汚い仕事
前日リーフは今後の冒険にかかわる
重大なことの為に1日を割いていた
※この話には蜘蛛が出てきます蜘蛛又は昆虫類が苦手な方は
戻られることを推奨します
昨日は少し試したいことがあったので休んだ。
これからの冒険にとても大切な検証だったので、1日を費やした。
翌日、つまり今日、冒険者ギルドの掲示板をチェックしに行く。
宿屋を出る前に、宿賃として金貨30枚を支払った。
ちなみに私の部屋は1日金貨1枚なので30日分だ。
都会は物価高いなぁと再び思った。部屋は以前の町の部屋とさほど変わらないのだ。
別にぼったくられてるわけではない、どの宿も同じような金額だ。
その分、ギルド依頼書も豊富なので、良い依頼にありつける確率は田舎より高い。
一長一短といった所だろう。
そうこう考えているうちに冒険者ギルドの前に到着した。
さて今日はどんな依頼があるのだろうか、掲示板に目を通す。
ふむふむ、討伐:ベノレ地下下水道ジャイアントブラックウイドウ5匹 報酬金貨30枚。
なるほどなるほど、ここの地下限定ね。移動に面倒がなくていい。
くさいのはマイナス点だけれど、汚いのは良い。何故なら宿へ戻り
汚れをシャワーで洗い落とし、身を清める時、最高に気持ちがいいからだ!
ギャップ萌えというやつかな?なんか使い方が違う気がする。まぁいいか。
このクモは以前のジャイアントデスストーカーのように毒液を噴射してくることはない。
噛みつかれなければ平気だ。ただ噛みつかれると神経毒を注入され
心拍数の増大・血圧上昇、それに呼吸困難と麻痺を生じ、死に至る。
まんま以前の症状だ。ただしこのクモの毒は遅効性ですぐに解毒すれば問題はない。
総合すると、そこそこの相手という事だ。まぁ潰してしまえばあっという間だけれど。
早速依頼書を剥がし、ギルド受付に持ってゆく
受付に渡すとサインをし小型状のカウントチェッカーを渡される。
討伐依頼は皆これを持たされる座標(地域)と獲物
倒した対象が座標と一致すればカウントが増えるという魔法道具だ。
「それではお願いします。」受付の人から見送られ冒険者ギルドを出る。
私は道具屋に向かった。
そこで上級解毒ポーションを2つ買った
1つで銀貨3枚、2つで金貨1枚。2個買えば銀貨1枚分のお得だ。
毒には強さがあり、弱い毒は低級の解毒ポーションで解毒可能。
強い毒は上級ポーションが必要で、規格外の毒には対処のしようがないのが現状だ。
アレイさんの使っていたキリエエレイソンは状態異常の回復だ。
キリエエレイソンは、その人の信仰心で効き目が違うらしい。
ジャイアントデスストーカーの毒は即効性のある相当強い部類の毒だ。
あれを解毒できたのはアレイさんの信仰心が強かったからに他ならないだろう。
少しだけ感傷的になったが、それはすぐに消えた。
私は店を出て下水道へ向かった。入り口からしてもうくさい。
これ中に入ったらどれだけ、くさくなるのだろうか…考えたくもなかった。
入口からそのまま中へ入る。足場はざっと幅50cm高さは5メートルほどだろうか。
蜘蛛なら上からの不意打ちもあるな…そう考えた。
ナレーション
”ここで説明しておかなければならない事がある。彼女は何故力場を生成しないのか?
それは昨日の実験結果から出た答である。
彼女は思った。力場の生成はどの程度の魔力を消費しているのだろう?
魔力タンクの彼女には、どの程度の魔力消費なのか把握できていなかった。
その為、杖を握り力場を生成し、それを維持した。
30分ほどすると、彼女の額には汗が滲み疲労していた。
魔力疲労である。
40分経つであろう頃、力場は消失した。
はぁ…はぁ…彼女は肩で息をしへたり込んだ。
魔力供給にて高位の火属性魔法の連発を余裕で耐えていた彼女の魔力が
底をついていた。
「これ…はぁはぁ…相当魔力消費してる…はぁはぁ…」そう呟くと。
床に大の字になった。
落ち着いたのち、道具屋へ行き上級魔力ポーションを買い込んだ。
しめて金貨20枚。
昼下がりポーションを全部がぶ飲みし、同様杖を握り力場を発生させ
それを維持した。結果はさっきと変わらなかった。
今の私ではこれを長時間使うとマズイ。そう考えながら床に大の字に寝転んでいた。”
閑話休題
下水道に入って暫く歩いた。左への曲がり角カサカサ音がする。
杖を石床にコンと一回叩いておく。
私は素早く曲がり角を曲がり左手を見る。
チューチュー!ネズミが逃げて行った。
なんだネズミか…っていうか、まぁ地下下水道だから当然ネズミはいるだろうけど
こんなベタな展開ある?そう思いつつ探索を進める。
奥へ進むと影が見えてきた。今度こそは標的だろう。
近寄るとそこには大きな蜘蛛がいた。
『蜘蛛か!私の目は緋色に染まる。』
という想像が脳裏をよぎった。
コンと一回杖で石床を叩き杖を水平にする
「グラビティー」
蜘蛛は今にも潰れそうだ。クイと杖を少し下に向ける。
ビシャァ!と音を立て蜘蛛は緑色の液体と共にとびちった。
正直なところ人を潰すよりも、こっちを潰した時の方が気持ち悪い
私はそう思った。バックパックからカウントチェッカーを取り出すと
0から1へと表示が変わっていた。狙い通りの獲物だったらしい。
これなら楽勝だね。そう思いながら緑色の液体の上を通る。
靴の裏がぬめぬめしている。感触は最悪だ。
私は更に奥へ進んでゆく。いた。
一匹は壁に一匹は下水の中に潜んでいる。
杖を1回鳴らしグラビティーを唱える。
壁の蜘蛛は石床に落ち下水の中の蜘蛛は今にも潰れそうだ。
クイと杖を少し下に向ける。
壁にいた蜘蛛は先ほどの蜘蛛と同じ末路を辿る。
下水の中の蜘蛛は弾けると下水に混じり緑色の液体が飛び散る。
「うわっ!」ローブに下水の水と緑色の液体が付着した。
最悪だ。依頼を請けたことを後悔した。
カウントチェッカーを見ると3の表示が出ていた。
後2匹か、さらに奥へ行くと一匹視認できた。
グラビティーで押しつぶすと、カウントチェッカーを見た。4になっている。
よし後一匹かな。カウンターを見つつ考えていると。
首筋に痛みが走った。急いで飛び退き距離をとる。
そこには天井から、尻の糸でぶら下がっていた蜘蛛がいた。ゆらゆら揺れている。
しまった!嚙まれたか!
距離を取り、急いでバックパックを開け高級解毒ポーションを取り出した。
親指でポーションのガラス蓋を弾き急いで喉に流し込む。
急ぎ、杖で石床を一回叩き杖を蜘蛛に向けグラビティーを唱える。
蜘蛛はあっさり落下しクイと下へ向けるとビシャッと飛び散った。
カウンターに目をやると5という数字が映し出されコンプリートと表示されていた。
心臓は早鐘を打っている。
心拍数の増大・血圧上昇、毒の症状だ。ただ、私は奇襲に対しても驚いていた。
単なる生理現象なのか?
とりあえず念のためバックパックからもう一本高級解毒ポーションを取り出し
ガラスの蓋を取り、飲み干した。
早めに町へ戻ったほうがよさそうだ。
私は深呼吸をしながら来た道をたどり出口へ向かった。
下水道から外へ出る頃には脈拍は安定し、呼吸困難もマヒもなかった。
冒険者ギルドへと向かう道すがら、皆私から距離をとっていた。
そうだよね、くさいし、汚いもんね。
冒険者ギルドに到着し中へ入り受付に行く
「下水道の蜘蛛討伐を請け負ったリーフです。完了の報告に来ました。」
そう言って受付にカウントチェッカーを置いた。
「お疲れ様です少々お待ちください。」とひきつった笑顔で言うと
私の持っていたカウントチェッカーをタオルで包んで持ち奥へといった。
そんなにか。私は思ったが、私も同じ立場ならそうかもしれないそう考えた。
「お待たせしました。報酬です。」そう言うと受付の人は金貨30枚をカウンターに置いた。
カウンターに置かれた金貨30枚をバックパックにしまう。
「ありがとうございます。」そう言うと。
受付の人は「お疲れさまでしたー。」と言って奥へ戻っていった。
私は青息吐息で外へ出た。急いで宿屋へ向かう。
宿屋の扉を開けてからは、そそくさと急いで部屋に戻った。
バックパックから金貨と中身をテーブルに出し
ローブのままバックパックをもってシャワー室に入る。
ローブを脱ぎ捨て急いでシャワーを出し。ソープを泡立て全身を覆う。
「はぁーこれだよこれ♪」おっさんみたいなことを言いつつ
ソープのいい香りが充満する中
ローブとバックパックもソープを塗りたくって一緒に洗う。
体を洗い流し、ローブとバックパックも洗い流した。
もう一回ソープを泡立て体に塗りたくり洗い流す。
シャワー室の中はいい香りで充満している。
私は上機嫌だ、タオルで体を拭き、着替えの白いローブを羽織り
バックパックと黒のローブを部屋干しした。
なんか色々あったけど終わり良ければ総て良し。
気が付けば夕日が差し込んでいた。食事しようかな。
私は1Fに降りて食事を注文した。奮発して金貨2枚分の食事をした。
たんと食事を堪能した私は部屋に戻った。
ランタンを付ける事もなく、その日はそのまま眠りに落ちた。




