買い物とアサシン
私たちは幾日か、かけてランドンの冒険者ギルドへ行き
グリフォンの鉤爪一対の報酬は金貨60枚を受け取った。
宿屋へ戻ると気になっていた質問をエマさんにした
「エマさんの剣ですが、グリフォンを攻撃する時に
紫黒い色やオーラを帯びていませんでしたか?」
「うん、そういえばリーフには説明してなかったね
これは宝剣アトリビュート。簡単に言うと対象に触れた瞬間
弱点属性に剣の属性が変化しオーラを纏う国宝級の
剣なんだ。
ちなみに盾はアンチマジックシールド
どんな高位魔法でも無効化してしまう
国宝級の盾この盾もマジックアイテム。
なかなか便利そうだと思わないかい?」エマさんはウインクした。
「それは本当にすごいですねまさに国宝と呼ぶのに相応しい剣と盾ですね。」
私は素直に感嘆した。
「両方ともに軽いんだ、持ってみるかい?」
私は渡された剣と盾を持ってみる。
「わぁ!」口に出てしまった、本当に軽い、紙程度の重さしかない。
「びっくりするよね、僕も初め手に取った時はびっくりしたよ
どうしても欲しくなっちゃってね、お願いして貰ったんだよ。」エマさんは言った。
「これは本当に国宝級の逸品ですね。」私はそう言うとエマさんに剣と盾を返した。
「だから、魔法が飛んで来たら僕の後ろに隠れて、それが一番安全だから。」
エマさんはそう言うとテーブルに剣と盾を置いた。
「そうさせていただきます。」私は言った。
「ところで私達、着替えがありませんね買い出しに行きませんか?
毎日シャワー後バスタオル一枚だと風邪をひきそうです。」
「そうだね、替えの服は何着か持っておいた方がいいね。」エマさんはそう返した。
「あとエマさん、その服とパンツは物理抵抗などのマジックアイテムですか?」
「いや、普通の服だよ。」
「エマさんは前衛ですからプレートメイル等、購入されては如何でしょう?」私は提案した。
「うーん僕は素早さ重視だからね、重い防具は、かえって足手まといになるんだよ。」
エマさんは言う。
「どちらにしても、取り合えず裁縫屋やマジックアイテム屋に行きましょう。」
「そうだね、まだ昼ぐらいだから買い物に行こうか。」エマさんは言った。
私たちは棚から金貨を取り出しバックパックに詰めた。
エマさんは剣と盾を持った。
「剣と盾要りますか?」私は言った。
「もし防具屋に行くなら、これがないと合わせられないよ?」
そういうの気にするんだ…なるほどと得心したので私は頷いた。
先ずは裁縫屋へ行った。
私は適当なローブを2・3着見繕ってサイズを試着で確認し購入。
エマさんはモスグリーンのチュニックとデニムのショートパンツを持っていた。
「ドレスなどは着ないのですか?」私が聞くと
「あー王宮で嫌というほど着せられたからね、動きにくいんだよ、あれ」
ならば動きやすければいいのかな?と思い
紺色のオーバーシャツと青系タータンチェックのミニスカートを持ってきた
「試着してみてください。これなら動きやすいですよ?」
試着室へ入りエマさんは出てきた。
「これは少しスースーするけど動きやすいね。」
そう言うとエマさんは着替え、その2種の上下を購入した。
「それでは、エマさんの防具を見に行きましょう。」私が言うと。
エマさんは『えー…』と言う顔をしていたが、共にマジック道具屋へ向かった。
マジックアイテム屋へ入ると私は店主に聞いた。
「軽いプレートアーマーはありますか?」聞くと後ろの棚からガチャリと
プレートアーマーを出してきた。「これはかなり軽いよ。」
コンコンと叩くと金属の重厚感がありながら手に取ってみると木のように軽い。
「これなんかどうですか?」振り返りながらエマさんを見ようとすると
両手で✕ポースをしていた。
「動きにくそうなメイル類はダメ。」エマさんは言った。
「値は張るが物理耐性のあるカットソーとパンツの上下はあるよ?」店主は言った。
「それを見せてもらおうかな!」エマさんはそう言うと
店主は店の奥から長袖の黒いカットソーと黒いパンツを持ってきた。
「これは要人用のお忍びに、おあつらえ向きのものだ。
曲者が剣で切り付けてきても突いてきても傷一つつかない優れものだ。」
金貨315枚。この金額が気に入らなかったら帰ってくれ。」店主はそう言った。
露天商は場所を移動できるから嘘をつくこともある。
しかしこのような店舗で嘘商品を売ったとあれば
店の名に傷がつき商売できなくなるだろう。
故に言っていることは本当だと思う。
エマさんは早速試着しに行った。
「どうかな?」剣と盾を構えて私に聞いてきた。
私の戦闘用ローブも黒だし、お揃いみたいになっちゃうな。
それに黒ってやっぱり悪役っぽく見えるよなぁと思いつつも。
これでダメだししたら他の店を回らなくてはいけなくなる。
「似合っていると思いますよ。」私は言うと
「じゃあ店主これ頂くよ。」と言ってエマさんはバックパックから
お金を取り出す「300枚しかないな…。」エマさんは言ったので
「残りは私が出しますよ。」と言った。
購入したての服を着て一緒に店を出た。
完全にお揃いだな。私は思った。
夕暮れ時宿へ帰る途中でそれは起こった。人通りのない道へさしかかった時。
「危ない!」エマさんが私を盾で庇うと、カランカランと石畳に金属音が響いた。
私を狙って短剣のようなものが投げつけられたようだ。
「何者だ姿を現せ!」エマさんは言うが投擲者は答えない。
私には今杖がない、なすすべがない。私も杖を持ってこればよかった強く後悔した。
物陰からスッと黒装束の何者かが私に向かって短剣で切りかかる!
「甘いねぇ!」エマさんは短剣を剣の切っ先で上へとはじく。
キィン!金属の甲高い音がしてカランカラン、石床に再び金属音が響いた。
「エマさま城へお帰り下さいませ。」黒装束の男はくぐもった声で言う。
「帰るわけがないだろ!しかも貴様今リーフを狙ったな!」エマさんは激昂する。
「左様。その小娘が居なくなればエマさまは、お城へお帰り下さるでしょう。」
「帰らないね!」エマさんは剣で黒装束の男を切る付けようとしたが
男は剣筋を見切っているかのように優雅に避けた。
「アサシンか!父上の差し金か!」エマさんは更に激昂する。
キィン!カァン!キィン!キィン!エマさんは切りかかるが短剣であしらわれている。
「お覚悟をお決めください姫様。さもなくばあの小娘を…。」
『グラビティー』
アサシンは地面に這いつくばっていた。
私は指先だけもそこそこ重力負荷をかける事ができるようになっていた。
「エマさんこの者を無力化してもいいですか?」私は聞いた
「無論。」エマさんは言う。
バキッ!ベキバキボキッ!上半身の骨のいたるところが砕ける。
特に腕は念入りに砕いておいた。
流石暗殺者だな、これだけの状況でうめき声一つ上げないとは。私は思った。
「足だけは残しておきました。」私が言うとエマさんはアサシンのマスクを取り
髪をつかみながら
「父上に伝えろ。次このような事をしたら容赦はしないし
事と次第によっては私自ら父上を殺しに行く。
あと分かっただろ、この子は、ただの小娘ではない
お前の命があるのは私のお陰ではない、この子の慈悲だ。ゆめ忘れるな。」
エマさんは髪から手を放しアサシンの顔を地面に叩きつけた。
私はその男の拘束を解いた。
男は無言で闇に消えていった。
「大丈夫かい?!」エマさんは駆け寄ってきた。
「私は大丈夫です。庇ってくださりありがとうございました。
でなければ私は最初の投擲で死んでいたでしょう。」
「だけど、元をただせば僕の…」言いかけたエマさんの口を私は人差し指で制して
「それは言いっこなしです。」そう言うとエマさんの顔は綻んだ。
買い物の荷物を回収し2人は宿屋へと向かった。




