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エスケープ

数か月経ち私は13歳ぐらいを迎えていた。

孤児院を飛び出してから身長はかなり伸びている。

面倒を見てくれていた人たちは、もう私を見てもすぐには気づかないだろう。

まぁそれ以前に私は忘れられているだろうな。

今日は街が賑やかだ。どうやら明日は第2王女の誕生日らしい。

私には関係のない事だ。

冒険者ギルドへ向かい掲示板の依頼書に目を通す。

変わった依頼がある。依頼内容はこうだ。

逃走手伝い、成功時金貨500枚、達成後依頼主からの直接払いと書いてある。

逃走手伝いとは何だろうか?

上手く依頼主を逃げ切らせたら金貨500枚という事だろうか?

こんな依頼は初めて見る。興味がわいてきた。

依頼書を掲示板から剥がし、ギルドの受付へ持ってゆく。

依頼書を提出すると「6人目だね。」と言われた。

「6…人目?」聞き返すと。

「あぁ、この依頼は最初に面接があるらしくてね。既に5人断わられている。」

「そうなんですか。」んー…という事は私も断られる可能大。という事かもしれない。

一応面接だけでも受けておくかな。

「わかりました、それでどちらへ行けばいいのでしょう?」と尋ねた。

北壁の門の外に小屋があるとの事。そこで依頼主が待っているそうだ。

私は北門を出て暫く歩くと小屋を見付けた。

そういえば山賊討伐の時に見かけたな。そう思いながら。

コンコンコン「冒険者ギルドから依頼を請け面接に来ました。」

すると中から「はいって、どうぞ。」と声が聞こえた。

ん?なんか聞き覚えのある声のような?

「失礼します。」ガチャリと扉を開け中へ入る。

依頼人と私の目が合う。

「あー!」「あっ!」二人は同時に声を上げた。

聞いたことのある声だと思ったら、この国へ馬で乗せて連れてきてもらった、エマさんだった。

「君…確か…えーと…リーフ君だよね?」驚きの表情のままでエマさんは言う。

「はい。あの時はお世話になりました。」私はそう言うとエマさんは笑い出した。

「いやぁ世界は狭いね!まさかこんな形で再開するとは思わなかったよ。」まだ笑っている。

暫くすると「んー君に頼むのは申し訳ないかな…。」と深刻そうな顔になった。

「エマさんは、逃げたいのですか?」直球で聞いてみた。

「そうだね逃げたい。今日中に。」指を組んでエマさんは言った。

「詳しくお話を聞いてもよろしいでしょうか?」私は言った。

「うん、まぁ僕はもう明日にはここにいないから話してもいいかな。」そう言って笑顔になった。

「明日はこの国の第2王女の誕生日らしいけど、リーフ君は知ってるかな?」

「はい。既に街中はお祭りムードです。」そう私が言うとエマさんは笑った。

「それね、僕なんだよ。」人差し指を立てながら言った。

「え?」ちょっとよくわからない。私は固まった。

「うんうん、分かるよそうなるよねぇ。」悪戯っぽくエマさんは笑った。

「あの時僕が隠していた事はこれなんだ。第2王女は僕。

お忍びで馬を走らせて遊びまわっているんだ。合点がいかないかい?」

私はエマさんと出会った時から、その行程を思い出してみた。

旅を急いでないというのもそうだ。

国境警備隊は階級が低くエマさんの顔を見たことが無い。

故に王家のアクセサリーを見せた名前を出したら態度が変わった。

ペノレの衛兵は勿論エマさんの顔を知っていた。

そして最後城の方へ馬を引いて行った。繋がった。

「エマさん。凄いお方だったんですね…。」合点がいった私は素直に感想を述べた。

「う…うん…まぁね。」私の反応が薄かったせいかエマさんは苦笑していた。

「それでね、明日僕は政略結婚をさせられることになっている。」

「えっ?!そうなんですか?!」私が驚くと。

「そっちに驚くんだ。」と苦笑しつつ続けた。

「23の誕生日に、南の隣国の王子と結婚の約束をさせられている。

まぁ王家に生まれればよくある話だよ。

永世中立国とはいえコネクションはあったほうがいいしね。

お互いに相手の顔も見たことが無い。南の国の王は質素倹約で、堅苦しいそうじゃないか。

もし嫁いだら今のように、遊び歩かせては貰えないだろうね。

まぁ今も僕は父上に黙って早馬を使って遊んでいるわけなんだけどね。」

ウインクしながらエマさんは言った。

「僕は束縛されるのが嫌なんだよ、そして媚び諂ってくる家臣も嫌いだ。

王宮に僕の居所はないし、さすがに決心したよ。逃げようって。」

真剣な面持ちでエマさんは語る。

何となく気持ちがわかってしまった。

「私はエマさんの、お手伝いがしたいです。」

「んーでも君はこの街に拠点を構えるんだよね?

僕を逃がしたとなれば、君も追われる可能性があるし

何より面が割れたら、ここには戻れないよ?

あとこれは失礼だけど、君の実力がわからない…。」エマさんは言った。

「えーとここの北の崖に陣どっていた山賊はご存じですか?」

「アゴスティノだよね?父上が懸賞金をかけていたからよく知っているよ。」

なるほど金貨2500枚は破格すぎると思っていたけれど

王直々の依頼だったのならば納得だ。

「あれ、私一人でやりました。」正確には2人だけれど少し盛った。

「え?アゴスティノ生け捕ったの君なの?しかも一人で?」エマさんはキョトンとしている。

私は頷いた。

「どうやったの?」

「口で説明するより、お見せしたほうが早いかもしれません。」早馬を出せますか?

「うん、わかったよ、少し待ってて。」

そう言うとエマさんは小屋を出て、厩舎へ行き早馬を連れてきた。

小屋の外で待っていた私にエマさんは

「お手をどうぞ。」と言い私を前に乗せてくれた。

「ハイヤー!」掛け声とともに手綱を操る。暫くすると馬は崖地帯に到着した。

するっとエマさんは馬から降り。私に手を差し伸べた。

私が握り返すと優しく馬から降ろしてくれた。

「さぁ、何を見せてくれるのかな?」エマさんは少しワクワクしているようだ。

逃げないように馬の手綱握っていてくださいね。エマさんは手綱を握りしめる。

私は持っていた杖を地面に一回コツンと叩きつける。

ぐるりと杖を1回転させ、杖を水平にする。いつもよりも広範囲なイメージ。

半径50メートル。

「グラビティー!」私が唱えるとドンッ!と音がして深さ1m直径100mの穴が出来上がる。

杖を下げる。ズド!穴は10mほどの深みになった。

案の定馬は暴れている。「ドウドウ」エマさんは馬を落ち着けた。

「これは…すごいね…驚いたよ。山賊を壊滅させアゴスティノを捕らえたのは納得だよ。」

エマさんは穴をのぞき込みながら言った。

「如何でしょうか?」私が言うと。

「合格だ!頼むよリーフ君!」

「えと…その…リーフでいいです。」王族の方に君付けで呼ばれるのは何か恐れ多い。

「わかった、改めてよろしくリーフ。」笑顔でエマさんは手を出した。

「こちらこそお願いします。」差し出された手を私は握り返した。

「心苦しいんだけれど、荷物は本当に最小限でお願いできるかな?

早馬では荷重に限界があるから…。」

その通りだ、そもそも2人乗る時点で既に本来の性能からは落ちてしまう。

分かりました。私はそう言い、2人は馬に乗り王都に戻った。

「私も少し用意があるから一時間後ここで落ち合おう。」

「最後に聞くけど、本当にいいのかい?覚悟はできているのかい?」エマさんは真顔で聞いてきた。

「はい。魔術師に2言はありません。」私がそう言うと、エマさんは城の方へ向かっていった。

急がなくては、私は急いで宿屋へ戻った。

白と黒の書が目に入る。これは邪魔になる。後ろ髪をひかれつつごみ箱に捨てる。

踵を返し部屋を出ると、貸金庫に急いだ。

金貨300を引き出すとバックパックに詰め込んだ。パンパンだ。

約束場所でエマさんを待つ。

「ごめんごめんお待たせ。」早馬の両側面に盾と剣がくくりつけられていた。

それを眺めていると。

「これはね18の誕生日に父上に、ねだって宝物庫から貰ったものなんだ。

国宝級だよ」ウインクしながらエマさんは言う。

エマさんは手を差し私は手を取り馬に乗る。

「ハイヤー!」城門が近いとはいえ、街中から馬を駆けた。

外には衛兵100人ほどいるだろうか。近衛兵だろう。

奥には髭をたくわえ高貴そうな衣装と装飾品を身に着けた男が立っていた。

「ち…父上…。」

「エマよ。門番からエマの動向が怪しいと報告を受けてな。

待っていたぞ。おまえ、さては逃げる気だな?

だがエマよ我慢してくれ、この国の安定の為にお前の存在が必要なのだ。

相手の王子も既に城の休憩室でくつろいでいる。余らに泥を塗るではない。」

威厳のある言葉立ち居振る舞いだ。

「でも僕は…嫌なんだ…父上の頼みでも聞けない…。」

「そうかでは実力行使しかないな。近衛兵構え!傷はつけるな生け捕れ。」

「父上!」エマさんは叫んだ。

近衛兵がにじり寄る。私は馬上から杖を1回地面に叩き唱えた。

「グラビティー!」私たちを囲んでいた近衛兵と王は地面に突っ伏した。

「己…貴様…」。屈辱だろう。王たるものが、どこの馬とも知れぬ小娘に

平伏しているのだから。

「エマさん、さぁ行きましょう。」

「そうだね。」

悠然と馬は兵士の横を通り過ぎる。兵士は立ち上がろうとして装備をガチャガチャさせている。

無駄なあがきだ…。私は平伏する近衛兵を見ながら思った。

そして王の横を横切る瞬間エマさんは口にした。

「今までありがとうございました。そしてさようなら父上。」

「貴様ら…!ただでは…済まさんぞ…!」負け犬の遠吠えだ。

「ハイヤーの掛け声とともに」崖の道へ駆けだした。

暫くすると追手が現れた。

ドドドド…遠くに砂埃を上げ騎兵が、押し寄せてきた。

崖の道中盤に差し掛かったころ、風の音に負けないよう大声で

「エマさん!止まってください!」叫んだ。

「ドウドウ!」エマさんは馬を止める。

私はすっと馬を下り。

私は持っていた杖を地面に一回コツンと叩きつける。

ぐるりと杖を1回転させ、杖を水平にする。半径50メートル。

「グラビティー!」私が唱えると。

ゴガッ!ガラガラ!崖は崩れた。

「グラビティー!」

念の為、さらに手前の崖も崩しておく。これで数週間は足止めができるだろう。

「行きましょう!」そう言うとエマさんが手を差しのべ馬に乗った。

ひたすら北へ向かった。

国境検問所が見えてきた「ドウドウ。」エマさんは馬を止める。

「僕は第2王女エマだ。」そう言って馬上から例のアクセサリを衛兵に見せる。

すんなりと通過を許可してくれた。

「任務御苦労。」そう言うとエマさんは「ハイヤー!」馬を進めた。

こうして無事国境を超える事が出来た。

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