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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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イーサ侵略

 あっさり、オステン王の了解を取り付けたニールは、魔都に戻ったが、ドロシー、村長、アンナに「ウィルを頼む」と一言残した後、行き先も告げず、どこへともなく消えた。


「いったい何を考えているんだ?」


 政に深く関わり過ぎてしまっている彼女、三万の軍勢を整え、半年後には出兵しなければならない。その準備に忙殺され、ニールを探すことなど到底できる状況にはなかった。


 そうこうする内、またたく間に冬が過ぎ、春が来た。魔都クトゥル・オル・ナドリクに春を告げる花、ライラックが咲き乱れている。


 可憐な花とは好対照、ランドバードからは次から次へと軍用列車が到着し、兵を補給物資を、運んでくる。オステンの兵力、今回は七万、魔動車を改造した最新式の装甲車による大機甲師団など準備は万端だ。


 イーサ、これに加担するリバの非道を正すという名目で宣戦布告したオステン、魔族の連合軍十万は魔の森を抜け、瞬く間にリバ国境の平原オールシュティンに展開した。


 日和見、風見鶏と揶揄されているリバ王・カリフ・アデールは、見方を変えれば、機を見るに敏でもある。敵軍勢の圧倒的優位を悟り、戦わずして無条件降伏をしてしまう。早々に、停戦条件として、魔の森と国北部の領有権を放棄した。


 向かうところ敵なしとなった連合軍は、そのまま南進しイーサを目指した。周知のごとく、イーサの軍備はブラッディローズ依存、常設軍など存在しない。


 急遽徴兵した軍は民兵に等しく、連合軍はわずか二ヶ月で、ミルトブルク、シャルトガルト、を攻略し、首都ミュルンをも制圧した。


 いまや四面楚歌となったイーサ王宮、王の執務室には、王と近衛師団長が二人、向き合っていた。


「ローレンス、なぜに、彼らは攻め込んで来ない?」


「実に不可解、私にも、分かりかねます」


「理由はともあれ、ローレンス、皆を連れて逃げよ」


「そ、そんな……」


 ミュルンに敵軍が到達した際、王宮の主だった者は、難民に混じってリバの国に逃れている。今、ここに残る者はすべて、城を枕に討ち死にする覚悟だ。それを敢えて、逃げろという王。


「これは、敵がくれた生きるチャンスということではないか? 城と運命を共にする、見上げた心意気であるとは思う。だが、誰かを犠牲にすることでしか国を守れぬ、非道な王に忠義を尽くすことなどない。まさに、これは因果応報、ロゼ、歴代ブラディローズへの所業、その報いを受けるのは私一人で十分だ」


「いや、しかし……」


「これは王命である! と言えばいいかな?」


「御意」


 ここまで言われては、如何ともしがたい。ローレンスは王宮に残った、王の側近、近衛兵を連れ、裏庭に向かった。


 まもなく夏が来る、大自然の摂理は、戦など知らぬ振りをしているようだ、薔薇の花が咲き乱れ、むせ返るような芳香があたりを包んでいた。ああ、ここで、アンジュとロゼ三人で語り合った。そう、アンジュ殿に告白したのもここだ。


 ローレンスは、ロゼとニールを逃した隠し扉を開けた。


「さ、ここからは裏道が続くから」


「ローレンス殿は?」


「私には残した用がある、後で行くから、早く!」


「はい」


 二十名ほどの者を逃したローレンスは、そのまま兵の教練場に向かった。そこで、甲冑を身に纏い背に長槍を背負う。


「そうだった」


 ローレンスは懐から黒いハンカチを出して肩に巻いた。あの日、アンジュに貰ったそれを彼は肌身離さず持っていたのだ。


「未練、ですな……」


 騎士は戦場に赴く時、護身符代わりに恋人から貰ったスカーフを肩に巻くのがこの世界の慣わしだが、普通は赤や緑、カラフルなものが一般的だ。黒いハンカチは、護符ではなく、喪章のように見える。


 魔法を唱えるローレンス、青鹿毛でサラブレッド風のユニコーンを召喚した。名をアイゼンヘルツという立派な軍馬だ。


 ローレンスは軍馬を駆って王宮の正面に回った。そのまま門を開け城外に進み出る。


「我は、イーサ近衛師団長ローレンス・バウムガルト。連合軍の大将に、一騎討ちを所望致す」


 彼には腹案があった。ここで敵が一騎打ちに応じてくれれば、かつてニールがやったように、この戦争は建前上、二人の戦いによって雌雄を決することとなる。


 自分が負ければ、死ねば、イーサの敗北が決まる。そのことは、この戦争が終わる、すなわち停戦が成立したことにもなる。


 停戦した敵への戦闘行為は、戦時法違反となるのは、この世界の常識でもあり、王は助命されるはずだ。


「王を助けるため、自らの命を差し出すというのか! ローレンス殿は見上げた武士(もののふ)、その気概に応じ、我がお相手もうそう。魔王四天王が一、ラミウス・カイ・ドウェルグと申す」


 黒の鎧を身に纏った魔族の戦士が進み出て口上を述べた。


「魔王四天王が、お相手とは、身に余る光栄、感謝いたす」


「なんの」


 ラミウス、漆黒の戦士は剣を得意とし、背にしたダーインスレイヴの使い手だ。だが、長槍を構えたローレンスに合わせ、槍の勝負に応じたようだ。長槍を持って前に進み出た。


 彼の召喚獣は、ニールのロートハーゼに似た漆黒の豹、もう、この召喚獣を見ただけで勝負は決まっている。もとより死ぬつもりのローレンス、敵に不足はなし!


「まいる」


「おう』


 距離は百メートル、互いに召喚獣に鞭を入れた。

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