賽は投げられた
エルドを蘇生することを決意したリーフ
その条件に頭を悩ます。決意は固めるが気持ちは揺れる。
今日は余り目覚めが良くない。昨夜決心したとはいえ。気は重い。
エルドさんは、とても善性が高く、不正はしない、子供を気遣う非の打ちどころのない人だ。
その器を探すという事は、…とても良心が痛む。何故なら亡き者にした後魂を消去しなくてはならないからだ。
私は古くなってぼろぼろの薄汚れた白いローブを身にまとった。周囲から見れば孤児院の子供に見えるだろう。
この町に来る司祭さんだけは狙いたくなかった。2つほど離れた村へ馬車で移動し孤児院に紛れ込んだ。
目から光を消すのはお得意だ。その日は司祭さんはやってこなかった。内心ほっとしつつ
宿を探した。身なりが汚かったので門前払いされそうになったが金貨1枚を渡したらVIPルームへ案内された。
現金なものだ。VIPルームサービスが付いていて、豪勢な食事が運ばれてきた。
みすぼらしい格好の少女がい高級料理を食べている様子はさぞ違和感があっただろう。
翌日も協会に通った、運よく司祭さんがいた。目のハイライトを消し隅ににうずくまった。
司祭さんは私を見付け声をかけてきた。
「どうしたんだい、何かあるならおじさんに行ってみなさい」暖かい笑顔だ
私は立ち上がり人けのない路地裏へ移動した。司祭さんは追っかけてきた。
「こんなところでどうしたんだい?」心配そうに問いかける司教さん。
「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムバインド!」
司教さんの体に無数の闇リングがからみつき司教の動きを封じる。
「君は一体何を…。」ごめんなさい、あなたに恨みはないの、でも犠牲になってもらう。無表情で答えた
「闇より、出でし眷属、汝の闇は、また我が闇なり、そのしるべを示し給え!テネブラールムガープ!」
神父の心臓は闇に飲まれ、口からはむせるように血が地面に飛び散り、ぽっかり空いた胸からは
凄い勢いで血が流れた、あっという間に地面は血だまりができ、もう長くないのは明白だった。
「ごふっ…君に…か…神のご加護を…」神父は呟く。そんな言葉をかけるな!罵られた方ましだ!
司祭の言葉が胸に突きささる。しかし後戻りはできない。
杖を2回トントンと地面を叩く。すると蘇生の魔法陣が構築される私はわざと一部を変更した。
杖を1回地面を叩く。「リザレクション。」覇気なく唱えた。司祭はその場で倒れ込み息絶えると同時に
魂は消えた。私は再び杖で地面を叩くとエルドさんの布袋を司祭の空いた胸に置く。
「我が魔力において、すでに朽ちた魂と、器を完全に再構築せよリコンストラクション!」
体はみるみる変形し元のエルドさんの体になったと思う、体の治癒も完璧だ。
複雑な心境だがここは喜んでおこう。
「初めましてあなたエルド司祭で間違いないですか?
「いかにも私はエルドだ。君は誰かな?」
「申し遅れました私はリーフと申します。『銀翼の羽』の新メンバーです。」
「なんと!それは本当ですか?」
「はい本当です、あなたは死に際の事を覚えていますか?」
「あぁバフォメットだ。」
私は本人と確信した。
「あなたの蘇生は私が行いました。内容は…言えません。
今すぐメンバーの下へ駆け付けたいとお思いでしょうが。
何があるかわかりません。1週間ほど、ここに滞在して記憶その腕前完璧にしてから。
戻ってください。」
「委細承知した。心使い感謝します。」
「いいえ私はアレイさん、ミレさんに相当お世話になっていますから
感謝などは無用です。」
「彼らは頑張っていますか…。そうですか。」エルドさんは優しい表情で答える。
「それでは合流まであなたの指示に従いましょう。よろしくお願いします。」
「いいえ、ゆっくり宿屋で色々思い出してみて下さい。それでは部屋にご案内します。」
「お心遣い感謝します。あなたに神のご加護を」
さぁこちらです私は先導いし、エルドさんはついてきた。
「こちらの部屋になります。ごゆっくりどうぞ。」
「度重なるお気遣い痛み入ります。」
「では失礼します。」扉を閉め町はずれへ移動し転送魔法でいつもの町へ戻る。
宿屋まで歩き自分の部屋に戻る。
もう元には戻れない、賽降られたのだ、後戻りはできない。