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生い立ち

私は赤子の時に捨てられていたそうだ。

そして孤児院に入る事となった。

私は孤児院でも浮いた存在だった。

だから逃げたのだ孤児院から。10歳の頃の話。

誕生日は知らない、だから大体の記憶。孤児院には協会が併設されていた。

この世界では大体そういった感じで、どの村や町へ行ってもそれは変わらなかった。

私は物乞いをしつつ遠くの村まで逃げた。

挿絵(By みてみん)

そして私は冒険者になった。

孤児院で読んだ本に冒険者という職業が書いてあったからだ。

冒険者になるには協会に登録する必要があると書かれていた。

だから私は協会へ登録しに行ったのだ、そこでもやはり浮く事となる。

何故なら私は人付き合いがとことん苦手だったから。

しかし冒険者ギルドでは慢性的に冒険者が不足していたため、そんな私にも

丁寧に適性検査などをしてくれた。

どうやら魔力が他の冒険者から秀でていたらしく魔術師になる事を奨められた、

言われるがまま魔術師を目指し、その修行と共に

かつて教会へ足を運んでいたこともあり治療術士としても励んでいくことにしたのだ。

その努力の甲斐あって、魔術と治療術の両立は上手くいった。

学びながら、冒険者ギルドへ行き一人でこなせる依頼を請け、日銭を稼いだ。

たまに失敗もしたが、パーティーに誘われる事もあった。

が、しかし、私は人付き合いが苦手なため、全て断っていた。

日銭を貯蓄し、安定して宿に泊まれるようになり、魔術書や治癒術書等も購入できるようになり、

私の生活は徐々に安定していった。

そんなある日の事、ギルドに報酬を受け取りに行った際、受付嬢から 冒険者パーティーの勧誘を受けた。

私は『人と関わるのが苦手だから』と断ったのだが、それから数日後、何故かその受付嬢が私の宿へ現れた。

用件はこうだ『以前パーティーを組んでほしいとお願いしましたが駄目でしたよね?でも私諦めません。だから取り合えず仮でいいので組んでもらえませんか?』という事だそうだ。

冒険者ギルドは行く当てもない子供だった私の面倒をみてくれた。

だから冒険者ギルドには相当な恩義がある。

駆け出しから中堅に手が伸びそうな程度のEランクの私に何故声がかかるのか?

相当に悩んだ末、話だけ聞いてみることにした。

今いる冒険者は私を除いて皆Cランク以上の冒険者、E~Fランクの依頼を受ける事ができない。

だから一時的にCランク以上の冒険者パーティーに籍を置く事を提案したいそうだ。

話を聞いた限りだと、私はそのパーティーで荷物運びをすればいいらしい。

そして、私がそのパーティーで上手くやっていけるか?を見極める為の仮パーティーという訳だ。

『この話はお受けできません』と断ったのだが、受付嬢がどうしてもと食い下がるので

仕方なく顔合わせをすることにしてみた。

会えば、私はそのパーティーから断られるだろうと思い、承知をした。

あくる日、ギルドの前で落ち合う事になった。

冒険者パーティーとはいうものの、2人しかいないらしい。

指定された時間にギルドへと向かう。

時間丁度、2人がギルドの中へ入ってくる、男性一人と女性一人の2人組だ。

女性が私を見つけ手を振る、どうやら待ち合わせは彼女らしい。

しかし男性の姿が見えない?どういう事だろうか? 挨拶をする。

「魔術師兼治療術士のリーフです。」

と、名乗る。

勢いよく男性が駆け込んできた

「おぉ、君がリーフ君だね。私はAランクパーティー『銀翼の羽』のリーダーをしている、アレイだ」

Aランクパーティー?

「私は同じく銀翼の羽で魔術師をしているミレです」

「あ、あの……Aランクパーティーの方なのですか?」

「そうだよ。でもまぁ仮だからそんなに緊張しなくてもいいよ。今日は顔合わせという事で軽く依頼を請けようと思ってね」

「私はまだランクの低い冒険者でとてもお役に立てるとは思いませんが…。」思ったことを口にした。

「いやいや、荷物運びは誰でもできるからね、それに君は魔力も強いと聞いているよ。」

「……。」自分に自信がない私は、どう返答してよいかわからず、つい無言になってしまった。

「では早速依頼を見に行きましょうか」ミレが促すように話してきた。

「あ、はい」そう言うのが私には精いっぱいだった。

3人で掲示板を眺めていて、ミレが依頼を指差す。

「これなんてどうですか?」

「ん、どれどれ。」アレイさんが依頼書を確認する。

「あぁ、これなら大丈夫だろう。」

「はい、では受付で手続きしてきますね」ミレが受付へ駆けて行った。

そして3人で依頼を遂行するべく目的地へと移動するのだった。

移動中も私は2人の後をついて行くのに精いっぱいだった。

2人は私に合わせてくれているのか、歩く速度も私に無理のない程度にしてくれているようだ。

目的地へ到着すると、アレイさんが指示を出す。

「リーフ君はここで待機していてくれ」

私は無言で頷く。

「ミレは周囲の警戒を頼むよ」

「わかりました」とミレは答え周囲を見渡す。

2人は手慣れた様子で行動している。

私はただそれを見ている事しかできないでいた。

暫くしてアレイさんが戻ってきた、手には何かを持っているようだ。

「リーフ君、これを」アレイさんが私に何かを差し出してきた。

私はそれを受け取る。

それは水袋だった。

中は空のようだ、しかし何故? 私が不思議そうにしていると、アレイさんは続けて言う。

「この中に魔力を込めてみてくれ」と。

言われた通りにしてみるが何も起こらない。

「あの……何も起こりませんが…?」そう呟くとアレイさんは少し考え込み、そしてこう答えた。

「いや、今君は魔力を流しているんだよ」

「…?」私は更に首を傾げる。

私にはアレイさんの言っている事が理解できなかったのだ。

私のその様子を見たアレイさんは、続けてこう説明する。

「君に渡したその水袋には治癒の魔法陣が刻まれているんだ」

「治癒の魔法陣?」私は更に混乱してしまう。

そんな私を見てアレイさんは説明を続ける。

「つまり、その水袋に魔力を流し込む事で中に満たされた魔力の水が治療液になるんだよ」

「え?そんな事が可能なのですか?」私は驚きを隠せない。

確かに空だった袋には水が少しずつ増えている。

アレイさんは至って真面目な表情で話を続けた。

「あぁ、可能だよ」

そしてアレイさんが言うには、この魔法は回復術5レベル相当の治療魔術に匹敵するらしい。

回復術レベル5と言えばAランク治癒魔術師が使用可能な類のもの。

Eランクの私が込めた魔力がAランク治癒術士の行使治癒術に匹敵する液体となったのだ。

この世に魔法道具は数あれど、こんな効果を持つ魔法道具があるとは驚きだった。

「これで君の魔力が如何に強いかわかるだろう?」とアレイさん。

私が強いのではない。こんな魔法道具を持っているアレイさんが凄いのだ。

そしてアレイさんは私の事を観察しながら考察しているようで「ふむ」と考え事をしていた。

「察してくれたかな?これを町中でやると面倒事が起こる可能性がある私たちにも君にもね。

だからこうして低ランクの依頼を請け連れ出したところで、協力をしてもらったという事だ。

魔力量が多い冒険者じゃないと、これはできないからね。」

と言いアレイは悪戯っぽく笑った。

「依頼は以上だ。ありがとうリーフ君。これは謝礼だ遠慮なく受け取ってくれ。」

そういうと懐から金貨5枚を手渡された。

「きっ…金貨五枚も?!」思わず口走ってしまった。

私はギルドの依頼をこなしても、良くて銅貨5枚が限度だ。

どう考えても破格すぎる。

返そうとしたが即拒否されてしまった。

「どうだったかな?私たちにはこの魔法道具は生命線なんだ。

今後も君には、こうして手伝ってもらいたいと思うんだが、どうかな?」

優しくアレイは微笑みながら言った。

願ってもない事だ。これなら相当金銭にも余裕が出るだろう。

これから学んでいく為の、より高位の魔術書購入には、それ相応のお金がかかる。

「あ、はい。」私の口癖の気の抜けた返事をしてしまった。

ギブアンドテイクであっても、この取引は完全に私にとって有利な取引だ。

手早く偽装依頼をこなし、町まで二人に送ってもらった。

ギルドからの報酬は銅貨3枚だった。しかもそれも私に全て渡してくれた。

これでいいのだろうか…アレイさん達は完全に赤字ではないか…。

「ではリーフ君、また頼むよ」アレイさんがにこやかに言う。

私はただ頷く事しかできなかった。

それからというもの、私はアレイさん達のパーティーの

秘密の魔法道具へ魔力を注ぎ込む件で度々呼ばれるようになった。

報酬は常に金貨5枚。恐らく『銀翼の羽』のAランク依頼をこなせば、それ以上の収入があるのだろう。

私はと言えば、相変わらず1人でこなせる依頼を冒険者ギルドから紹介してもらい、こなしていた。

相変わらず『銀翼の羽』以外の臨時パーティー依頼はすべて断っていた。

2年が経過し12歳になるころには、お金に余裕ができたこともあり、高レベルの魔法書の購入や

治癒魔術書の購入もできるようになっていた。そんなこんなで冒険者ランクはBとなっていた。

私は冒険者として一応1人前になったのだ。

そんな折、『銀翼の羽』のリーダーであるアレイさんからパーティーへの加入を打診された。

「リーフ君、そろそろ私たちのパーティーに入ってみないか?」とアレイさん。

人と上手くやっていけない私であったが、数を重ねた逢瀬により、この頃には2人とはずいぶんと打ち解けていた。

魔法術も治療術もレベル4までは習得していた。少しは役には立てるだろう。

「私なんかでよければ、私はそう返事をしていた。」

「そうか、ありがとうリーフ君。これで『銀翼の羽』は3人のパーティーだ」とアレイさん。

ミレさんも嬉しそうだった。

こうして私は正式に『銀翼の羽』の一員となり、活動を始めたのだ。

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