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俺と僕

何が言いたかったのだろう。先ほど口を開きかけた。思い出せない…でも、まぁ良いか。全て嘘だから。言葉を吐いたって無駄なんだ。全て嘘。誰かを安心させるためだけの出まかせの嘘に過ぎない。それが俺だ。あぁ、疲れた。少し休みたい。何も感じられない心だけがズキズキと痛みを発信している。

「はぁ…はぁ…いってぇ」

痛みは止まない。ずっと痛みは体を蝕んでいく。痛みだけは唯一僕()が生きていることの証明。痛む(むね)を抱えたまま()は外へ出た。安いマンションの10階に俺は住んでいる。友人の勧めでここにした。友人…(あきら)は下の階俺の真下に住んでいる。今から行こうか…否、この状態を見せるわけなかろう。

「屋上に行こうかな」

たった一つ上がればそこは最上階屋上だ。こんな真夜中には誰もいないだろう。ましてやこんなまふゆの夜中に。屋上の扉を開ける。金属の軋む音がする。ギシギシと嫌な緊張をさせられる音。ブワッと鳥肌が立った気がした。気のせいだろ。外気に当たったからだ。屋上には北からの冷たい風が吹いている。屋上に来た()の上着を揺らして風は通り過ぎていった。

「寒…」

屋上から見える景色はいつもと変わらない。先程風呂に入ってしまった。コンタクトをつけずに見た夜景は全ての光がぼやっと霞んで見えた。遠くの建物は原型を見ることすらできない。改めて自分の視力の弱さに気づく。霞んだ光は綺麗だった。霞んでいても尚、光たちは輝き続けている。消えないのだ。決し自分の意思では消えられない。

「消えたいのに、消えられないってどんな気持ちなんだろうな」

ぼんやりとそんな考えがよぎった。その瞬間ポケットに入れていたスマホがバイブした。

「…!!」

いきなりの事に驚いた俺の声にならない声が屋上に虚しく響いた。

『メッセージが届いています

晃)起きてる?』


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