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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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ウィル

 狩はもちろんだが、彼女の要望通り、街へのお使いもロゼの役目となった。


 早朝、村を立って、ヴァイスハーゼで森を駆ければ、夜にはヒルトハイムに到着できる。


 冒険者ギルドでギルマスと頻回に対面するのは、さすがに目立ちすぎると、ヒルデが判断したようだ。燭酒亭の主人ゲルトが窓口となってくれた。


 夜、燭酒亭で夕食を食べるロゼ、その間にゲルトは魔石を引き取り、前回来た時にリストアップしておいた品をリュックに詰め替えてくれる。日用品の代金は魔石引き取り額と相殺し差分は現金で支払う、という塩梅だ。


 食事を終えたロゼは、さりげなくUberリュックを受け取り、そのまま帰路に着く、北門の門兵とは顔馴染みになっているロゼ、目の前でヴァイスハーゼを召喚して、夜通し森を駆ければ、翌朝には村に戻ることができる。




 そんな日々が続き一年の歳月が流れた。


「はい、今回は布地が三反と、この魔道具、何? 何に使うの?」


「ちょ、ロゼ! それは」


 ばつの悪そうな顔をするニールだが、お姫様育ちのロゼはキョトンとしている。村長が笑って執りなした。


「あはは、誰の要望かも含めて秘密ですな、私の方からこっそり渡しておきます」


 ここは魔法の世界、魔道具でできた()()も存在する。ロゼが知らなかった魔道具は、成人男性用の玩具ということのようだ。


「ねぇ、ニール、村長さん」


「なにか?』


「なんだか、少しずつなのだけど、結界を通りやすくなってきた気がするの。あれに慣れるってこと、あるのかしら?」


「うーーん、どうでしょう。そもそも結界を感じられるほどの魔力のある人が稀ですから、なんとも」


「ほんの僅かに感じるというだけで、気のせいかもしれないけれど」


「最初は戸惑ったけど、もうどうなるかは分かっている。気分的に慣れた、ということじゃないの?」


「そうかもね」


 ロゼは、何気ない会話が楽しい、本当に、私、こんな幸せを味わっていいのだろうか? そんな、ある日。


「ニール、ちょっと悪いのだけど、明日から、私、狩は止めて、お使いだけをすることにするわ」


「どうした? 体調でも悪いのかい」


「体調の問題といえば、そうなのだけど。恥ずかしいから察してよ」


「え!!! もしかして」


「多分、三ヶ月くらいかな?」


「そ、そうか!!!! 素晴らしい!!!!」


「男の子だといいのだけど」


 もし、女の子なら自分と同じ能力持って生まれてきてしまう。それは、それだけは……。ニールの子を授かった嬉しさ、期待、とはいえ、自分と同じ呪いを受けた子だったら、どうしよう? 


 だが、彼女にとって「幸運」だったということだろうか。七ヶ月後、ロゼは元気な男の子を産んだ。男子であるが故、彼には勇者としての能力が宿っていらしい。二人はその子をウィルと名づけた。


 村長の家の二階客間は子供部屋となった。勇者の跡継ぎであるウィルは紺碧の髪とマリンブルーの瞳、ニールに生写しというくらいよく似ている。


 平均年齢の高いこの村で、ベビー用品を揃えるのは大変だった。村で揃わない物は、ゲルトに渡すリストに混ぜて、密かに購入することにした。


 ちなみに、ブラッディローズの子供は、魔法が暴発する危険があるため、母親からも隔離されて育つのが普通だ。


 自ら子育てできるとは思ってもいなかった、ロゼ、自分に母性などという高邁な気持ちがあるのか? とても不安だった、だからかもしれない、オルゴール、ぬいぐるみ、絵本、物だけではない、考えられる全てをロゼはウィルに与えた。


 もちろん、この家の皆もウィルの面倒をよく見てくれた。ニールは勇者でもある我が子が可愛くてしょうがないといった様子で、暇があればウィルと二人で遊んだ。


 村長とアンナも、まるで孫が出来たようだと言って、少々過剰な甘やかしをしては、ロゼからの苦情を受けていた。


 だが、だけど、愛する人と日々成長していく息子、大きすぎる幸せにロゼは押しつぶされそうな想いを抱きつつあった。今まで、ずっと、ずっと、絶望して生きて来たロゼに、当たり前の人生は重過ぎた。


 いつか、いつの日にか破局が来る、幸せであればあるほど、その落差、悲嘆は大きいはずだ。どうしてもネガティブな思考しか生まないロゼの脳は、まだ、どこか変調を抱えていたのかもしれない。




 さらに二年の歳月が流れた。


 秋生まれのウィルは二歳の誕生日を迎えた。二人の生活は倹しいが、変わることはなかった。


 しかし……。


 ロゼの予感が的中したのか、そもそも禍福は糾える縄の如し、なのだろうか。


 反逆者となったニールを、王は、いつまでも見逃してくれるはずもなかった。冬が終わり春が来たある日、いつものように、村長、アンナとともに、朝食のテーブルを囲んでいた二人。


「ウィルは?」


「昨日、遅くまではしゃぎ過ぎたからだと思う。まだ寝ているわ」


「あはは、そうか。ま、じゃ、ゆっくり寝かせておけばいい」

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