今日はとっても素敵な日
新・連・載っ!最近色々あげすぎ?まあぽっと出ですけど......出来うる限り頑張ります。完結させてーなー!
「っふふ!ありがとうねぇ、お姉さま!私の分まで罪被ってくれて...!」
鉄格子の隙間から残忍な笑みが見える。数分前まで純粋無垢な少女の顔をしていた義妹は、今やすっかりその仮面をかなぐり捨てて、次々と私に毒を吐いてくる。義妹はいつもこうだ。私以外の前ではお手本の淑女そのものなのに、私と二人きりになると急に鬱憤を晴らすかのように私に暴力を振るってくるのだ。それは物理に限った話ではない。
「お姉さまの魔力、とっても相性が良くてねぇ、すっかり馴染んじゃったのよ!もうお姉さまの元には戻らないし、お姉さまってば、可哀想」
義妹は高らかに笑った。広い地下牢に甲高い笑い声が反射する。
「明日にはお姉さまが断頭台で無実を喚きながら処刑されていくのね!...ああ、とっても気分がいいわ。」
とびきりの笑顔で言って見せる。悪女そのものの顔に、今更ながら裏と表の差を感じる。この先、彼女はどうするのだろうか。何処でこの顔を出すのだろうか。
まあ、いずれにせよ、私はあんたの思い通りになんかならない。せめて、死に時ぐらい自分で選んでやるわ。
「ねえ、リリア。全てが上手くいくと思ったら大間違いよ。」
懐に忍ばせておいた薬のビンを取り出し、蓋を開ける。花のような甘い香りが鼻をかすめた。
「お姉さま....?!何よ、それ.......っ.........あっ!」
どうやら薬の正体に気付いたらしい。
「ねえ!そんなもの飲まずに、捨てなさいよ!ねえ!ねえ!ねええええ!」
半狂乱で叫びながらリリアが可愛らしい顔を歪めて鉄格子をがたがたと揺らす。しかし、私に触れてくることはない。先程、散々「まあ汚い。そんな手で触れないでよ。無能が移っちゃうでしょ?」なんて言っていたのだ。触れられるはずがない。リリアは、私の命とプライドを天秤にかけて、プライドをとった。それだけの話だ。
「さようなら、リリア。戻ったら覚悟してなさいよ......」
一気にビンの中身をあおる。飲んだ瞬間から、視界がぼやけて、心地良い眠気が襲ってきた。
「お姉さま!お姉さま!........っこの......!」
最後とばかりに焦点の合わない手でビンを投げつける。紫色のビンは運よくリリアのドレスの装飾に当たり、派手に割れた。ガシャンと高い音が響く。
「次は......絶対......ふくしゅう.......して.....」
舌は回らない。もう回す意味もない。目も見えない。見える意味もない。
「シエラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
リリアの絶叫が聞こえる。その耳も段々、聞こえなくなって......全てが、闇に落ちて......
*
「.............っ」
喧騒が聞こえる。地下牢とは比べ物にならないほど煩い。地下牢よりは明るいが、建物の影なため薄暗い。服は、囚人服から汚れたTシャツと半ズボンに。汚れて灰色になった髪は、足元まで伸びている。
「.........ここは、何処?..................ああ、過去に戻ったのか。」
数秒の思考の後、思い出した。ここは、路地裏の世界。私が育った場所だ。