒しておくね」とミレさんは、答える。
私たちは更に先に進みプラチナゴーレムを探す。
いた!この階層の最奥だ。
「神よ、我ら忠実なる羊にご加護を!エンチャントブレス!」アレイさんは剣を構えながら詠唱する。
「闇より出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムバインド!」
私はプラチナゴーレムの四肢の自由を奪う。
後はアレイさんの独壇場だ。事はすぐに終わった。
「ざっとこんなもんだね、リーフ君、ミレお疲れ様。
これで10kgはあるだろう。戻ろうか。」バックパックに塊をしまい込みながらアレイさんは言った。
帰り道は特に他のゴーレムに遭遇することなく何事もなくダンジョンを後にできた。
さてギルドでプラチナゴーレムコアの換金だ。
ギルドの受付嬢は秤で重さを測る。「んー12kgあるから2kgはこちらで預かって報酬にイロを付ける形でいいかしら?」
「任せるよ。」アレイさんはそう言うと金貨を30枚受け取った。
「お疲れさま。またお願いね。」受付嬢はそう言うと2kgのプラチナの塊をしまいに奥へ行った。
アレイさんは「今日はお疲れ様、2人ともありがとう。」と笑顔で言った。
ミレさんも「リーフちゃん、初めての戦闘なのによく動けてたね!私も負けてられないなぁ」と言った。
「報酬は山分けが基本なんだ、だから1人金貨10枚だね。」そう言うとアレイさんは私とミレさんに金貨10枚づつ手渡してくれた。
「次は二日後ぐらいでいいかな、ゆっくり体を休めてほしい。」アレイさんは言った。
「私は大丈夫。」とミレさん。
「私も大丈夫です。」
「そうか、ではまた二日後ここで集合しよう」アレイさんは言った。
私たちはギルドを後にした。
私は歩きながら手元の10枚の金貨を見つめ
Aランクの報酬ってすごい!そう思いながら、そそくさとバックパックに金貨をしまった。
宿に帰り、食事をとった。
私はその日疲れたせいか、泥のように眠った。