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渡航

北の国に入って少ししたところに、小さな町があった。

「今日はここで休むとしよう。馬も、もう限界だ。」エマさんは馬の首付近を撫でながら言った。

町の入り口までくるとエマさんは馬から降り

私に手を伸ばし私はその手を握り返し、馬上から下りた。

エマさんは馬宿へと向かい。剣と盾を手にし、私の元へ戻って来た。

「さあ、宿屋へ向かおう。」そういうと、エマさんと私は宿屋を探した。

町の奥へ向かうと宿屋はあった。宿の中へ入る。

「ツインは空いているかな?」とエマさんは尋ねると

宿屋の主人は「空いてるよ1晩金貨1枚になるがいいかね?」といった。

「もちろんお願いするよ。」そういうとエマさんはカウンターに金貨一枚を置いた。

2人は2Fへ上がり指定の部屋へ入った。

「勝手にツインを取ってしまったけど、シングル2部屋の方が良かったかな?」

エマさんは言った。

「大丈夫です。」と私。

エマさんは近くにいても苦になる人ではなかった。

エマさんと私は部屋を出て1階に降り食事をとった。そして再び部屋に戻った。

2人はナイトルーティーンをこなし互いのベッドに座った。

共に衣服を洗い部屋干しをしていたのでバスタオル1枚だ。

挿絵(By みてみん)

エマさんが口を開く「本当に後悔はないかい?」

「後悔をすると思っていたらあの場で断っていました。」

私がそういうとエマさんは安堵の表情を浮かべた。

私は貸金庫に預けた数千枚の金貨のことが脳裏に浮かんだ。

所詮、金は天下の回りもの、また稼げばいい私はそう思った。

2人は眠くなるまで生い立ちを語り合った。

そのうち2人は眠くなってきたので、そのままベッドに潜り込んだ。

「ふぁ…」私が起きるとエマさんは既に身支度を整えていた。

「やあ、おはよう。リーフ、君のローブも、もう乾いているよ。」

「おはようございます。ありがとうございます。」

そう言うと私はベッドからノソノソと起き上がりローブを着用した。

エマさんは「このまま北へ北へと向かおうと思うけれどいいかい?」

と聞いてきたので私は

「はい、すぐに準備をしますので少々お待ちください。」

そういうとエマさんは

「大丈夫。もう国境を超えたから大人数では追ってこないよ。だからゆっくりでいいよ。」

私はお言葉に甘え、いつものように、のんびり朝のルーティーンをこなした。

2人は共に1Fに降り食事をとった。

そして部屋に戻りエマさんは剣と盾、私は杖を持ち部屋を後にした。

チェックアウトを済ませ2人は馬宿へ向かい、馬に乗ると街を出て北へと向かった。

エマさんは昨日のように馬を急がせて走ることなく

余裕を持って走らせているように見えた。

道中、夜の帳が降りると近くの町に宿泊し翌日には、また北へ向かった。

3日ほど繰り返すと遠くに海が見えてきた。

そのまま進んでいくと港町が見えた。

町に近づくと遠くで海鳥の鳴く声が聞こえ、海独特の香りが漂ってきた。

町に到着すると2人は馬を降り歩いて町中へ入った。

小規模ながら人が行き交い活気に満ち溢れていた。

ザザーンザザーンと防波堤に打ち付ける波の音。

波止場には何隻もの船が横付けされており宿屋は小さな町にしては気持ち多めだ。

エマさんは馬の手綱を引きこちらを見ながら言った。

「僕は、ここから船に乗り北東へ向かいウェルズランドという島に行こうと思う。

君はどうする?」

「どうするも何も私はまだ依頼を達成していません。当然一緒に付いて行きます。」

するとエマさんは微笑みながら

「そうだね、ありがとうリーフ。」そう言った。

波止場の方に向かうと、乗船チケットを買うことができる

ベイステーションがあった。私たちは中へ入る。

「ウェルズ行き、大人2人馬1頭の乗船券の手配を。」そうエマさんが告げると

受付係は「大人1人につき金貨1枚、馬1頭につき金貨2枚、合計金貨4枚になります。」

それを聞くとエマさんは「これでいいかい?」といい、金貨4枚をカウンターに置いた。

「はい、ありがとうございます。それではチケット3枚お渡しいたします。」

そういうと、受付係はエマさんにチケットを3枚手渡した。

「はいどうぞ。」エマさんはそう言うと私にチケットを1枚手渡した。

私がバックパックから金貨を取り出そうとすると、エマさんは

「これは必要経費だから要らないよ。」そう言うと馬を連れ目的の船へと

エマさんは歩き出した。私はその後をついて行った。

2人と1頭は船に乗り込んだ。

私は船に乗るのは初めてだ。足元がゆらゆらと動き変な感じだ。

私のおぼつかない足取りを見て

「船は初めてかい?」エマさんはそう聞いてきた。

「はい初めてです。足元がゆらゆらして、なんか気持ちが悪いです。」

私がそういうと直後に。

「出航だ!帆を上げろ!」という声とともに船員がマストに上り帆を広げた。

私たちは北の国を後にした。

(時間経過)

「おえーーーー。」私は船べりに手をつき頭を乗りだし吐瀉していた。

「大丈夫かい?リーフは船酔いするタイプだったんだねぇ…。」

そういうとエマさんは私の背中を優しくさすってくれた。

「ずびばぜん…おえーーーー。」どうやら朝食は全て出尽くしたようだ。

液体だけが海に流れ落ちる。

時間が経つと慣れてきたようで吐き気は段々おさまってきた。

そして数日経つとウェルズランドが見えてきた。

港へ入ると船は速度を落とし船縁に船を横付けにした。

「投錨!」船員が叫ぶとガラガラと音を立て碇が降ろされた。

皆船を降りた。

地面を踏みしめてていた私だったが、足元がずっと揺れている。

左右にふらつきながら時々尻餅を付いたり倒れ込んだりした。

例えるならば地面に杖をつき目を閉じ杖に頭をつけ

何10回もぐるぐると回ったのちまっすぐに歩こうとすると

あらぬ方向に倒れ込んだりする。まさにあの状況。

エマさんはクスクスと笑いながら

「ごめんごめん笑ってはいけないとは分かっているけど

つい、プフッ…笑ってしまった。本当にごめん。」

そう言いながらエマさんは私を支えて歩いてくれた。

人間とは時として笑ってはいけない場面で

笑いが止まらなくなってしまうことがある。

まさに今のエマさんがそれなのだと思った。

仕方がないのだ。自分ではコントロールできなくなっているのだから。

港町の宿に着く頃には倒れ込むようなことはなくなっていたが

足元の揺れはずっと続いたままだった。

これはいつまで続くのだろうか私は困惑していた。

エマさんは私たち2人ツインの部屋の宿賃を支払い

私を支えながら部屋に入った。

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